目次
<IgA腎症>はどんな病気?
- 🔹 基本的な特徴
- 🔹 原因・発症の仕組み
- 🔹 主な症状
- 🔹 経過
- 🔹 治療の基本
- 1. 世界的な頻度
- 2. 日本での患者数
- 3. 発症の年齢・性別
- ✅ まとめ
- 🔹 基本的な考え方
- 🔹 発症のメカニズム(4段階モデル)
- 🔹 きっかけとなる要因
- 🔹 遺伝との関係
- 🔹 基本
- 🔹 家族発症の報告
- 🔹 関与する遺伝子
- 🔹 環境要因も大きい
- 🔹 初期〜診断時
- 🔹 中期(数年〜数十年)
- 🔹 進行例
- 🔹 長期予後(統計的データ)
- 🔹 治療での改善
- 1️⃣ 基本:生活・支持療法
- 2️⃣ 薬物治療(腎保護の柱)
- 3️⃣ 免疫療法(炎症を抑える)
- 4️⃣ 合併症への対応
- 5️⃣ 腎移植
- 1️⃣ 食事
- 2️⃣ 水分・排尿習慣
- 3️⃣ 感染予防
- 4️⃣ 薬の注意
- 5️⃣ 血圧管理
- 6️⃣ 生活習慣
- 7️⃣ 妊娠・女性の注意点
🔹 基本的な特徴
- 腎臓の糸球体にIgA(免疫グロブリンA)が沈着して炎症を起こす病気です。
- 日本を含むアジアで最も多い「原発性糸球体腎炎」。
- 多くは**血尿(特に感冒などの上気道感染後に出る)**で見つかります。
🔹 原因・発症の仕組み
- IgA1分子の糖鎖異常が生じる
- それに対する自己抗体ができて免疫複合体を形成
- それが腎臓の糸球体メサンギウムに沈着して炎症を引き起こす
👉 慢性的に糸球体が傷つき、蛋白尿や腎機能低下につながります。
🔹 主な症状
- 顕微鏡的血尿(検尿で血が混じっているのを発見)
- 肉眼的血尿(風邪や扁桃炎の後に尿が赤くなる)
- 蛋白尿(進行例)
- 多くは初期に自覚症状がなく、健康診断で見つかるケースが多い
🔹 経過
- 経過は人によって異なり、軽症で一生大きな問題を起こさない人もいれば、
徐々に進行して慢性腎臓病(CKD)→末期腎不全(透析や移植が必要)に至る人もいます。 - 進行リスクが高いのは「持続的な蛋白尿が多い」「高血圧合併」「腎機能が低下している」などのケース。
🔹 治療の基本
- 生活管理:減塩・高血圧予防
- 降圧薬(ACE阻害薬・ARB):蛋白尿を減らす
- 扁桃摘出+ステロイドパルス療法:日本でよく行われる
- 免疫抑制薬やステロイド:蛋白尿や進行例で検討
- 進行すれば透析や腎移植が必要
✅ まとめ
- IgA腎症は「IgAが腎臓に沈着して炎症を起こす糸球体腎炎」。
- 血尿が特徴的で、進行すると蛋白尿・腎不全に至ることがある。
- 治療は生活習慣+降圧薬+必要に応じて免疫治療。
<IgA腎症>の人はどれくらい?
1. 世界的な頻度
- 世界全体では「最も多い原発性糸球体腎炎」とされます。
- 腎生検で診断される糸球体腎炎のうち 20〜40%前後がIgA腎症。
- 有病率(人口あたりの存在率)は国によって差が大きく、
- アジア(日本・中国・韓国)で特に多い
- 欧米ではやや少なめ
2. 日本での患者数
- 厚生労働省の難病指定(指定難病第67)になっており、登録患者は約3万人以上。
- 実際には腎生検を受けていない潜在的な人も含めると、数十万人規模と推定されています。
- 成人CKDの主要原因のひとつで、透析導入原因の約10%前後を占めています。
3. 発症の年齢・性別
- 好発年齢:10代後半〜30代前半に多い(学童〜青年期に発症しやすい)。
- 性別:男性にやや多い(男女比およそ2:1)。
✅ まとめ
- IgA腎症は「世界で最も多い糸球体腎炎」。
- 日本では登録患者3万人超、潜在患者は数十万人規模。
- 青年期に多く、男性にやや多い。
<IgA腎症>の原因は?
🔹 基本的な考え方
IgA腎症は「体の免疫(特にIgA抗体)の異常によって、腎臓の糸球体に炎症が起こる病気」です。
現在は「**多段階の発症モデル(多ヒット仮説)」**で説明されています。
🔹 発症のメカニズム(4段階モデル)
- IgA1の糖鎖異常
- 本来のIgA1分子のO結合糖鎖に「ガラクトース」がつきにくくなる(異常IgA1)。
- 主に扁桃や腸管粘膜の免疫組織で作られる。
- 自己抗体の産生
- この異常IgA1を「異物」と認識して、抗IgA1自己抗体(IgGやIgA)が作られる。
- 免疫複合体の形成
- 異常IgA1+自己抗体が結合 → 大きな免疫複合体を作る。
- 腎糸球体メサンギウムへの沈着 → 炎症
- 複合体が腎臓の糸球体に沈着し、メサンギウム細胞を刺激。
- サイトカイン・増殖因子が放出され、炎症・線維化 → 尿に血が混じる・蛋白が漏れる。
🔹 きっかけとなる要因
- 感染症:特に扁桃炎や上気道感染のあとに血尿が出る。
- 粘膜免疫異常:腸管や扁桃の免疫がIgA産生を増やす。
- 遺伝的素因:HLAタイプや免疫関連遺伝子が関与する可能性。
- 環境因子:食事・腸内細菌叢の関与が近年注目されている。
🔹 遺伝との関係
- 「遺伝病」ではないが、家族内発症がやや多いことから、免疫や粘膜反応の遺伝的背景があると考えられている。
✅ まとめ
- IgA腎症の原因は「異常なIgA1(糖鎖異常)+自己抗体+免疫複合体沈着」。
- 扁桃や腸管免疫が関与し、感染を契機に症状が出やすい。
- 遺伝的素因と環境因子が組み合わさって発症する。
<IgA腎症>は遺伝する?
🔹 基本
- IgA腎症は後天性の自己免疫性腎炎であり、親から子へ必ず遺伝する病気ではありません。
- つまり「家族にIgA腎症がいるから必ず発症する」というものではないです。
🔹 家族発症の報告
- 一部で**家族内に複数の患者がいるケース(家族性IgA腎症)**が報告されています。
- 特に兄弟や親子での発症例があり、**遺伝的な体質(免疫反応やIgA産生の傾向)**が背景にあると考えられています。
🔹 関与する遺伝子
- HLA(免疫を制御する遺伝子)やIgA産生・糖鎖修飾に関わる遺伝子の多型がリスクに関連するとされます。
- ただし「単一遺伝子異常による遺伝病」ではなく、**多因子性(遺伝+環境の組み合わせ)**と考えられています。
🔹 環境要因も大きい
- 扁桃や腸管の免疫異常、感染症、食生活、腸内細菌なども発症に影響。
- 遺伝素因だけでなく、生活環境や免疫応答が重なって発症するのが特徴です。
✅ まとめ
- IgA腎症は直接遺伝する病気ではない。
- ただし家族内に出やすいことがあり、遺伝的体質が関与している可能性はある。
- 発症には環境因子も大きく、遺伝だけでは決まらない。
<IgA腎症>の経過は?
🔹 初期〜診断時
- 多くは健康診断の尿検査で血尿や蛋白尿が見つかることで発覚。
- あるいは**感冒後に肉眼的血尿(尿が赤くなる)**で気づかれる。
- 自覚症状が乏しく、軽症のうちは体調に大きな異常を感じないことも多い。
🔹 中期(数年〜数十年)
- 血尿が持続するほか、徐々に蛋白尿が増える。
- 持続的な蛋白尿(特に1 g/日以上)は、腎機能低下のリスク因子。
- 高血圧を合併する例も多い。
🔹 進行例
- 腎機能(eGFR)が徐々に低下し、慢性腎臓病(CKD)ステージが進行。
- 進行速度は個人差が大きい。
- 軽症例 → 数十年たっても腎機能が保たれる
- 進行例 → 10〜20年で末期腎不全(透析や移植が必要)に至る
🔹 長期予後(統計的データ)
- **30〜40%**の患者は発症後20〜30年で末期腎不全(ESKD)に進むとされる。
- 残りは緩徐に進行、あるいは生涯透析に至らない例も多い。
- 予後不良因子:
- 持続的な蛋白尿(特に1 g/日以上)
- 高血圧
- 腎機能低下(診断時eGFR低値)
- 男性、若年発症、腎生検での高度病変
🔹 治療での改善
- 近年は厳格な降圧管理(ACE阻害薬・ARB)やステロイド療法・扁桃摘出+ステロイドパルス療法によって予後が改善してきています。
- 昔は「進行性で必ず透析に至る」と言われていましたが、今では早期に介入すれば進行をかなり遅らせられることがわかっています。
✅ まとめ
- IgA腎症は経過に幅が広く、軽症で一生腎機能が保たれる人もいれば、進行して透析に至る人もいる。
- 発症から20〜30年で約3〜4割が末期腎不全になる。
- 持続的蛋白尿・高血圧・腎機能低下が進行リスク。
- 適切な管理で予後改善が可能。
<IgA腎症>の治療法は?
1️⃣ 基本:生活・支持療法
- 減塩:1日 6g 未満を目標
- 高血圧管理:収縮期 <130 mmHg、可能なら120 mmHg前後を目標
- 蛋白制限:進行例では過剰な蛋白摂取を控える
- 禁煙、適度な運動、体重管理
2️⃣ 薬物治療(腎保護の柱)
- ACE阻害薬(ACEi)またはARB
- 蛋白尿を減らし、腎機能低下を抑える
- 蛋白尿が 0.5〜1 g/日 以上ある場合は必須
- 利尿薬・Ca拮抗薬:血圧コントロールが不十分な場合に追加
3️⃣ 免疫療法(炎症を抑える)
- ステロイド療法
- 日本では「扁桃摘出+ステロイドパルス療法」が特徴的(特に蛋白尿が持続する例で)
- 国際的には「蛋白尿 1 g/日以上・腎機能保たれている例」で経口ステロイド投与が推奨されることも
- 免疫抑制薬(ミコフェノール酸モフェチルなど)
- 一部の国で使用されるが、標準ではない
- 新しい治療薬の開発
- 補体系を標的とした薬(例:フィルゴリマブ、イプタコパンなど)が臨床試験中
4️⃣ 合併症への対応
- 腎性高血圧 → 厳格な降圧
- 脂質異常症 → スタチン投与で心腎保護
- 進行例(CKD G4〜G5) → 透析療法や腎移植を検討
5️⃣ 腎移植
- 末期腎不全に至った場合の根治的治療。
- IgA腎症は移植後に再発することがあるが、多くは進行が緩やか。
✅ まとめ
- 第一歩は生活管理+ACEi/ARBによる腎保護。
- **蛋白尿が持続する場合はステロイド(日本では扁桃摘出併用)**が重要。
- 新規の免疫・補体系標的薬も研究段階で、将来の選択肢になりつつある。
- 最終的に透析や移植が必要になる例もあるが、早期介入で進行を大きく遅らせられる。
<IgA腎症>の日常生活の注意点
1️⃣ 食事
- 減塩:1日 6g 未満が目標(外食・加工食品に注意)
- 蛋白摂取:腎機能が悪化している場合は過剰を避ける(主治医の指示で調整)
- バランス重視:野菜・果物を取り入れつつ、カリウム制限が必要な場合もあるので腎機能に応じて調整
- アルコール:飲みすぎは血圧・腎機能に悪影響。節度ある量に
2️⃣ 水分・排尿習慣
- 水分は不足しないように(脱水は腎血流を悪化させる)
- 血尿が出たときは安静と補水が大事
3️⃣ 感染予防
- 扁桃炎や上気道感染が血尿・再燃のきっかけになりやすい
- 風邪予防:手洗い・うがい・マスク・十分な睡眠
- 熱が出たら放置せず早めに受診
4️⃣ 薬の注意
- **NSAIDs(ロキソニン・イブプロフェン等)**は腎機能悪化のリスク → むやみに使わない
- 市販薬やサプリは自己判断せず、主治医・薬剤師に確認
5️⃣ 血圧管理
- 毎日の家庭血圧測定が推奨
- 高血圧は腎症進行の最大リスク → 安定的に <130/80 mmHg を目標
6️⃣ 生活習慣
- 禁煙(喫煙は腎機能悪化・心血管リスク↑)
- 適度な運動:ウォーキングなど有酸素運動は◎、激しいスポーツや過度の筋トレは腎に負担をかけることがあるので注意
- 十分な睡眠とストレスケアも大切
7️⃣ 妊娠・女性の注意点
- 妊娠は腎症進行・高血圧のリスクが上がる → 事前に主治医と計画的に
- 薬剤(ACE阻害薬・ARB・一部免疫抑制薬)は妊娠中禁忌 → 必ず切り替えが必要
✅ まとめ
- 減塩・血圧管理・感染予防が三本柱
- NSAIDsや市販薬に注意
- 禁煙・適度な運動・睡眠で全身を守る
- 血尿や蛋白尿が増えたら早めに医師に報告