目次
<ドラベ症候群>はどんな病気?
<ドラベ症候群(Dravet syndrome)>は、乳児期に発症する重症の遺伝性てんかん症候群で、発作が非常に起こりやすく、発達や日常生活に長期的な影響を及ぼすことが特徴です。
- 疾患の概要
- 主な原因
- 発症と経過の特徴
- 診断
- 治療の基本方針
- 日常生活で特に重要な点
- 予後について
- まとめ
- <ドラベ症候群>の人はどれくらい?
- 📊 発症頻度・有病率の目安
- 🌍 世界的には?
- なぜ「正確な人数」が出しにくいのか
- 🔍 てんかん全体の中での位置づけ
- まとめ
- <ドラベ症候群>の原因は?
- 🧬 主な原因:SCN1A遺伝子変異
- ⚡ 何が起きているのか(病態のしくみ)
- 🧪 遺伝のしかた:ほとんどは「新生突然変異」
- 🧬 SCN1A以外の原因遺伝子(少数)
- ⚠️ 重要な臨床的ポイント
- まとめ
- <ドラベ症候群>は遺伝するのでしょうか?
- 🔑 基本的な考え方
- ① ほとんどのケース:遺伝しない(新生突然変異)
- ② まれなケース:遺伝することがある
- ③ 患者さん本人が将来、子どもをもつ場合
- 📌 遺伝に関して特に重要なポイント
- まとめ
- <ドラベ症候群>の経過は?
- ① 乳児期(生後6か月前後〜1歳頃)
- ② 幼児期(1〜5歳頃)
- ③ 学童期(6〜12歳頃)
- ④ 思春期〜成人期
- ⚠️ 重要な注意点:突然死(SUDEP)
- 経過に影響する要因
- まとめ
- <ドラベ症候群>の治療法は?
- ① 薬物療法(治療の中心)
- ② 非薬物療法・補助療法
- ③ 日常生活での治療的管理(非常に重要)
- 🔬 将来の治療(研究段階)
- まとめ
- ① 発作誘因への対策(最重要)
- ② 発作時に備えた安全対策
- ③ 生活環境の安全管理
- ④ 服薬管理(極めて重要)
- ⑤ 学校・園・外出先での配慮
- ⑥ 発達・行動面への配慮
- ⑦ 家族・介護者のケアも重要
- まとめ(重要ポイント)
疾患の概要
ドラベ症候群は、生後まもない時期(多くは生後6か月前後)に発症する、治療抵抗性てんかんを中核とする神経疾患です。
高熱や体温上昇をきっかけに発作を起こしやすく、成長とともにさまざまな型のてんかん発作が出現し、発達の遅れや知的障害を伴うことが多いとされています。
主な原因
- 約 70〜85% の患者さんで、SCN1A遺伝子の変異が認められます
- SCN1A は、脳内の電気信号を制御するナトリウムチャネルを作る遺伝子で、この機能低下により脳が興奮しやすい状態になります
- 多くは新生突然変異で、家族歴がないケースがほとんどです
発症と経過の特徴
乳児期(発症初期)
- 生後6か月前後に、発熱や入浴、気温上昇を契機とした
- 全身けいれん
- 片側けいれん
が起こることが多いです
- 初期は「熱性けいれん」と区別が難しいこともあります
幼児期〜学童期
- 次第に以下のような多彩な発作型が出現します
- 強直間代発作
- ミオクロニー発作(ピクッとする発作)
- 欠神様発作
- 非けいれん性てんかん重積
- 発作は**薬が効きにくい(治療抵抗性)**傾向があります
発達面
- 発症当初は正常発達でも、1〜2歳以降に発達の停滞や遅れが目立つことがあります
- 知的障害、運動の不器用さ、注意障害、自閉スペクトラム様特性などを伴うことがあります
診断
診断は以下を総合して行われます。
- 臨床経過(発症年齢、発作の特徴、誘因)
- 脳波検査(初期は正常なこともあります)
- 画像検査(MRIは多くの場合正常)
- 遺伝子検査(SCN1A変異の確認)
治療の基本方針
1. 抗てんかん薬
ドラベ症候群では、使うべき薬・避けるべき薬が明確です。
有効とされる薬
- バルプロ酸
- クロバザム
- スチリペントール
- フェンフルラミン
- カンナビジオール(CBD製剤)
注意が必要な薬
- カルバマゼピン
- ラモトリギン
- フェニトイン
※ これらは発作を悪化させることがあります
2. 非薬物療法
- ケトン食療法
- 発作誘因(発熱・過温)の回避
- レスキュー薬(発作時頓用薬)の準備
日常生活で特に重要な点
- 発熱管理が極めて重要(早期解熱、感染予防)
- 入浴・高温環境・激しい運動への配慮
- 発作時対応マニュアルの整備(家庭・学校)
- 突然死(SUDEP)のリスクを考慮した安全管理
- 長期的な医療・福祉・教育の連携
予後について
- 発作は年齢とともに頻度が減ることもありますが、完全に消失するケースは多くありません
- 多くの方で、成人期までてんかんと何らかの発達・生活支援が必要となります
- 近年は新規治療薬の登場により、発作コントロールやQOLは改善傾向にあります
まとめ
- ドラベ症候群は、乳児期発症の重症てんかん症候群
- 主因は SCN1A遺伝子変異
- 高熱・体温上昇で発作が誘発されやすい
- 治療抵抗性だが、適切な薬剤選択と生活管理が極めて重要
- 医療・福祉・教育を含む長期的・包括的支援が必要
<ドラベ症候群>の人はどれくらい?
<ドラベ症候群>の人はどれくらい?
ドラベ症候群は**希少疾患(指定難病・希少てんかん症候群)**に分類され、患者数は多くありません。2025年時点での医学文献・疫学研究から、以下のように考えられています。
📊 発症頻度・有病率の目安
■ 出生あたりの頻度
- 約 1万5,000人〜4万人に1人
- 研究によって差はありますが
- 多くの総説では 1万5,000〜2万人に1人 とされることが多いです
■ 日本での推定患者数
- 日本の年間出生数(約70〜80万人)を基にすると
毎年 約40〜50人前後が新たに発症 - 小児〜成人を含めた国内の患者数は約2,000〜3,000人程度と推定されています
※ 正確な全国登録制度がないため、あくまで推定値です
🌍 世界的には?
- 世界全体では、
数万人規模の患者さんが存在すると推定 - 人種・地域差は大きくなく、
どの国・民族でも同程度の頻度で発症するとされています
なぜ「正確な人数」が出しにくいのか
以下の理由で、数字には幅があります。
- 診断が難しい
- 乳児期は「重い熱性けいれん」と区別がつきにくい
- 正確な診断に遺伝子検査(SCN1A)が必要
- 診断時期が遅れることがある
- 幼児期後半〜学童期に確定診断される例もある
- 軽症・非典型例が存在
- SCN1A変異があっても、典型的なドラベ症候群像を示さないケースがある
🔍 てんかん全体の中での位置づけ
- 小児てんかん全体の中では
約0.5〜1%未満 - しかし、
- 治療抵抗性てんかん
- 乳児期発症の重症てんかん
の中では代表的かつ重要な疾患とされています
まとめ
- ドラベ症候群は
出生約1.5万〜4万人に1人の希少疾患 - 日本では
患者数 約2,000〜3,000人前後 - 決して多くはありませんが、
小児神経・てんかん領域では非常に重要な疾患
<ドラベ症候群>の原因は?
<ドラベ症候群>の原因は?
ドラベ症候群の原因は、脳の神経の電気活動を調節する遺伝子の異常です。現在の医学では、明確な分子レベルの原因が分かっているてんかん症候群の代表例とされています。
🧬 主な原因:SCN1A遺伝子変異
■ 最も重要な原因
- 約 70〜85% の患者さんで
SCN1A 遺伝子の変異が見つかります
■ SCN1A遺伝子とは
- 脳内の神経細胞に存在する
電位依存性ナトリウムチャネル(Naᵥ1.1) を作る遺伝子です - このチャネルは、
神経の興奮と抑制のバランスを保つ役割を担っています
⚡ 何が起きているのか(病態のしくみ)
正常な状態
- 興奮性の神経と、抑制性の神経がバランスよく働く
- 脳の電気活動は安定
ドラベ症候群では
- SCN1A変異により
抑制性神経(GABA作動性介在ニューロン)がうまく働かない - その結果
→ 脳が過剰に興奮しやすい状態になる
→ けいれん・てんかん発作が頻発する
※ 特に 発熱・体温上昇 で神経の異常が顕著になり、発作が起きやすくなります。
🧪 遺伝のしかた:ほとんどは「新生突然変異」
- ドラベ症候群の 約90%以上 は
新生突然変異(de novo mutation)- 両親には同じ変異がない
- 受精・胎児発生の初期に偶然生じる
- したがって
家族歴がないケースが大多数です
まれなケース
- 親が軽い SCN1A 変異(熱性けいれんのみ等)を持ち、
子どもで重症化する例もあります - ごく一部で モザイク変異 が報告されています
🧬 SCN1A以外の原因遺伝子(少数)
SCN1Aが見つからない患者さんの一部では、以下の遺伝子が関与することがあります。
- SCN2A
- SCN8A
- PCDH19
- GABRA1 など
ただし、これらは
👉 「ドラベ症候群様てんかん」
👉 「ドラベ類縁疾患」
として扱われることが多く、典型的ドラベ症候群の大部分は SCN1A 変異です。
⚠️ 重要な臨床的ポイント
- SCN1A変異がある場合、
ナトリウムチャネル遮断薬(カルバマゼピン等)は発作を悪化させることがあります - そのため
👉 原因遺伝子の同定は、治療方針に直結します - ドラベ症候群が疑われる場合、
早期の遺伝子検査が極めて重要です
まとめ
- ドラベ症候群の主な原因は
SCN1A遺伝子変異(約70〜85%) - 多くは
新生突然変異で、親からの遺伝ではない - 変異により
脳の抑制機構が弱まり、発作が起きやすくなる - 原因の特定は
治療薬選択・予後・生活管理に直結する
<ドラベ症候群>は遺伝する?
<ドラベ症候群>は遺伝するのでしょうか?
結論から申し上げますと
👉 多くの場合は「遺伝しません」
👉 ただし ごく一部では遺伝する可能性があります
というのが、2025年時点の医学的な整理です。
🔑 基本的な考え方
ドラベ症候群は、主に SCN1A 遺伝子の異常によって起こる病気ですが、
**その遺伝子異常の「生じ方」**が重要です。
① ほとんどのケース:遺伝しない(新生突然変異)
■ 最も多いパターン
- ドラベ症候群の 約90%以上 は
新生突然変異(de novo mutation) - これは
- 両親ともに SCN1A 変異を持っていない
- 受精後〜胎児発生のごく初期に、偶然起きた変異
という状態です
■ この場合
- 両親や兄弟に同じ病気の方はいません
- 「家族にドラベ症候群がいない」のが一般的
- 将来きょうだいが生まれる場合の再発リスクは
👉 1%未満(極めて低い) とされています
② まれなケース:遺伝することがある
頻度は低いですが、以下のような場合には「遺伝する可能性」があります。
1️⃣ 親が SCN1A 変異の保因者の場合
- 親が
- 軽い熱性けいれん
- SCN1A関連てんかん(軽症)
を持っていることがあります
- その変異を子どもが受け継ぐと
ドラベ症候群として重症化する場合があります
👉 この場合は
常染色体優性遺伝
(50%の確率で子どもに伝わる可能性)
2️⃣ 親の「モザイク変異」
- 親の体の一部の細胞だけに SCN1A 変異がある状態
- 親自身は無症状、または非常に軽症
- しかし、生殖細胞に変異が含まれると
複数の子どもに発症することがあります
👉 見た目では分からず、
遺伝子検査をしないと判明しないケースです
③ 患者さん本人が将来、子どもをもつ場合
- ドラベ症候群のある方が成人し、子どもをもつ場合
- SCN1A 変異を保有していれば
👉 子どもに遺伝する確率は約50%
※ ただし、重症度は
- 同じドラベ症候群
- より軽症の SCN1A関連てんかん
になるなど、個人差があります
📌 遺伝に関して特に重要なポイント
- 「遺伝性疾患 = 家族性」とは限らない
- ドラベ症候群は
👉 遺伝子の病気だが、遺伝しないことが多い
👉 という点が大きな特徴です - 将来の妊娠・出産を考える場合は
遺伝カウンセリングが強く推奨されます
まとめ
- ドラベ症候群は
遺伝子が原因だが、多くは遺伝しない - 約90%以上は
新生突然変異 - ごく一部で
親から子へ遺伝するケースがある - 将来の再発リスク評価には
遺伝子検査+遺伝カウンセリングが重要
<ドラベ症候群>の経過は?
<ドラベ症候群>の経過は?
ドラベ症候群は、**年齢とともに症状の質が変化していく(段階的な経過をたどる)**ことが特徴の重症てんかん症候群です。
多くの患者さんで、乳児期 → 幼児期 → 学童期 → 思春期・成人期と、経過に一定のパターンがみられます。
ただし、重症度や経過には個人差が大きい点が非常に重要です。
① 乳児期(生後6か月前後〜1歳頃)
発症初期の特徴
- 生後 5〜8か月頃 に発症することが多い
- 発熱・体温上昇(入浴、予防接種、暑さ) をきっかけに
- 全身性けいれん
- 片側性けいれん
が起こります
- 発作は 長時間(5分以上、時に30分以上) 持続することがあります
この時期のポイント
- 発達は 一見正常 に見えることが多い
- 「重い熱性けいれん」と区別がつきにくく、診断が遅れることがあります
- 発作重積(止まらない発作)で救急搬送されることも少なくありません
② 幼児期(1〜5歳頃)
発作の多様化・重症化
- 発作の種類が増えます
- 強直間代発作
- ミオクロニー発作(ピクッとする)
- 欠神様発作
- 非けいれん性てんかん重積
- 発作が非常に起こりやすく、薬が効きにくい時期です
発達への影響
- 1〜2歳頃から
- 発達の停滞
- 発達の遅れ
が目立ち始めます
- 運動のぎこちなさ、言葉の遅れ、注意の持続困難などが出現します
③ 学童期(6〜12歳頃)
発作の変化
- 発作の頻度は
- 減る人
- 依然として多い人
に分かれます
- 高熱による激しい発作はやや減少することがありますが、完全に消えることは少ないです
神経・行動面
- 知的障害(軽度〜重度)
- 運動失調(ふらつき)
- 注意欠如、多動、自閉スペクトラム様特性
- 睡眠障害
が目立つようになります。
④ 思春期〜成人期
発作について
- 多くの方で
- 発作頻度は徐々に減少
- ただし 完全寛解はまれ
- 夜間発作が残るケースが多いです
生活面での特徴
- 知的障害・運動障害は持続
- 自立生活が難しく、継続的な支援が必要な方が多い
- てんかん発作、転倒、誤嚥などのリスク管理が重要です
⚠️ 重要な注意点:突然死(SUDEP)
- ドラベ症候群では
SUDEP(てんかん突然死)リスクが一般のてんかんより高い
と報告されています - 特に
- 夜間発作
- 発作頻発
- 発作重積の既往
がリスク因子とされています
- そのため
- 発作コントロール
- 夜間の見守り
- 発作対応計画
が非常に重要です
経過に影響する要因
経過は以下によって大きく左右されます。
- 原因遺伝子(多くは SCN1A 変異)
- 変異の種類(欠失・ナンセンスなど)
- 診断の早さ
- 適切な薬剤選択(禁忌薬を避けられたか)
- 発作重積の回数
- 早期からの発達支援・生活支援
まとめ
- ドラベ症候群は
乳児期発症 → 幼児期に最重症 → 学童期以降やや安定
という経過をたどることが多い - 発作は年齢とともに減る傾向がありますが、完全に消えることは少ない
- 知的・運動・行動面の障害は持続し、長期的支援が必要
- 早期診断・適切な治療・生活管理が、予後に大きく影響します
<ドラベ症候群>の治療法は?
<ドラベ症候群>の治療法は?
ドラベ症候群の治療は、発作を完全にゼロにすることが難しいため、
👉 発作の頻度・重症度をできるだけ減らし、命に関わるリスクや生活への影響を最小限にすること
を目標として行われます。
治療は大きく
1️⃣ 薬物療法
2️⃣ 食事療法・補助療法
3️⃣ 日常生活・救急対応
の3本柱です。
① 薬物療法(治療の中心)
✔ 有効性が確認されている抗てんかん薬
ドラベ症候群では「使う薬が非常に重要」です。以下は国際的にも推奨されている薬剤です。
- バルプロ酸
→ 治療の基本薬。多くの患者さんで第一選択になります。 - クロバザム
→ バルプロ酸との併用で効果が高いことが多いです。 - スチリペントール
→ バルプロ酸+クロバザム併用時に追加されることが多く、
ドラベ症候群に特異的に有効性が示されています。 - フェンフルラミン
→ 発作頻度を大きく減らす可能性があり、近年重要性が高まっています。 - カンナビジオール(CBD製剤)
→ 補助的治療として使用され、難治例で効果がみられることがあります。
⚠ 注意すべき「使ってはいけない(悪化させやすい)薬」
ドラベ症候群では、一部の抗てんかん薬が発作を悪化させることが知られています。
- カルバマゼピン
- ラモトリギン
- フェニトイン
👉 これらは SCN1A 変異と相性が悪く、
発作の増悪・重積化を招くことがあります。
② 非薬物療法・補助療法
● ケトン食療法
- 高脂肪・低糖質の食事療法
- 薬で十分な効果が得られない場合に検討されます
- 発作頻度が減少する例がありますが、専門的管理が必要です
● レスキュー薬(発作時頓用薬)
- 長引く発作・発作重積に備えて
- 自宅
- 学校
- 外出先
で使用できる薬を準備します
- 早期投与が命を守る重要なポイントです
③ 日常生活での治療的管理(非常に重要)
発作誘因の回避
- 発熱・体温上昇が最大の誘因
- 早めの解熱
- 感染予防
- 入浴・高温環境への配慮
安全管理
- 転倒・誤嚥・夜間発作への対策
- SUDEP(てんかん突然死)リスクを考慮した見守り体制
発作対応計画
- 家族・学校・施設で共有する
**「発作時対応マニュアル」**の作成
🔬 将来の治療(研究段階)
- 遺伝子治療
- アンチセンス核酸(ASO)治療
- SCN1A機能を補う分子標的治療
などが研究段階にあり、
「発作の対症療法」から「原因に直接働きかける治療」への移行が期待されています。
ただし、2025年時点では臨床研究段階であり、標準治療ではありません。
まとめ
- ドラベ症候群の治療は
薬物療法+生活管理+救急対応の総合的アプローチ - 薬の選択を誤ると悪化するため、専門医による管理が必須
- 新しい薬剤の登場で、発作コントロールとQOLは確実に改善してきている
- 根治療法は未確立だが、原因治療の研究は進行中
<ドラベ症候群>の日常生活の注意点
ドラベ症候群では、発作を誘発しやすい要因を避けることと、万一の発作に備えた安全管理が、治療と同じくらい重要です。
ここでは、家庭・外出・学校(園)・成長段階を通じて共通して重要なポイントを整理いたします。
① 発作誘因への対策(最重要)
🔥 発熱・体温上昇の管理
ドラベ症候群では、発熱や体温上昇が最大の発作誘因です。
- 発熱時は
- 早めの解熱(医師の指示に従った解熱薬使用)
- こまめな体温測定
- 入浴・シャワーは
- 短時間・ぬるめの温度
- 体調が悪い日は無理をしない
- 夏場・高温環境では
- 室温管理(冷房)
- 水分補給
- 直射日光を避ける
👉 **「熱を出さない努力」よりも「熱が出たときの早期対応」**が重要です。
② 発作時に備えた安全対策
🆘 発作対応の準備
- **レスキュー薬(発作時頓用薬)**を常に携帯
- 使用タイミング・投与方法を
- 家族
- 学校・園
- 介護・支援者
全員で共有
🧠 発作対応マニュアル
- 以下を明確にした書面を準備すると有用です
- 何分続いたら薬を使うか
- いつ救急要請するか
- 発作後の観察ポイント
③ 生活環境の安全管理
🏠 家庭内
- 転倒・頭部打撲防止
- 角の保護
- 滑りにくい床
- 入浴時は必ず見守り
- ベッド周囲の安全確保(夜間発作対策)
🌙 夜間の配慮
- ドラベ症候群では夜間発作が多いため
- 同室就寝
- モニター・見守り機器の活用
- SUDEP(てんかん突然死)リスクを意識した体制づくりが重要です
④ 服薬管理(極めて重要)
- 決められた時間に確実に服薬
- 飲み忘れ・自己判断での中断は避ける
- 新しい薬・市販薬を使う前は必ず主治医に相談
特に、原因遺伝子として多い
SCN1A 変異がある場合は、
👉 発作を悪化させる薬があるため注意が必要です。
⑤ 学校・園・外出先での配慮
🏫 学校・園
- 病気の特性を正しく共有
- 発作時対応・レスキュー薬使用の同意と訓練
- 体育・水泳・行事は
- 体調と環境に応じて個別判断
🚗 外出・旅行
- レスキュー薬・医療情報カードを携帯
- 長時間移動・疲労を避ける
- 気温・体調を最優先に予定を調整
⑥ 発達・行動面への配慮
- 知的障害、注意障害、自閉スペクトラム様特性がみられることがあります
- 以下が重要です
- 無理をさせない
- 成功体験を積み重ねる
- 療育・特別支援教育の活用
- 発作だけでなく
「生活全体の安定」が発作抑制にもつながるとされています
⑦ 家族・介護者のケアも重要
- 介護負担が非常に大きくなりやすい疾患です
- 家族が
- 疲弊しない
- 孤立しない
ことも、長期的には患者さん本人の安全につながります
- 医療・福祉・家族会・支援制度の活用が強く推奨されます
まとめ(重要ポイント)
- 発熱・体温上昇対策が最優先
- 発作対応・レスキュー薬の準備は必須
- 夜間発作と SUDEP を意識した安全管理
- 服薬管理と禁忌薬への注意
- 学校・社会との情報共有
- 長期的な医療・福祉・心理的支援が不可欠
