成人スチル病(AOSD)

指定難病
細胞 細胞間基質 肺胞 自己免疫性疾患 自己免疫性 核 ゴルジ体 水泡 水 細胞間隙

目次

<成人スチル病>はどんな病気?

成人スチル病(せいじんスチルびょう、Adult-onset Still’s disease:AOSD)は、原因不明の全身性炎症性疾患のひとつです。小児にみられる「全身型若年性特発性関節炎(Still病)」の成人発症型にあたります。

主な特徴

  • 発熱
    39℃以上の高熱が、毎日決まった時間帯に出たり、波のように上がったり下がったりします。
  • 皮疹
    サーモンピンク色の発疹が熱と一緒に出ることが多いです。かゆみはあまり強くありません。
  • 関節炎・関節痛
    複数の関節に炎症が出て、腫れや痛みを伴います。慢性化すると関節破壊につながることもあります。
  • 全身症状
    のどの痛み、リンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫大、筋肉痛など。

原因

  • はっきりとした原因は不明。
  • 免疫系の異常が関与していると考えられており、感染症や遺伝的素因、サイトカイン(IL-1, IL-18, TNFなど)の過剰産生が関係しているとされます。

診断

  • 成人スチル病に特異的な検査はありません。
  • 他の膠原病、感染症、悪性腫瘍などを除外し、特徴的な症状・経過や血液検査の所見(白血球増加、フェリチン高値、肝機能異常など)から総合的に診断します。

治療

  • **ステロイド(プレドニゾロン)**が第一選択。
  • ステロイドで効果が不十分な場合は、免疫抑制剤(メトトレキサートなど)や**生物学的製剤(IL-1阻害薬、IL-6阻害薬など)**が使われます。
  • 急性期を乗り切った後、再発を繰り返す人と、一度の発症で落ち着く人がいます。

予後

  • 経過は大きく3タイプに分けられます
    1. 一過性で再発しないタイプ
    2. 再燃を繰り返すタイプ
    3. 慢性化して関節炎が持続するタイプ

まとめると:

成人スチル病は「高熱・発疹・関節炎」を三大症状とする原因不明の自己炎症性疾患です。治療薬は進歩していて、適切な管理をすればコントロールできることが多いです。

<成人スチル病>の人はどれくらい?

成人スチル病(AOSD)はかなりまれな病気です。

発症頻度

  • 世界的に:年間 人口10万人あたり0.2〜0.4人 程度と報告されています。
  • 日本でもほぼ同程度で、全国での患者数は数千人規模と推定されます。
  • 小児期のスチル病(全身型若年性特発性関節炎)よりさらに少ないです。

好発年齢・性別

  • 発症年齢は 16歳以降。
  • 20〜30代と50〜60代にややピークがある「二峰性」の分布を示すことがあります。
  • 男女比はほぼ同じか、やや女性に多い傾向。

まとめ

成人スチル病は 非常にまれ(希少疾患) で、日本全体でも患者さんは数千人規模。
ただし重症化するケースや再発を繰り返す人もいるため、リウマチ専門医による継続的な管理が大切とされています。

<成人スチル病>の原因は?

成人スチル病(Adult-onset Still’s disease:AOSD)の原因はまだはっきり解明されていません。ただし、近年の研究で以下の要因が関わっていると考えられています。

 考えられている原因・発症メカニズム

1. 免疫システムの異常(自己炎症性疾患)

  • 成人スチル病は**自己免疫疾患(抗体による攻撃)**というより、**自己炎症性疾患(炎症を起こす細胞やサイトカインの暴走)**に分類されます。
  • 特に以下のサイトカインが過剰に働いていることが分かっています:
    • IL-1β(炎症のカギとなる物質)
    • IL-6(発熱・炎症・関節破壊に関与)
    • IL-18(高フェリチン血症との関連が深い)
  • これらの炎症性サイトカインが暴走することで、発熱・発疹・関節炎などの症状が出ると考えられています。

2. 遺伝的要因

  • HLA(免疫反応を決める遺伝子)の特定の型との関連が報告されています。
  • ただし、明確に「遺伝する病気」ではなく、家族内発症はまれです。

3. 感染症の関与

  • 発症のきっかけとして、ウイルスや細菌感染が関わっている可能性が指摘されています。
  • 例:風邪のような感染の後に発症する人がいる。
  • ただし「感染が原因」というよりは、「感染を契機に免疫が暴走する」というイメージです。

まとめ

成人スチル病の原因は 「免疫システムの過剰な炎症反応」。
遺伝的素因を持つ人が、感染などをきっかけに発症するのではないかと考えられています。

<成人スチル病>は遺伝する?

成人スチル病(AOSD)は、基本的に遺伝性の病気ではありません。

 遺伝との関係

  • 成人スチル病の多くは散発的に発症します(家族に同じ病気の人がいない)。
  • ただし、免疫の反応性に関わる**HLA遺伝子(ヒト白血球抗原)**の型が関係していることが報告されています。
    • 例:HLA-B17, B40, Bw35, DR2 などとの関連が指摘されています。
  • つまり、「発症しやすい体質」は遺伝するかもしれませんが、必ず病気になるわけではないということです。

 家族への影響

  • 家族内での発症報告は非常にまれ。
  • 一般的には「親が成人スチル病だから子もなる」ということはありません。
  • 遺伝病(たとえば筋ジストロフィーや家族性地中海熱など)のように世代を超えて受け継がれる病気ではないと考えられています。

まとめ

成人スチル病は 遺伝する病気ではなく、体質と環境要因(感染など)が重なって起きる自己炎症性疾患 です。

<成人スチル病>と「遺伝病」の違い

 成人スチル病と遺伝病の違い

項目成人スチル病(AOSD)遺伝病
原因免疫システムの炎症反応の暴走(サイトカイン過剰)遺伝子そのものの異常
遺伝性基本的に遺伝しない(家族内発症はまれ)親から子へ遺伝する
発症の仕方体質(HLA型など)+ 環境要因(感染など)で偶発的に発症遺伝子変異の有無でほぼ決まる(環境の影響は小さいことが多い)
発症年齢多くは20〜30代、または50〜60代で発症病気により異なるが、先天的に生じることが多い
再現性家族に必ずしも出るわけではない同じ遺伝子を持つ家族に高確率で現れる
成人スチル病、ベーチェット病など(自己炎症性疾患)筋ジストロフィー、血友病、家族性地中海熱、遺伝性乳がん など

まとめ

  • 成人スチル病は「遺伝病」ではなく、「自己炎症性疾患」
  • 「遺伝病」は生まれつきの遺伝子異常が原因だが、
  • 「成人スチル病」は免疫の過剰反応が原因で、遺伝要因はあっても必須ではなく、家族に必ず出るわけでもない。

 わかりやすく言うと、

  • 遺伝病=「設計図(遺伝子)のミス」
  • 成人スチル病=「設計図は問題ないけど、免疫システムのブレーキが外れて暴走した状態」

<成人スチル病>の経過は?

成人スチル病(AOSD)は、人によって経過の仕方が大きく異なります。大きく分けると次の 3つの経過タイプ に分類されます。

 成人スチル病の経過タイプ

① 単周期型(一過性型)

  • 1回だけ発症し、治療で症状が落ち着いた後は再発しないタイプ。
  • 全体の 約3割 程度。
  • 比較的予後は良い。

② 多周期型(再発寛解型)

  • 発症と寛解を繰り返すタイプ。
  • 再燃は数か月~数年後に起こることがある。
  • 発熱・発疹が主で、関節破壊は少ないことが多い。
  • 全体の 約3〜5割 がこのタイプ。

③ 慢性関節炎型

  • 発熱や発疹は落ち着いても、関節炎が持続して慢性化するタイプ。
  • リウマチ性関節炎に似て、関節破壊・変形を起こすこともある。
  • 全体の 約2割前後。

 長期予後と注意点

  • 生命予後は適切に治療されれば比較的良好。
  • ただし、一部の人では以下のような合併症に注意が必要:
    • マクロファージ活性化症候群(MAS):全身の炎症が暴走する危険な合併症。
    • 心膜炎・胸膜炎など臓器の炎症。
    • 慢性関節炎による関節破壊。
  • 再燃のサインとして「再び高熱が出る」「発疹が出る」「関節痛が強くなる」などがあり、早期対応が重要。

まとめ

成人スチル病の経過は

  1. 一度きりで治る人
  2. 再燃を繰り返す人
  3. 慢性関節炎として続く人
    の3タイプに分かれる。
    多くはコントロール可能ですが、再発や合併症のチェックが欠かせません。

<成人スチル病>の治療法は?

成人スチル病(AOSD)の治療は、症状の強さや経過タイプによって段階的に選ばれます。

 成人スチル病の治療法

1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

  • 発熱や関節痛に対して使われる。
  • 軽症の場合に用いられることがあるが、単独で十分に効く人は少ない。

2. ステロイド(副腎皮質ステロイド)

  • 第一選択薬。プレドニゾロンなどを使用。
  • 高熱や全身炎症を速やかに抑える効果がある。
  • 初期は中〜高用量を使い、改善すれば徐々に減量していく。

3. 免疫抑制薬

  • ステロイドだけでは抑えきれない場合や、長期的にステロイドを減らしたい時に使用。
  • 主に使われる薬:
    • メトトレキサート(MTX)
    • シクロスポリン
    • タクロリムス など

4. 生物学的製剤(バイオ製剤)

近年の治療の中心になりつつある。炎症を引き起こす**サイトカイン(IL-1、IL-6など)**をピンポイントで抑える。

  • IL-1阻害薬:アナキンラ、カナキヌマブ
  • IL-6阻害薬:トシリズマブ(アクテムラ)
  • TNF阻害薬:効果はIL-1/IL-6に比べるとやや限定的

特にIL-1阻害薬・IL-6阻害薬は有効率が高いと報告されています。

5. 合併症への対応

  • **マクロファージ活性化症候群(MAS)**など重症合併症では、
    • 大量ステロイド投与(パルス療法)
    • シクロスポリン
    • 生物学的製剤
      などを組み合わせて治療。

治療の基本方針

  1. まずステロイドで炎症を抑える
  2. 長期管理や再燃予防に免疫抑制薬や生物学的製剤を併用
  3. 合併症がある場合は早急に強力な治療を行う

 まとめ

成人スチル病の治療は

  • 軽症:NSAIDs
  • 中等症以上:ステロイド
  • 難治例:免疫抑制薬や生物学的製剤(特にIL-1, IL-6阻害薬)

と進むのが一般的です。

<成人スチル病>の日常生活の注意点

成人スチル病(AOSD)は「炎症の暴走」をコントロールしながら長期的に付き合っていく病気なので、日常生活では 再燃を防ぐ工夫・薬の副作用対策・合併症の早期発見 が大切です。

 成人スチル病の日常生活での注意点

1. 感染症に注意する

  • ステロイドや免疫抑制薬・生物学的製剤を使うと感染しやすくなる。
  • 風邪やインフルエンザ、新型コロナなどに要注意。
  • 手洗い・うがい・人混みでのマスク着用が基本。
  • ワクチン(インフルエンザ・肺炎球菌など)は主治医と相談して接種。

2. 規則正しい生活・睡眠

  • 睡眠不足や強いストレスは炎症を悪化させやすい。
  • 7時間前後の睡眠と生活リズムを意識する。

3. 食事・栄養管理

  • 特別な制限食はないが、バランスの良い食事を。
  • ステロイド使用中は
    • 骨粗鬆症予防にカルシウム・ビタミンD
    • 塩分控えめ(高血圧・むくみ防止)
    • 血糖値に注意(糖尿病リスク上昇)

4. 運動・関節保護

  • 急性期は安静が大切だが、症状が落ち着いたら無理のない範囲で運動(ウォーキング、ストレッチなど)。
  • 慢性関節炎型では関節の負担を減らす工夫(重い荷物を避ける、サポーターの利用など)が有効。

5. 定期的な通院・検査

  • フェリチン、CRP、白血球数、肝機能などを定期チェック。
  • 症状がなくても「再燃の兆候」が血液検査で先に出ることがある。

6. 再燃のサインを見逃さない

  • 繰り返す高熱
  • サーモンピンクの発疹
  • 強い関節痛・腫れ
    → 出たら早めに受診

まとめ

  • 感染予防を徹底
  • 睡眠・食事・運動で体調管理
  • 薬の副作用対策(骨粗鬆症・糖尿病・高血圧など)
  • 定期通院と再燃サインの観察

<成人スチル病>の最新情報

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