パーキンソン病

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目次

<パーキンソン病> はどんな病気?

パーキンソン病は身体を動かす神経に障害があらわれる進行性の病気で、現代の医学では完治が困難とされる難病として指定されています。

主な症状として、次の様なものが挙げられます。

《運動症状》

無動

顔の表情が硬くなったり、動作の開始に時間がかかってしまうようになります。
また、小字症といって、字を書くときにその字が小さくなってしまうということもあります。

(安静時)振戦

基本的に安静にしているときに手足や顔、頸部に無意識に震えの症状が出てしまうことを言います。
何か自分で意識して運動しているときは症状は基本的に出ることはありません。

姿勢反射障害

初期症状としてはあまりみられませんが、症状が進行してくると、身体が傾いた時に姿勢を元に戻しにくくなり、転びやすくなるという症状があらわれます。

筋固縮

全体の筋肉の緊張が強くなり、手足がうまく動かせなくなります。
また、他人からの補助があって身体を動かそうとしても、カクカクとスムーズには動かせず、抵抗されているような状態になってしまいます。

これらの症状をまとめてパーキンソン病の4大症状と言われています。

《非運動症状》

起立性低血圧(たちくらみ)、易疲労性(疲れやすい)、便秘、頻尿、嗅覚低下、意欲の低下などの症状が非運動性症状歳て挙げられます。

<パーキンソン病>の人はどれくらい?

人口1万人当たり、10~12人の患者さんがいらっしゃると言われています。
日本全体では、約15万人の方が罹患しています。
発症する年齢は基本的に50歳以降で、男性よりも女性になりやすい傾向があります。
時にに若年で発症することもあり、これを若年性パーキンソン病といいます。

<パーキンソン病>の原因は?

パーキンソン病の原因として、大脳の下に位置する中脳の黒質に存在するドパミン神経細胞が減少することによって、発症することが分かっています。
このドパミン神経細胞が減少すると脳内のドパミンの送料も減ってしまいます。
このことから、主な治療歳て、ドパミン補充療法があります。

パーキンソン病の発症因子として現在疑われているのが、αシヌクレイン遺伝子の異常です。
このαシヌクレイン遺伝子は単一な異常ではなく、遺伝子異常が重なることで大きな発症因子とされていますがまだ完全には解明されていません。

<パーキンソン病>は遺伝する?

基本的に遺伝はしません。
家族性(遺伝性)パーキンソン病は5-10%で、大半は非遺伝性です。
そして、この遺伝子が遺伝したからといって、パーキンソン病を必ず発症するということではありません。
環境因子など様々な要因が重なることで発症すると言われていますが、まだはっきりと分かっていません。

<パーキンソン病>の経過は?

治療薬が研究開発された今、健常な人とパーキンソン病患者さんの間に寿命の差はないと言われています。
ただ、気を付けるべきなのは、転倒による骨折や他の病気をしないことが現時点において最も重要なことだと言えます。
また、食べ物や飲み物を誤飲してしまい、誤嚥性肺炎を起こしてしまうことが報告されています。
周りの方々の手助けが重要となります。
代謝排泄習慣も気にしなくてはならないことの一つで、便秘が続いてしまうことで、腸閉塞の危険が高まってきてしまうので、排便は週に2回以上出すよう心掛けることも大切です。

<パーキンソン病>の治療法は?

基本的にパーキンソン病の治療方法は薬物療法です。

ドパミン系薬剤

L-dopa(レボドパ)

ドパミン神経細胞が減少するため、減少したドパミンを補います。
ドパミン自体を摂取しても、分子量などの関係で脳へは移行しないため、ドパミン前駆物質のL-dopa(レボドパ)を服用します。
レボドパは腸で吸収され 血液脳関門 を通って脳内へ移行し、ドパミン神経細胞に取り込まれてドパミンに生成されます。
生成されたドパミンはシナプス小胞にとりこまれ、運動調節のために放出されドパミン受容体に作用します。
ご高齢の方の薬物治療開始に向いています。

ドパミンアゴニスト

レボドパの副作用を克服するために開発されました。
レボドパは効果の持続時間は2時間程度で切れてしまいます。
これは人間の血中や消化管内にドパ脱炭酸酵素(DDC)が多く含まれているため、体内の薬剤がすぐに失われてしまうためです。
そこで、その短所を克服した、作用時間の長いドパミン受容体刺激薬(アゴニスト)です。
しかしこの薬はレボドパと比べてべて、作用発現までの時間が長くかかってしまうのに加え、吐き気や幻覚等の副作用にも注意が必要です。
若年の方の薬物治療開始に向いています。

ドパミンアゴニストの中でも、アポモルヒネは突然入眠してしまう副作用が挙げられるため、服用中は運転しないよう注意が必要です。

非ドパミン系薬剤

抗コリン薬

パーキンソン病では、脳内のドパミンが減少することに伴い、アセチルコリンが相対的に過剰となり、筋固縮などの症状の原因となってしまいます。
また、認知症の原因となるアルツハイマー病はアセチルコリンの減少が起因しているので、70歳以上の高齢者は原則、服用しないようにします。

MAO-B阻害薬

ドパミン神経以外の作用薬には、アセチルコリン受容体に作用する抗コリン薬、グルタミン酸受容体に作用するアマンタジン、アデノシン受容体に作用するイストラデフィリン、シグマ受容体に作用するゾニサミドがあります。また、L-dopaの作用を強める代謝 酵素阻害薬 があります。L-dopaが腸、肝臓、血管内でドパミンに変わるのを防ぐドパ脱炭酸 酵素 阻害薬(DCI)(カルビドパ、ベンゼラジド)、同様にL-dopaが脳に入る前に分解されるのを防ぐカテコラミン-O-メチル基転移酵素阻害薬(COMT-I)(エンタカポン)、脳内でドパミンが分解されるのを防ぐモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO-I)(セレギリン)があります。いずれもドパミンの作用を強めるように働きます。DCI,COMT-IはL-dopaとの合剤もあります。
手術療法は脳内に電極を入れて視床下核を刺激する方法が最もよく行われます。視床下核は運動を抑制していると考えられ、ここを刺激して視床下核の機能を麻痺させると運動の抑制がとれて体が動きやすくなります。薬で治療しても振戦の強い方やウェアリングオフという、薬の効果が持続しない方で効果が期待されます。
体を動かすことは体力を高め、パーキンソン病の治療になります。激しい運動ではなく、散歩やストレッチなど、毎日運動を続け体力を高めることは重要です。また、気持ちを明るく保つことも重要です。気分が落ち込むと姿勢も前かがみとなり、動作も遅くなります。私たちが意欲を持って行動する時は脳内でドパミン神経が働いていると考えられています。日常生活の過ごし方も大事な治療ですので、是非工夫してください。
ドパミンの原料はチロシンです。チロシンはチロシン水酸化酵素(TH)の働きでDOPAに、DOPAはドパ脱炭酸酵素(DDC)の働きでドパミンになります。ドパミンは中脳の黒質にあるドパミンを作る細胞で作られ、突起を通り線条体まで運ばれ、ここで突起の先端に貯蔵されます。ドパミンは必要に応じて突起の先端から分泌され、線条体の細胞にあるドパミン受容体に結合して情報を伝えます。仕事を終えたドパミンはドパミンを作る細胞の突起の先端に取り込まれて再利用されるとともに、MAOあるいはCOMTと呼ばれる酵素によって分解されます。線条体ではドパミンのほかにアセチルコリンという 神経伝達物質 があって、両者はバランスをとっています。パーキンソン病ではドパミンが減少するため、相対的にアセチルコリンの機能が過剰になります。これが抗コリン薬を治療に使う理由です。ドパミンはドパミンβ水酸化酵素の働きでノルエピネフリンになります。パーキンソン病が進行すると、ノルエピネフリンも不足します。

塩酸アマンタジン

塩酸アマンタジン(商品名:シンメトレル)は元々抗ウイルス薬として開発され、A型インフルエンザの治療薬としても使われています。線条体でのドパミン放出を促す働きがあるほか、ジスキネジアを抑制する効果が知られています。ただし全ての患者さんに有効なわけではなく、また副作用として幻覚や妄想が出やすいので注意が必要です。特に腎機能低下のある方では用量を減らす必要があります。

ゾニサミド

この薬は、既にてんかんの治療薬として使われていましたが、2009年にパーキンソン病に使うことが認められました。パーキンソン病に使う薬は商品名トレリーフで、1錠が25mgで、2錠まで使います。一方、てんかん予防に使うのは商品名がエクセグランで、1錠100mgです。間違えないようにしましょう。どうしてパーキンソン症状を改善するのか、その理由は完全には解明されていません。レボドパとの併用で使う薬で、ウエアリングオフや振戦の残る時に特に有効です。作用時間は長いので、1日1回の服薬で十分です。

アデノシン受容体拮抗薬

日本で開発された新しい薬(イストラデフィリン:商品名ノウリアスト)で、ウェアリングオフを改善します。ウェアリングオフを軽くする作用がありL-dopaと併用します。ウェアリングオフの改善以外の作用については、まだ充分に解っていません。

カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害薬

吸収されたレボドパは血液に入り、血液脳関門を通って脳に入ります。血液の中にはドパ脱炭酸酵素(DDC)やCOMTという酵素があり、レボドパを分解します。現在使われているレボドパ製剤の多くは、レボドパと末梢性DDC阻害薬の合剤です。このため、レボドパはCOMTによって分解されます。末梢性COMT阻害薬のエンタカポン(商品名:コムタン)はそれを防いでレボドパが脳内にたくさん入るようにする薬です。コムタンの効果は短いので、毎回レボドパと同時に服薬する必要があります。

ドロキシドパ

長期間経過したパーキンソン病で問題になる症状のひとつに、「足のすくみ」があります。これにはもう一つの神経伝達物質であるノルエピネフリンの関与が示唆されています。ノルエピネフリンはβ水酸化酵素によってドパミンから合成されるため、ドパミンが減るとやがて不足します。前駆体であるドロキシドパ(商品名:ドプス)はそれを補うために使われます。ただし全ての患者さんに有効なわけではありません。このほか意欲低下や立ちくらみを改善する効果が知られています。ドロキシドパは日本で開発された薬で、欧米では立ちくらみの治療薬として承認されています。

パーキンソン病では、一般に複数の薬を組み合わせて治療しています。薬によって、服薬のタイミングが異なりますので、その理由をよく理解して服薬することが大切です。また、パーキンソン病の治療薬以外の薬を併用するときには、飲み合わせに注意することも大切です。服薬する全ての薬を、主治医や薬剤師に確認してもらってください。

手術療法

パーキンソンの手術療法の歴史は長く、定位脳手術が1947年に開発されました。
この定位脳手術は、頭蓋骨に固定したフレームと脳深部の目標点の位置との関係を三次元化して、外から見ることのできない脳内の目標点に正確に計測して祝津を実行する技術です。
頭蓋骨には小さい穴をあけて針を刺すだけなので、手術侵襲は少なく済みます。
1950年代から60年代にかけて、この手術はさかんに行われましたが、現在ではレボドパなどの特効薬が登場したことから、手術を受ける人は激減しました。
しかし、レボドパ治療はどうしても長期の治療となってしまう問題があることから、1980年代後半から再び定位脳手術が見直されています。
現在の定位脳手術には、熱を加えて目標点を破壊する従来の方法(凝固術)と、脳深部刺激治療(DBS:deep brain stimulation)があります。
DBSは脳の深部に電極を留め置き、前胸部に植え込んだ刺激装置で高頻度で刺激することで、その場所の神経を停止させ、凝固術による目標点の破壊と同じ効果の得られる治療法です。
日本では2000年4月から 保険適用 が認められました。DBSは脳を破壊しないので手術合併症が少ないかわり、異物が体内に残るため感染症や断線などのリスクがあります。
パーキンソン病の定位脳手術は特殊な技術を要するため、限られた病院でのみ実施されています。
この手術療法も、病気の原因を根本的に治す根治療法ではなく、症状を改善する対症療法です。手術は服薬と比べてリスクを伴いますので、現在の病状や予想される結果を主治医と十分相談してから受けることが大切です。

<パーキンソン病> の日常生活での注意点

パーキンソン病を患うと、運動機能障害だけでなく、うつ症状・認知症状などの非運動症状も起こるため、その後の患者の生活の質は、周囲のサポートが左右するといえるでしょう。
今のところ、パーキンソン病の進行を完全に食い止めたり、完治させたりできる治療法はなく、対症療法が中心です。
パーキンソン病そのものはすぐに命にかかわる病気ではありません。発病後は、症状一つひとつとしっかり向き合い、医師に適切な処置を施してもらいながら、患者本人も家族も楽しく生活できるように工夫をすることが大切です。

<パーキンソン病>の最新情報

全国パーキンソン病友の会京都府支部 (京都パーキンソン病友の会)

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