肥大型心筋症(HCM)

無脾症 先天性 心疾患 動脈管開存 肺動脈狭窄単心室症候群 無脾症候群 心房中隔欠損症 食道裂孔ヘルニア 共通房室弁 指定難病 拘束型心筋症 指定難病
無脾症 先天性 心疾患 動脈管開存 肺動脈狭窄単心室症候群 拡張型心筋症 無脾症候群 心房中隔欠損症 食道裂孔ヘルニア 共通房室弁 指定難病

目次

<肥大型心筋症>はどんな病気?

肥大型心筋症(Hypertrophic cardiomyopathy, HCM) は、
心臓の筋肉(特に左心室の心室中隔)が**異常に厚くなる(肥大する)**病気です。

  • 心筋が硬くなり、心臓に血液が入りにくくなる(拡張障害)。
  • 血液を全身に送り出す際に出口が狭くなり(流出路狭窄)、血流が妨げられる場合がある。
  • 心筋の電気的異常から、不整脈や突然死のリスクがある。

主な症状

  • 動悸、息切れ
  • 胸の痛み(狭心症に似る)
  • 失神(特に運動中)
  • むくみ、疲れやすさ
  • 無症状のまま経過する人も多い

原因

  • 多くは遺伝性(心筋の収縮に関わるタンパク質の遺伝子変異)。
  • 家族性にみられることが多く、常染色体優性遺伝の形をとる。
  • 突発的に遺伝子変異が起きて発症することもある。

特徴

  • 日本では 1,000人に1人程度 と比較的よく見られる。
  • 若年から発症することもあれば、高齢まで無症状の場合もある。
  • 突然死(特に若年アスリート)との関連で知られている。

👉 まとめると
肥大型心筋症は、心臓の筋肉が異常に厚くなる遺伝性の病気で、息切れや胸痛、不整脈を引き起こすことがあり、突然死のリスクもある疾患です。

<肥大型心筋症>の人はどれくらい?

肥大型心筋症(HCM)の有病率

  • 世界的にみると、およそ500人に1人(0.2%) が発症すると考えられています。
    • つまり、人口100万人あたり約2,000人 程度。
  • 日本でもほぼ同じくらいで、約0.2% と推定されています。

診断されている人の数

  • 実際に診断を受けている患者さんはもっと少ないです。
    • 症状が出ない人も多く、見逃されているケースが多いため。
    • 日本の心筋症登録(J-CM、2020年報告)では、肥大型心筋症は最も多い心筋症とされています。

年齢と性別

  • 幅広い年代で発症しますが、思春期~40代で見つかることが多いです。
  • 男女差は大きくなく、男女ともに発症します。
  • ただし男性のほうが診断されやすい傾向があります。

家族内発症

  • 常染色体優性遺伝のため、患者さんの子どもは50%の確率で遺伝子変異を受け継ぎます。
  • 家族内に複数の発症者が出ることも少なくありません。

👉 まとめると
肥大型心筋症は人口のおよそ0.2%(500人に1人)にみられる比較的多い心筋症ですが、無症状の人も多く、実際に診断されているのは一部にすぎません。

<肥大型心筋症>の原因は?

肥大型心筋症の原因

1. 遺伝的要因(最も多い原因)

  • 心筋収縮に関わるタンパク質をコードする遺伝子の変異が主な原因です。
  • 特に多い遺伝子変異
    • β-ミオシン重鎖(MYH7)
    • 心筋トロポニンT(TNNT2)
    • ミオシン結合タンパク質C(MYBPC3)
  • これらの変異によって、心筋の収縮異常や肥厚が起こります。
  • 常染色体優性遺伝:親から子へ50%の確率で遺伝します。

2. 非遺伝的要因(まれ)

  • 一部の症例では遺伝子変異が見つからず、別の要因が考えられます。
    • 代謝異常や蓄積病(ファブリー病、ポンペ病 など)
    • 高齢発症型:遺伝子の変異が不明でも後天的に心筋が肥厚する場合
    • 高血圧や大動脈弁狭窄症による肥大と鑑別が必要

3. 二次性の心筋肥大との違い

  • 高血圧やスポーツ心(運動で心臓が大きくなる)でも心筋は厚くなりますが、
    • 肥大型心筋症は 対称的でなく、不均一な心筋の肥厚 が特徴です。
    • 心筋の線維化や不整脈を起こしやすい点も異なります。

まとめ

  • 主因は 遺伝子変異(サルコメア遺伝子変異)
  • まれに 代謝性疾患や後天的要因でも起こる。
  • 多くは家族性で、常染色体優性遺伝を示します。

<肥大型心筋症>は遺伝する?

はい、<肥大型心筋症(Hypertrophic cardiomyopathy:HCM)>は遺伝することがあります。

遺伝の特徴

  • 常染色体優性遺伝
    多くは親から子へ 50%の確率で遺伝します。
    ただし、同じ遺伝子変異を持っていても「発症する人」「軽症で済む人」「重症化する人」が異なるため、不完全浸透表現型の多様性が特徴です。
  • 関連遺伝子
    心筋の収縮に関わるタンパク質の遺伝子変異が原因となることが多く、代表的なものは
    • β-ミオシン重鎖遺伝子(MYH7)
    • ミオシン結合タンパクC遺伝子(MYBPC3)
    • トロポニンT(TNNT2)
    • トロポニンI(TNNI3)
      などです。

遺伝の臨床的意味

  • 家族にHCM患者がいる場合は、家族歴の有無を確認することが重要です。
  • 家族スクリーニング(心エコー検査・心電図、場合によっては遺伝子検査)が推奨されます。
  • 遺伝子を持っていても、発症は思春期以降や中高年になってからの場合もあります。

まとめ

  • 肥大型心筋症は 遺伝性心筋症の代表で、特に常染色体優性遺伝が多い。
  • 遺伝子を持っていても必ず発症するわけではない。
  • 家族に患者さんがいる場合は、定期的な心臓検査遺伝カウンセリングが推奨される。

<肥大型心筋症>の経過は?

<肥大型心筋症(HCM)>の経過は人によってかなり幅があります。無症状で一生を過ごす方もいれば、心不全や不整脈を起こして重症化する方もいます。


🫀 肥大型心筋症の経過(典型的な流れ)

1. 無症候期

  • 発症初期は無症状のことが多い。
  • 偶然の健康診断や心雑音から発見されることもある。
  • 特に若年~青年期に診断されるケースが多い。

2. 労作時症状の出現

  • 心筋が肥厚し、心室内の血流が妨げられると以下が出やすくなる:
    • 息切れ(労作時呼吸困難)
    • 動悸(不整脈)
    • 胸痛(狭心症様症状)
    • 失神・めまい(特に運動時)

3. 不整脈・突然死のリスク

  • 心房細動(AF)が起きやすく、脳梗塞の原因となる。
  • 心室頻拍・心室細動を起こすと突然死のリスクがある。
    • 特に 若年者や運動中に発生しやすい。

4. 心不全への進展

  • 肥厚が進む → 拡張障害(心臓がうまく広がらない)による 拡張不全型心不全 が起きる。
  • 一部は 拡張型心筋症様に移行(心筋の肥厚が薄れ、逆に心臓が拡張しポンプ機能が落ちる)するケースもある。

5. 高齢期

  • 症状が軽度で安定したまま高齢まで経過する人も多い。
  • 一方で、心房細動や心不全の増悪が問題になることがある。

📊 経過の多様性

  • 軽症例:無症状のまま寿命を全うすることもある。
  • 中等症例:生活に支障をきたすが、薬物療法やカテーテル治療でコントロール可能。
  • 重症例:心不全や致死的不整脈で突然死に至ることもある。

🔑 経過観察のポイント

  • 定期的な 心エコー・心電図 によるフォロー。
  • 家族歴(突然死や心筋症)がある場合は特に注意。
  • 症状が軽くても、スポーツ活動制限ICD(植込み型除細動器)適応の検討が行われることもある。

👉 まとめると:
肥大型心筋症は 経過が非常に多様で、

  • 「無症状で長生きする人」から
  • 「若くして突然死する人」まで幅があります。

そのため、定期的な検査でリスクを見極めながら生活することが重要です。

<肥大型心筋症>の治療法は?

肥大型心筋症の治療法

HCMは心筋が厚くなり、血液の流れが妨げられたり、心臓のリズムが乱れることで症状が出る病気です。治療は「症状の改善」と「突然死などのリスクを減らすこと」が目的になります。

1. 薬による治療(内科的治療)

  • β遮断薬(例:メトプロロール)
    → 心拍数を抑え、心臓の負担を減らす。動悸や息切れを改善。
  • カルシウム拮抗薬(例:ベラパミル)
    → 心筋の収縮を和らげ、心臓の血流を改善。
  • 抗不整脈薬(アミオダロンなど)
    → 危険な不整脈を防ぐ。

2. 手術やカテーテル治療(外科的治療)

  • 中隔心筋切除術(Morrow手術)
    → 厚くなった心筋の一部を切り取り、血液の流れを良くする方法。
  • 心筋焼灼術(経皮的中隔心筋アルコールアブレーション)
    → カテーテルで心筋の一部を壊して流れを改善する方法。

3. 機械による治療

  • 植込み型除細動器(ICD)
    → 突然死のリスクが高い場合に体内に入れ、不整脈が起きたら電気ショックで心臓を守る。
  • ペースメーカー
    → 特殊なタイプの心筋症や重症例で使うことがある。

4. 生活習慣の工夫

  • 激しい運動(特に短距離走や筋トレなどの無酸素運動)は避ける
  • 水分と塩分を適度に保つ
  • 過度な飲酒を控える
  • 規則正しい生活を心がける

5. 新しい治療(近年の進歩)

  • 分子標的治療薬(マバカムテン:mavacamten)
    → 心筋の異常な収縮を抑え、症状や運動能力を改善する新しい薬。2021年に米国で承認され、日本でも治験・導入が進んでいます。

✅ まとめ
肥大型心筋症の治療は「薬で症状を和らげること」が基本ですが、必要に応じて「手術」「カテーテル治療」「ICD」などを組み合わせます。近年は新しい分子標的薬の登場で、治療の幅が広がっています。

肥大型心筋症 生活チェックリスト

🛏️ 日常生活

□規則正しい生活を心がけていますか?

□十分な睡眠(7〜8時間)をとれていますか?

□強いストレスを避けていますか?

🍽 食生活

□塩分を控えめにしていますか?(1日6g未満が目安)

□アルコールを控えめにしていますか?

□カフェイン飲料を摂りすぎていませんか?

🏃 運動・活動

□激しい運動(全力疾走・重い筋トレ)を避けていますか?

□適度な有酸素運動(散歩・軽い自転車など)を取り入れていますか?

□熱中症や脱水を避ける工夫をしていますか?

💊 薬の管理

□医師から処方された薬を忘れずに服用していますか?

□サプリや市販薬を勝手に飲んでいませんか?

□薬を飲み忘れたときは自己判断せず主治医に相談していますか?

❤️ 症状チェック

□息切れ・動悸・胸の痛みを感じたときにすぐに休めていますか?

□めまいや失神があった場合、医師に相談していますか?

□足のむくみや体重増加を記録していますか?

🏥 定期受診

□定期的に心エコーや心電図の検査を受けていますか?

□遺伝カウンセリングや家族の検査について確認していますか?

□ワクチン(インフルエンザ・肺炎球菌など)を接種していますか?


👉 ポイントは 「無理をしない」「症状を見逃さない」「定期的に医師と相談」 です。

<肥大型心筋症>の日常生活の注意点

肥大型心筋症では心臓に負担をかけすぎない生活が大切です。まず、激しい運動や突然の強い動作は避けましょう。特に全力疾走や重量挙げのような負荷の高い運動は、心臓のリズム異常や症状の悪化につながることがあります。その一方で、医師と相談のうえで無理のない範囲での軽い運動(散歩やストレッチ)は体力維持に役立ちます。

また、脱水や過度の飲酒は不整脈や血圧の急な変動を招きやすいため、水分を適切にとり、アルコールは控えることが勧められます。睡眠不足や強いストレスも心臓に負担となるため、規則正しい生活と十分な休養を心がけましょう。

薬を処方されている場合は自己判断で中断せず、定期的な受診を続けることが非常に大切です。胸の痛み、息切れ、動悸、めまい、失神などの症状が出たときは、すぐに医師へ相談する必要があります。

さらに、この病気は遺伝することがあるため、家族にも心臓のチェックを勧められる場合があります。家族歴を含めて、医師とよく情報を共有すると安心です。


👉まとめると、「無理な運動を避け、規則正しい生活を送り、脱水や飲酒を控えつつ、薬と通院を守ること。そして体調変化を見逃さず早めに医師に相談すること」が日常生活での重要な注意点です。

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