下垂体性成長ホルモン分泌亢進症

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目次

<下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>はどんな病気?

🔹 定義

  • 脳の下垂体前葉から 成長ホルモン(GH)が過剰に分泌される病気
  • 主な原因は、下垂体腺腫(GH産生腺腫) という良性腫瘍です。
  • GHの過剰により 肝臓でIGF-1(インスリン様成長因子-1)が増加し、全身の組織・骨・臓器が過剰に成長・肥大します。

🔹 発症時期による違い

  • 小児期〜思春期に発症
    → 骨端線が閉じる前なので「巨人症」と呼ばれる。身長が異常に高くなる。
  • 成人期に発症
    → 骨端線は閉じているため身長は伸びないが、手足・顔貌・内臓が肥大する(先端巨大症)

🔹 主な症状

  • 身体的変化
    • 手足の容積増大、顔貌の変化(下顎突出、鼻や眉弓が大きくなる)
    • 舌や内臓の肥大(心臓・肝臓など)
  • 代謝異常
    • 糖尿病、脂質異常症、高血圧
  • 合併症
    • 睡眠時無呼吸症候群
    • 心肥大・心不全
    • 関節障害(関節痛、変形性関節症)
  • 下垂体腺腫による圧迫症状
    • 頭痛
    • 視野障害(特に両耳側半盲)

🔹 診断

  • 血液検査:GH高値、IGF-1高値
  • 経口ブドウ糖負荷試験:正常では抑制されるGHが抑制されない
  • 画像検査:MRIで下垂体腺腫を確認

🔹 治療

  • 経蝶形骨洞手術(下垂体腺腫摘出):第一選択
  • 薬物療法(手術不成功・再発例)
    • ソマトスタチンアナログ(オクトレオチド、ランレオチド)
    • GH受容体拮抗薬(ペグビソマント)
    • ドパミン作動薬(カベルゴリン)
  • 放射線治療:手術不能例や薬物無効例

✅ まとめ

<下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>とは、主に下垂体腺腫が原因でGHが過剰に分泌される病気です。

  • 小児では「巨人症」、成人では「先端巨大症」として現れる。
  • 手足や顔貌の肥大、糖尿病・心血管疾患など全身合併症を伴う。
  • 治療は手術が第一選択、薬物や放射線治療も行われる。

<下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>の人はどれくらい?

🔹 世界での頻度

  • 成人に発症する「先端巨大症(Acromegaly)」としての報告が多いです。
  • 有病率(患者がどのくらいいるか):人口100万人あたり約40〜130人(=およそ1万人に1人程度)。
  • 年間発症率(新しく発症する人):人口100万人あたり約3〜4人。
  • つまり、**非常にまれな病気(希少疾患)**に分類されます。

🔹 日本での患者数

  • 厚生労働省の指定難病(「下垂体性成長ホルモン分泌異常症」)に含まれています。
  • 日本での患者数は、**数千人規模(およそ3,000〜5,000人程度)**と推定されています。
  • 発症のピークは 30〜50歳代

🔹 小児期発症(巨人症)

  • 骨端線が閉じる前に発症する「巨人症」はさらにまれ。
  • 世界的にも報告例は限られており、先端巨大症のごく一部にとどまります。

✅ まとめ

  • <下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>は 人口1万人に1人前後のまれな病気
  • 日本では数千人の患者さんがいると推定。
  • 成人期に「先端巨大症」として発症するケースが大多数で、小児期の巨人症はさらに希少

<下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>の原因は?

🔹 主な原因

  1. 下垂体腺腫(GH産生腺腫)
    • 最も多い原因(全体の95%以上)。
    • 下垂体前葉にできる良性腫瘍で、成長ホルモン(GH)を過剰に分泌。
    • 腫瘍の大きさにより「微小腺腫(10mm未満)」と「大腺腫(10mm以上)」に分類。
    • 大腺腫では周囲組織(視交叉など)を圧迫し、視野障害や頭痛も伴いやすい。
  2. GH以外のホルモンも分泌する腺腫
    • GH+プロラクチンを分泌する腺腫もある。
    • プロラクチン過剰による月経異常・不妊・乳汁分泌を伴うこともある。

🔹 まれな原因

  • 下垂体以外からのGHRH(成長ホルモン放出ホルモン)分泌腫瘍
    • 例:膵神経内分泌腫瘍、肺のカルチノイド腫瘍など。
    • これらが過剰にGHRHを分泌し、二次的に下垂体からGHが多く出る。
    • 全体の1〜2%未満と非常にまれ。
  • 遺伝性症候群に伴うもの(ごく一部)
    • 多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)
    • カーニー複合(Carney complex)
    • これらでは若年発症や家族内発症がみられる。

🔹 まとめ

  • 最も多いのは 下垂体のGH産生腺腫(良性腫瘍)
  • ごくまれに GHRH産生腫瘍や遺伝性疾患が原因。
  • 腫瘍の大きさやホルモン産生パターンによって、症状や治療方針が変わる。

<下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>は遺伝する?

🔹 一般的なケース

  • ほとんどの症例は遺伝しません。
    • 主因は 下垂体前葉にできる良性腫瘍(GH産生下垂体腺腫)
    • これは基本的に「偶発的(散発的)」に発生するため、家族内で連鎖することは稀です。

🔹 遺伝と関わるまれなケース

一部に 遺伝性疾患の一部として発症するタイプ があります。

  1. 多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)
    • MEN1遺伝子変異による常染色体優性遺伝。
    • 下垂体腺腫、副甲状腺腫瘍、膵・消化管の神経内分泌腫瘍を合併。
  2. Carney complex(カーニー複合)
    • PRKAR1A遺伝子変異。
    • 皮膚色素斑、心臓粘液腫、内分泌腫瘍を伴う。
  3. FIPA(家族性孤発性下垂体腺腫)
    • AIP遺伝子変異が関与。
    • 家族内に若年で下垂体腺腫を複数認める。

🔹 まとめ

  • 大多数(95%以上)は遺伝せず、偶発的な下垂体腺腫が原因
  • しかし MEN1、Carney complex、FIPA など遺伝子異常が背景にある家族性のケースもある。
  • 若年発症や家族歴がある場合には、遺伝子検査や遺伝カウンセリングが推奨されます。

<下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>の経過は?

🔹 経過の特徴

1️⃣ 発症から診断まで

  • 症状がゆっくり進むため、発症から診断まで平均で5〜10年かかることが多いです。
  • 顔貌や手足の変化、声の低音化などが少しずつ進行するため、患者自身や周囲が気づきにくいのが特徴です。

2️⃣ 進行すると現れる変化

  • 外見的変化
    • 手足の肥大、下顎突出、額の隆起、鼻の肥大、舌の肥大など。
  • 全身への影響
    • 高血圧、糖尿病、脂質異常症の発症・悪化。
    • 睡眠時無呼吸症候群。
    • 関節の変形や慢性関節痛。
  • 腫瘍の圧迫症状
    • 腫瘍が大きくなると頭痛や視野障害(両耳側半盲)が出現。

3️⃣ 放置した場合の経過

  • 心血管系合併症(高血圧・心肥大・不整脈・心不全)が最大の死因
  • 糖尿病や脂質異常も重なり、動脈硬化が進行 → 脳卒中や心筋梗塞リスクが高まる。
  • 治療を受けない場合、平均余命は健常者より10年ほど短縮するといわれています。

4️⃣ 治療後の経過

  • 手術や薬物でGH/IGF-1を正常化できれば、寿命は一般人口とほぼ同じレベルまで改善
  • ただし、診断までの時間が長いと既に関節障害や骨変形は残ってしまうことがある。
  • 治療後も定期的にホルモン検査・MRIで再発チェックが必要。

✅ まとめ

  • 経過はゆっくり進行するため、診断が遅れやすい。
  • 放置すると 心血管疾患や代謝異常で寿命が短縮
  • 適切な治療でホルモンを正常化すれば、予後は大きく改善するが、身体的変化の一部は不可逆的。

<下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>の治療法は?

🔹 治療の基本方針

  • 目的は 成長ホルモン(GH)とIGF-1を正常化し、
    • 心血管疾患・糖尿病など合併症を予防
    • 視神経圧迫など腫瘍の局所症状を改善
    • QOLと寿命を健常者に近づける
      ことです。

1️⃣ 手術療法(第一選択)

  • 経蝶形骨洞手術(Transsphenoidal surgery)
    • 鼻からアプローチして下垂体腺腫を摘出。
    • 小さい腺腫(微小腺腫)では高い治癒率。
    • 腫瘍が大きい場合や周囲浸潤がある場合は治癒率が下がる。
  • メリット:速やかにGH/IGF-1が低下、圧迫症状(頭痛・視野障害)の改善。

2️⃣ 薬物療法(手術不能・不完全例)

  • ソマトスタチンアナログ(SSA)
    • 例:オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド。
    • 下垂体からのGH分泌を抑制。
    • 腫瘍縮小効果も期待できる。
  • GH受容体拮抗薬
    • ペグビソマント(pegvisomant)。
    • GHの作用を遮断し、IGF-1を正常化。
    • 腫瘍縮小効果はないが、ホルモンコントロールが強力。
  • ドパミン作動薬
    • カベルゴリン。
    • 主にプロラクチンも分泌する腫瘍に有効。

3️⃣ 放射線治療

  • 手術や薬物で十分な効果が得られない場合に追加。
  • 定位放射線治療(ガンマナイフなど) が選択されることが多い。
  • 効果が出るまで数年かかるため、薬物療法と併用されることが多い。

4️⃣ 合併症の治療

  • 糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群などは並行して管理。
  • 心血管疾患予防のため生活習慣改善も重要。

✅ まとめ

  • 第一選択は経蝶形骨洞手術
  • 不完全例や再発例には ソマトスタチンアナログやGH受容体拮抗薬を使用。
  • 必要に応じて 放射線治療を追加
  • 合併症も並行管理することで寿命や生活の質が大きく改善する。

<下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>の日常生活の注意点

1️⃣ 定期的な医療フォロー

  • 血液検査(GH・IGF-1)とMRI を定期的に受ける。
  • 再発・再増殖の可能性があるため、長期の通院継続が必要。
  • 治療薬を使用している場合は、副作用(肝機能・血糖値・胆石など)のチェックも大切。

2️⃣ 食生活

  • 糖尿病や脂質異常が合併しやすいため、
    • 高カロリー・高脂肪食を控える
    • 野菜・魚・食物繊維を中心としたバランスのよい食事
    • アルコールは控えめに
  • ソマトスタチンアナログ使用中は 胆石リスクが高まるので、脂っこい食事を避けることも有効。

3️⃣ 運動・体重管理

  • 適度な有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、ストレッチなど)で心血管リスクを低減。
  • 関節障害や睡眠時無呼吸がある場合は、無理のない運動を選ぶ。
  • 体重管理で糖尿病・高血圧の悪化を予防。

4️⃣ 睡眠と生活リズム

  • 睡眠時無呼吸症候群が多いため、
    • 寝る姿勢や体重管理に注意。
    • 必要に応じてCPAPなど治療機器を使用。
  • 睡眠不足や過労はホルモンバランスを乱しやすいので、規則正しい生活を。

5️⃣ 心血管・代謝リスク管理

  • 高血圧・糖尿病・脂質異常が放置されると心筋梗塞・脳卒中リスクが増加。
  • 定期的に血圧・血糖・コレステロールをチェックし、必要に応じて内科治療。

6️⃣ 精神面・社会生活

  • 外見の変化や慢性疾患の影響で、精神的ストレスや社会的孤立を感じやすい。
  • 必要ならカウンセリングや患者会を活用。
  • 周囲に病気の理解を得ることも生活の安定に役立つ。

✅ まとめ

  • 定期通院・検査を継続して再発や合併症を早期発見。
  • 食事・運動・睡眠を工夫し、糖尿病・心血管疾患のリスクを下げる。
  • 無理せず続けられる生活習慣の改善が大切。
  • 精神面・社会面のサポートも取り入れることで、長期的に安定した生活が可能。

<下垂体性成長ホルモン分泌亢進症>の最新情報

新たな薬物的選択肢の開発進展(2025)

メトホルミンを追加したところ、IGF-1 の低下が認められ、治療コスト低減の可能性

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