目次
<片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群>はどんな病気?
**<片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群(Hemiconvulsion–Hemiplegia–Epilepsy syndrome:HHE症候群)>**は、乳幼児期に起こる長時間の片側けいれんをきっかけに、片麻痺(半身の運動障害)と、その後の慢性てんかんを残すことがある重症症候群です。
- 発症年齢:主に1歳前後〜幼児期早期
- 初発イベント:発熱に伴う、片側だけの長時間けいれん(半身けいれん)
- 急性期後:**片麻痺(右または左の半身の麻痺)**が出現
- 慢性期:難治性てんかんを発症することがあります
- 典型的な経過(3段階)
- 原因・病態の考え方
- 診断
- 治療
- 予後
- 重要なポイント(まとめ)
- 発症頻度の目安
- 日本における状況
- なぜ正確な人数が分かりにくいのか
- 他の小児てんかんとの比較
- まとめ(重要ポイント)
- ① 直接の引き金:長時間の片側けいれん(最重要)
- ② 誘因として多いもの(背景因子)
- ③ 病態生理(なぜ片側だけ障害されるのか)
- ④ 遺伝との関係
- ⑤ 他疾患との鑑別(原因の違い)
- なぜ「急性期対応」が最重要か
- まとめ(重要ポイント)
- 結論
- なぜ「遺伝しない」と考えられているのか
- ただし、注意すべき「背景因子」はあります(重要)
- 兄弟姉妹への影響は?
- 他の小児てんかん症候群との違い(整理)
- まとめ(重要ポイント)
- 時期別の経過
- 発達・機能予後
- 生命予後
- 経過を左右する重要因子
- まとめ(重要ポイント)
- 治療の基本方針(重要)
- ① 急性期治療(最重要)
- ② 亜急性期〜慢性期治療
- ③ 難治例に対する外科治療(限られたケース)
- ④ 支持療法・長期フォロー
- まとめ(重要ポイント)
- 日常生活の基本方針
- ① けいれん・発熱への備え(最重要)
- ② 片麻痺に対する日常生活の工夫
- ③ リハビリテーションの継続
- ④ てんかん治療の管理
- ⑤ 学校・保育・社会生活での配慮
- ⑥ 心理面・ご家族への配慮
- ⑦ 将来を見据えた準備
- まとめ(重要ポイント)
典型的な経過(3段階)
① 急性期:片側の長時間けいれん
- 高熱を伴うことが多い(感染症など)
- 数十分〜数時間に及ぶ半身けいれん
- けいれん重積に近い状態になることがあります
② 亜急性期:片麻痺の出現
- けいれん後、同じ側の手足が動きにくくなる
- 初期は浮腫(むくみ)や炎症による脳の急性障害が画像で確認されることがあります
- 麻痺は一部回復することもありますが、後遺する例もあります
③ 慢性期:てんかんの発症
- 数か月〜数年後に**部分てんかん(焦点発作)**が出現
- 薬剤抵抗性になることもあります
- 片麻痺は慢性的に残ることがあります
原因・病態の考え方
HHE症候群は単一の原因疾患というより、重篤な片側けいれんによる二次的な脳障害の結果として起こる症候群と考えられています。
- 誘因:発熱・感染症
- 病態:
- 長時間の片側けいれん
→ 脳血流障害・炎症・浮腫
→ 大脳半球の不可逆的障害
- 長時間の片側けいれん
- 遺伝性:明確な遺伝病ではありません
診断
- 病歴(発熱+片側長時間けいれん)
- MRI
- 急性期:患側大脳半球の腫脹
- 慢性期:片側大脳萎縮
- 脳波:患側に焦点性異常
- 他疾患(脳炎、脳梗塞、遺伝性てんかんなど)の除外
治療
急性期(最重要)
- けいれんの迅速な停止
- これが後遺症を減らす最大のポイントです
- 抗てんかん薬、集中治療管理
- 脳浮腫対策(症例により)
慢性期
- 抗てんかん薬による発作コントロール
- 片麻痺に対するリハビリテーション
- 難治例では、**外科治療(半球離断術など)**が検討されることもあります
予後
- 運動機能:軽度〜重度まで幅があります
- 知的発達:比較的保たれる例もありますが、個人差が大きい
- てんかん:慢性化・難治化する例が一定数存在します
重要なポイント(まとめ)
- 乳幼児期の発熱に伴う片側長時間けいれんが引き金
- 片麻痺+てんかんを後遺する可能性
- 急性期の迅速なけいれん制御が予後を左右
- 明確な遺伝病ではない
<片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群>の人はどれくらい?
発症頻度の目安
世界的な頻度
- 正確な発症率は確立されていません
- ただし、複数の小児神経学レビューでは
👉 「小児てんかん全体の 0.1%未満」
👉 「小児のけいれん重積後症候群の中でも非常に稀」
と位置づけられています。
感覚的な頻度
- **「数万人〜数十万人に1人レベル」**の希少疾患と考えられています
- 大規模疫学研究が困難なほど、症例数は少ないです
日本における状況
- 全国規模の患者数統計は存在しません
- 実態は
- 症例報告
- 単施設・多施設後ろ向き研究
が中心です
- 小児神経専門施設でも
👉 「一施設で数年に1例あるかどうか」
というレベルとされています
なぜ正確な人数が分かりにくいのか
- 急性期イベント(長時間の片側けいれん)として発症する
- 診断名が
- 「重症熱性けいれん後遺症」
- 「症候性焦点てんかん」
などに分散されやすい
- HHEは**単独疾患ではなく「症候群名」**である
- 希少疾患で全国登録制度がない
他の小児てんかんとの比較
| 疾患 | 頻度の目安 |
|---|---|
| ウエスト症候群 | 約4,000〜6,000人に1人 |
| 大田原症候群 | 約10万〜30万人に1人 |
| HHE症候群 | さらに稀(正確な数不明) |
👉 **HHEは重症乳幼児てんかん症候群の中でも「かなり稀」**な部類です。
まとめ(重要ポイント)
- 発症頻度は非常に低い
- 小児てんかん全体の0.1%未満
- 日本では年間に数例あるかどうかと推定される
- 正確な人数把握は困難だが、臨床的には希少疾患
<片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群>の原因は?
HHE症候群は、
👉 特定の遺伝病や先天疾患が直接の原因ではありません。
乳幼児期に起こる「長時間の片側けいれん」が引き金となり、
その結果として脳の一側半球に重い二次障害が生じることで成立する症候群
と理解されています。
① 直接の引き金:長時間の片側けいれん(最重要)
特徴
- 高熱を伴うことが多い
- 片側(右または左)のみがけいれん
- 数十分〜数時間持続(けいれん重積に近い)
何が起こるか
- けいれんが長時間続く
↓ - 脳の一側半球で
- 血流異常
- 代謝破綻
- 炎症・浮腫
が生じる
↓
- 不可逆的な脳障害が発生
👉 これが、片麻痺と後のてんかんにつながります。
② 誘因として多いもの(背景因子)
発熱・感染症
- ウイルス感染(上気道炎、胃腸炎など)
- インフルエンザ、突発性発疹など
- **「発熱+長時間片側けいれん」**が典型
年齢的脆弱性
- 主に1歳前後〜幼児期早期
- この時期の脳は
けいれんによるダメージを受けやすい
③ 病態生理(なぜ片側だけ障害されるのか)
現在有力とされている仮説は以下です。
- けいれんが一側大脳半球に集中
- その側だけ
- 脳浮腫
- 血管透過性亢進
- 局所虚血
が起こる
- 結果として
片側大脳半球の萎縮が残る
👉 **「けいれんが原因で脳障害が起こる」**点がHHEの本質です。
④ 遺伝との関係
- 明確な遺伝性疾患ではありません
- 家族内発症は非常にまれ
- ただし
- もともと熱性けいれんを起こしやすい体質
- けいれん閾値の低さ
が背景にある可能性は指摘されています
⑤ 他疾患との鑑別(原因の違い)
| 疾患 | 原因の本質 |
|---|---|
| 重症熱性けいれん | 一過性、後遺症なし |
| HHE症候群 | 長時間片側けいれんによる二次脳障害 |
| 脳炎・脳症 | 炎症・感染そのもの |
| 先天性脳障害 | 出生前から存在 |
なぜ「急性期対応」が最重要か
HHE症候群の発症リスクは、
👉 「けいれんがどれだけ早く止められたか」
に大きく左右されます。
- 迅速な抗けいれん治療
- ICU管理
- 脳浮腫への対応
これにより、片麻痺や慢性てんかんを防げる可能性があります。
まとめ(重要ポイント)
- HHE症候群の本質は
長時間の片側けいれんによる二次的脳障害 - 発熱・感染が引き金になることが多い
- 明確な遺伝病ではない
- 初期対応の速さが予後を決定づける
<片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群>は遺伝する?
結論
原則として、遺伝する病気ではありません。
HHE症候群は、
乳幼児期に起こる「長時間の片側けいれん」を契機として生じる二次的な脳障害の結果
として成立する症候群であり、遺伝性疾患としては位置づけられていません。
なぜ「遺伝しない」と考えられているのか
① 病気の本質が「後天的な脳障害」
HHE症候群の本体は、
- 発熱などを背景に
- 長時間持続する片側けいれんが起こり
- その結果
- 脳浮腫
- 血流障害
- 炎症
が生じ、片側大脳半球に不可逆的障害が残る
という後天的な病態です。
👉
遺伝子異常が直接脳を障害して起こる病気ではありません。
② 家族内発症が極めてまれ
- 兄弟姉妹や親子で同じHHE症候群を発症した報告は非常に稀
- 家族性集積は、疫学的にも認められていません
ただし、注意すべき「背景因子」はあります(重要)
「遺伝」とは別の話として…
以下のような体質的要素が背景にある可能性は指摘されています。
- 熱性けいれんを起こしやすい体質
- けいれん閾値が低い体質
- 発熱時にけいれんが重症化しやすい傾向
これらには軽い遺伝的素因が関与している可能性はありますが、
👉
それは「HHE症候群そのものが遺伝する」という意味ではありません。
兄弟姉妹への影響は?
- HHE症候群として再発するリスクは極めて低い
- 兄弟姉妹に
- 熱性けいれんが起こる可能性
は一般集団と大きく変わらないと考えられています
- 熱性けいれんが起こる可能性
- 特別な出生前検査や遺伝子検査は、通常は必要ありません
他の小児てんかん症候群との違い(整理)
| 疾患 | 遺伝との関係 |
|---|---|
| 遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん | 多くは遺伝子変異(de novo) |
| 大田原症候群 | 遺伝子異常が多い |
| HHE症候群 | 遺伝性ではない |
| 重症熱性けいれん | 遺伝素因あり(後遺症なし) |
まとめ(重要ポイント)
- HHE症候群は遺伝病ではない
- 原因は
長時間の片側けいれんによる後天的脳障害 - 家族内再発は極めてまれ
- 背景に「けいれんを起こしやすい体質」があっても
HHEそのものが遺伝するわけではない - 将来の妊娠・出産に特別な制限は通常不要
<片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群>の経過は?
- 乳幼児期に起こる長時間の片側けいれんが引き金
- その後、同じ側の片麻痺が出現
- 数か月〜数年後に慢性てんかんを発症することがある
- 早期対応の質が後遺症の重さを左右します
時期別の経過
① 急性期(発症直後)
発熱を伴う片側の長時間けいれんが起こります。
- 片側(右または左)のみのけいれんが数十分〜数時間持続
- けいれん重積に近い状態になることも
- 画像(MRI)では
患側大脳半球の腫脹・浮腫を認めることがあります
👉 この時期にいかに早くけいれんを止めるかが、以後の経過に極めて重要です。
② 亜急性期(数日〜数週間)
けいれんが治まった後に片麻痺が明らかになります。
- けいれんと同じ側の手足が動きにくい
- 初期は重く見えても、時間とともに一部回復する例があります
- 一方で、麻痺が後遺するケースも少なくありません
③ 慢性期(数か月〜数年)
慢性のてんかんが出現することがあります。
- 焦点発作(部分発作)が中心
- 薬剤抵抗性になる例も
- MRIでは
患側大脳半球の萎縮が固定的に認められます
同時に、
- 片麻痺は程度に差はあるが持続することが多い
- 運動・巧緻動作に左右差が残ります
発達・機能予後
- 運動機能:
軽度〜重度まで幅があり、リハビリにより改善する例もあります - 知的発達:
比較的保たれる例もありますが、個人差が大きいです - 生活機能:
片麻痺への適応や補助具の利用で、日常生活が安定する例もあります
生命予後
- 生命予後自体は比較的良好なことが多い
- 問題となるのは
- 片麻痺の程度
- てんかんの難治性
です
経過を左右する重要因子
- 急性期におけるけいれん停止までの時間
- けいれんの持続時間・重症度
- 早期からのリハビリテーション
- 慢性期のてんかんコントロール
まとめ(重要ポイント)
- HHE症候群は
**「急性期 → 片麻痺 → 慢性てんかん」**という三段階の経過をとることが多い - 急性期対応が最も重要
- 片麻痺・てんかんの重さには大きな個人差
- 早期リハビリと長期フォローで生活の質は改善可能
<片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群>の治療法は?
治療の基本方針(重要)
- 急性期にいかに早くけいれんを止めるかが、後遺症(片麻痺・慢性てんかん)の重さを大きく左右します
- 慢性期は、てんかんのコントロール+片麻痺へのリハビリが中心
- 難治例では外科治療も選択肢になります
① 急性期治療(最重要)
目的
- 長時間の片側けいれんを迅速に停止
- 脳浮腫・二次脳障害を最小限に抑える
主な治療
- 抗けいれん薬の緊急投与
- ベンゾジアゼピン系(第一選択)
- フェニトイン/ホスフェニトイン等
- 集中治療管理(ICU)
- 呼吸・循環管理
- 必要に応じ鎮静
- 脳浮腫への対応
- 浸透圧利尿薬、ステロイド等(症例により)
👉 この段階の対応が、HHEの重症化を防ぐ最大の鍵です。
② 亜急性期〜慢性期治療
1)てんかん治療
- 抗てんかん薬の継続
- 焦点発作に有効な薬剤を選択
- 多くは内服で管理可能ですが、
薬剤抵抗性になる例もあります
2)片麻痺への治療(非常に重要)
- 早期からのリハビリテーション
- 理学療法(歩行・姿勢)
- 作業療法(手指・巧緻動作)
- 成長に合わせた装具・補助具の使用
- 継続的介入で機能改善が期待できる例もあります
③ 難治例に対する外科治療(限られたケース)
適応となる場合
- てんかんが重度の薬剤抵抗性
- 発作焦点が障害された一側大脳半球に限局
- 反対側半球が比較的保たれている
選択肢
- 半球離断術/半球切除術
- 発作の著明な減少・消失が期待される例あり
- 既存の片麻痺があるため、機能的デメリットが追加されにくい場合があります
※慎重な評価が必要で、専門施設でのみ検討されます。
④ 支持療法・長期フォロー
- 発熱時の早期対応(再発防止)
- 学習・生活支援(就学支援、福祉サービス)
- 家族への心理的サポート
- 定期的なMRI・脳波フォロー
まとめ(重要ポイント)
- 急性期の迅速なけいれん制御が最重要
- 慢性期は
抗てんかん薬+リハビリが治療の中心 - 難治てんかんでは外科治療が有効な場合もある
- 早期介入と長期フォローで生活の質は改善可能
<片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群>の日常生活の注意点
日常生活の基本方針
- 発熱・けいれんへの早期対応が最重要
- 片麻痺による転倒・事故を防ぐ環境づくり
- リハビリと学校・社会生活の両立を無理なく続ける
① けいれん・発熱への備え(最重要)
発熱時の注意
- 発熱は再発の引き金になりやすい
- 体調不良時は
- 早めの解熱
- 水分補給
- 安静
を心がける
- 主治医から**発熱時対応プラン(頓用薬・受診目安)**を必ず確認
けいれん時の基本対応
- 無理に押さえない
- **横向き(回復体位)**で呼吸を確保
- 口に物を入れない
- 開始時刻と持続時間を記録
- 5分以上続く/意識が戻らない場合は救急要請
② 片麻痺に対する日常生活の工夫
転倒・外傷予防
- 家の中の段差・滑りやすい床に注意
- 手すり・滑り止めマットの設置
- 履きやすく安定した靴を選ぶ
身体の使い方
- 麻痺側を“使わない”ままにしない
- 片手動作でも
- 補助具
- 両手を使う工夫
を取り入れる
- 成長に合わせて装具の見直しを行う
③ リハビリテーションの継続
- 目的は
回復促進+拘縮予防+左右差の悪化防止 - 理学療法・作業療法を
日常生活に組み込む形で継続 - 疲労が強い日は無理をしないことも大切
④ てんかん治療の管理
- 抗てんかん薬は自己判断で中止・変更しない
- 眠気・集中力低下など副作用の観察
- 定期的な通院・脳波フォローを継続
⑤ 学校・保育・社会生活での配慮
- 発熱時・発作時の対応手順を共有
- 体育・運動は
- 主治医の指示に基づき
- 安全第一で段階的に
- 片麻痺による
- 書字
- 作業
の困難さには合理的配慮を検討
⑥ 心理面・ご家族への配慮
- 親のせいではありません
- 急性期体験による不安・トラウマが残ることも
- 困ったときは
- 小児神経専門医
- リハビリ職
- 学校
と早めに相談
- ご家族自身の休息(レスパイト)も重要
⑦ 将来を見据えた準備
- 成長とともに
- 運動機能
- てんかんの状態
が変化する可能性
- 定期的な治療・生活プランの見直し
- 福祉制度・就学支援の早期活用
まとめ(重要ポイント)
- 発熱・けいれん対応が最優先
- 片麻痺は
使い続ける工夫+転倒予防 - リハビリと学校生活は両立できる
- 家族・学校・医療の情報共有が安全とQOLを高める
