目次
<家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>はどんな病気?
- 🔹 定義
- 🔹 原因
- 🔹 主な症状・所見
- 🔹 頻度
- 🔹 予後
- ✅ まとめ
- 🔹 世界での頻度
- 🔹 日本での頻度
- 🔹 特徴的な点
- ✅ まとめ
- 🔹 基本的な原因
- 🔹 関連する遺伝子と異常の内容
- 🔹 ホモ接合体で起こること
- ✅ まとめ
- 🔹 遺伝形式
- 🔹 ホモ接合体の特徴
- 🔹 家族内での特徴
- ✅ まとめ
- 🔹 経過の特徴
- 🔹 臨床症状の進行
- 🔹 治療が進歩した現在の経過
- ✅ まとめ
- 🔹 基本方針
- 🔹 1. 生活習慣の改善(補助的)
- 🔹 2. 薬物療法
- 🔹 3. LDL吸着療法(アフェレーシス)
- 🔹 4. 外科的治療
- 🔹 5. 新しい治療の展望
- ✅ まとめ
- 🔹 1. 食生活
- 🔹 2. 運動
- 🔹 3. 薬物・治療の遵守
- 🔹 4. 感染症・体調管理
- 🔹 5. 心血管リスク管理
- 🔹 6. 小児・思春期の注意点
- 🔹 7. 心理的・社会的サポート
- ✅ まとめ
🔹 定義
- 家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia, FH) は、コレステロールを処理する働きに異常がある遺伝性の病気です。
- ホモ接合体(HoFH) は、父母それぞれから病的遺伝子を受け継いだ場合で、非常に重症型。
- 血中の LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が極端に高くなり(しばしば 500 mg/dL 以上)、動脈硬化が幼少期から進行します。
🔹 原因
- 主に LDL受容体(LDLR)遺伝子の変異。
- ほかに ApoB遺伝子や PCSK9遺伝子の異常でも起こり得る。
- ホモ接合体の場合、両親ともにヘテロ接合体FHであることが多い。
🔹 主な症状・所見
- 生下時から極めて高いLDL-C値。
- 幼少期から出現する黄色腫(皮膚や腱にコレステロールが沈着)。
- 早期に冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞を発症。
- 大動脈弁狭窄や脳血管疾患も若年で起こりやすい。
🔹 頻度
- 極めてまれな病気。
- 日本での推定頻度は 出生約16〜20万人に1人。
- ヘテロ接合体FH(500人に1人程度)と比べて、はるかに少ない。
🔹 予後
- 未治療では10代〜20代で心血管イベントを起こすことが多い。
- 適切な治療(薬物療法・LDL吸着療法・移植など)により延命が可能になっている。
✅ まとめ
<家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>は、極めて重症の遺伝性脂質異常症で、幼少期から著明な高LDLコレステロール血症を呈し、若年で動脈硬化性心血管疾患を発症する危険が非常に高い病気です。
<家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>の人はどれくらい?
🔹 世界での頻度
- 家族性高コレステロール血症(FH)の大部分は「ヘテロ接合体」で、頻度は 約200〜500人に1人。
- ホモ接合体(HoFH) はさらにまれで、出生10万〜30万人に1人程度 とされています。
- 世界全体では数万人規模と推定。
🔹 日本での頻度
- 日本では 出生16〜20万人に1人 と推定されています。
- 現在の患者数は 数百人〜千人程度 と考えられています。
- 多くは小児期に診断され、早期から治療を受けている例が多い。
🔹 特徴的な点
- ヘテロ接合体(軽症型)に比べると極めて少数。
- 両親がともにFH(ヘテロ接合体)である家庭から生まれるため、家族歴が重要。
- 早期から高LDLコレステロール値を示し、動脈硬化が進行するため、早期診断・治療が必須。
✅ まとめ
- <家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>は 超希少疾患。
- 頻度は 世界で出生10〜30万人に1人、日本では16〜20万人に1人。
- 日本全体での患者数は 数百〜千人規模 と推定される。
<家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>の原因は?
🔹 基本的な原因
- FHは 遺伝性の脂質代謝異常 で、主に LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の処理がうまくいかないことが原因です。
- ホモ接合体は、両親それぞれから異常遺伝子を受け継ぐため、極めて重症になります。
🔹 関連する遺伝子と異常の内容
- LDL受容体(LDLR)遺伝子の変異(約85〜90%)
- 肝臓などの細胞がLDLコレステロールを取り込めなくなる。
- LDLが血液中に異常に蓄積する。
- アポリポタンパク質B(ApoB)遺伝子変異
- LDLが受容体に結合できなくなる。
- PCSK9遺伝子変異
- LDL受容体が分解されやすくなり、細胞表面に残らない。
- LDLRAP1遺伝子変異(ARH, autosomal recessive hypercholesterolemia)
- まれなタイプ。LDL受容体は正常でも、細胞内への取り込み(エンドサイトーシス)が障害される。
🔹 ホモ接合体で起こること
- 両親がそれぞれヘテロ接合体FH(保因者)の場合、子供に 25%の確率でHoFH が発生。
- LDL受容体の働きがほとんどない、あるいは極端に弱いため、
- LDL-C値が生まれつき 400〜1000 mg/dL に達する
- 幼少期から動脈硬化が急速に進む
✅ まとめ
- <家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>は、LDLR、ApoB、PCSK9、LDLRAP1 などの遺伝子変異が原因。
- 特に LDLR遺伝子異常が大多数を占める。
- 両親がFH(ヘテロ接合体)の場合に子にホモ接合体が生じ、極めて重症型となる。
<家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>は遺伝する?
🔹 遺伝形式
- 常染色体優性遺伝の形をとる病気です。
- 多くは LDLR、ApoB、PCSK9 遺伝子の異常によって発症。
- 両親がともに ヘテロ接合体(FHの保因者) の場合、子どもに以下の確率で遺伝します:
- 25% → ホモ接合体(HoFH)
- 50% → ヘテロ接合体(軽症FH)
- 25% → 正常
🔹 ホモ接合体の特徴
- 両親から「異常遺伝子」を二重に受け継ぐため、症状は重症化。
- LDL受容体の働きがほとんどない、あるいは極めて弱いため、幼少期からLDLコレステロールが非常に高値(400〜1000 mg/dL) となる。
- 幼児期〜10代で動脈硬化が進行し、心筋梗塞や大動脈弁狭窄などの心血管合併症を発症するリスクが極めて高い。
🔹 家族内での特徴
- FHは「家族性」という名前の通り、家族歴が診断の手がかりになることが多い。
- 両親がともにFH(ヘテロ接合体)の場合にHoFHの子どもが生じるため、兄弟姉妹にもFHやHoFHが存在する可能性がある。
- 遺伝子検査や家族スクリーニングが推奨されている。
✅ まとめ
- <家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>は 常染色体優性遺伝で遺伝する。
- 両親がともにヘテロ接合体FHだと、子どもがHoFHになる確率は 25%。
- 家族内に高コレステロール血症や若年の心筋梗塞の既往がある場合は、家族全体で検査・管理が重要。
<家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>の経過は?
🔹 経過の特徴
- 出生直後からLDLコレステロールが極めて高値(400〜1000 mg/dL)。
- 動脈硬化が幼少期から急速に進行する。
- 適切な治療がなければ 10歳代で心血管イベント(狭心症・心筋梗塞) を発症することもある。
🔹 臨床症状の進行
- 小児期(幼少期)
- 掌や肘、膝、アキレス腱などに**黄色腫(コレステロール沈着)**が出現。
- 皮膚や眼瞼にもコレステロール沈着がみられることがある。
- 思春期までに
- 冠動脈に強い動脈硬化が進行。
- 狭心症や不整脈を発症する例も多い。
- 若年成人(10〜20代)
- 心筋梗塞や大動脈弁狭窄などの心血管合併症が高率に出現。
- 適切な治療がないと生命予後は非常に厳しい。
🔹 治療が進歩した現在の経過
- 以前は 20歳代までに死亡するケースが多かった。
- しかし、現在は:
- LDL吸着療法(アフェレーシス)
- スタチン・エゼチミブ・PCSK9阻害薬・アンジェクティブ薬(エブロクマブなど)
- 肝移植 などの治療により、寿命が大幅に延びるようになっている。
- それでも心血管イベントのリスクは依然として高いため、早期診断・早期治療が重要。
✅ まとめ
- <家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>は、生まれた時からLDLコレステロールが異常高値で、動脈硬化が幼少期から進む。
- 治療しなければ10代〜20代で心筋梗塞などの重篤な合併症が出現。
- 現代医療ではLDL吸着療法や新規薬剤により寿命は改善しているが、厳格な管理と一生涯の治療が必要。
<家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>の治療法は?
🔹 基本方針
- HoFHは極めて重症な遺伝性脂質異常症であり、生涯にわたる厳格なLDL-C管理が必須。
- 単なる食事療法や運動療法だけでは不十分。
- 薬物療法+LDL吸着療法(アフェレーシス)+必要に応じて移植までを組み合わせる。
🔹 1. 生活習慣の改善(補助的)
- 飽和脂肪酸やコレステロール摂取を制限。
- 運動は心血管リスクに応じて適度に。
⚠ ただし 生活習慣改善だけで効果は限定的。
🔹 2. 薬物療法
HoFHではLDL受容体がほとんど働かないため、通常の薬剤効果は限定的ですが、複数の薬剤併用で少しでもLDL-Cを下げることが重要です。
- スタチン:HMG-CoA還元酵素阻害薬。部分的に効果あり。
- エゼチミブ:小腸でのコレステロール吸収を抑える。
- PCSK9阻害薬(エボロクマブ、アリロクマブ):ヘテロ型FHでは有効だが、HoFHではLDL受容体がないため効果は限定的。ただし一部の残存機能例では有効。
- ANGPTL3阻害薬(エブロクマブ, evinacumab):LDL受容体非依存でLDL-Cを下げられる最新薬剤。HoFHに特に有望。
- MTP阻害薬(ロミタピド):VLDL合成を抑えてLDLを低下。肝障害リスクあり。
🔹 3. LDL吸着療法(アフェレーシス)
- 日本が世界で最も普及している治療法。
- 2週間に1回などの頻度で、血液中のLDL-Cを物理的に除去する。
- 小児期から導入されることも多い。
- 動脈硬化の進展を抑制し、予後を大きく改善。
🔹 4. 外科的治療
- 肝移植:正常なLDL受容体をもつ肝臓に置き換えることで、LDL-Cが大幅に低下する。
- ただし手術リスク・免疫抑制剤の使用など課題も多い。
🔹 5. 新しい治療の展望
- 遺伝子治療(LDLR遺伝子導入)やRNA干渉薬など、研究段階の治療法も進んでいる。
- 特に 受容体非依存的にLDL-Cを下げる薬(ANGPTL3阻害薬など) が期待されている。
✅ まとめ
- <家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>の治療は、
- 生活習慣改善(補助的)
- 薬物療法(スタチン・エゼチミブ・PCSK9阻害薬・ANGPTL3阻害薬など)
- LDL吸着療法(最重要)
- 肝移植など外科治療
- 最新薬やアフェレーシスにより予後は改善しているが、早期診断と継続的治療が必須。
<家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>の日常生活の注意点
🔹 1. 食生活
- 飽和脂肪酸やコレステロールの制限
- バター、ラード、脂身の多い肉、卵黄、乳脂肪製品は控えめに。
- 魚や植物性脂質の活用
- 青魚(EPA・DHA)、オリーブオイル、大豆製品などは推奨。
- 水溶性食物繊維の摂取
- 野菜・海藻・きのこ・豆類はコレステロール吸収を抑える。
- 過食・間食を避ける:体重管理は心血管リスク低減に直結。
🔹 2. 運動
- 適度な有酸素運動(ウォーキング・サイクリングなど)で心肺機能を維持。
- 激しい無酸素運動(重量挙げなど)は血圧や心負担が大きいため注意。
- 医師と相談して「安全な運動範囲」を決めることが大切。
🔹 3. 薬物・治療の遵守
- スタチン・エゼチミブ・ANGPTL3阻害薬などの内服は継続。
- **LDL吸着療法(アフェレーシス)**は定期的に受ける必要があるため、通院スケジュールを守る。
- 服薬を自己判断で中止しないこと。
🔹 4. 感染症・体調管理
- アフェレーシスは体に負担があるため、感染症や脱水があると実施困難になることがある。
- 日常から手洗い・うがい・十分な睡眠を心がける。
🔹 5. 心血管リスク管理
- 高血圧・糖尿病がある場合は厳格にコントロール。
- 禁煙は必須。喫煙は動脈硬化を急速に悪化させる。
- 定期的に心エコーや冠動脈評価を受ける。
🔹 6. 小児・思春期の注意点
- 学校や周囲に病気を理解してもらい、定期的な治療やアフェレーシスに協力してもらう。
- 成長期の栄養管理は制限しすぎず、栄養士・医師の指導下で行う。
🔹 7. 心理的・社会的サポート
- 早期からの治療が必要で、通院や食事制限による心理的負担が大きい。
- 家族・患者会・カウンセリングの利用も推奨される。
✅ まとめ
- <家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)>では、
- 食生活の改善(低脂肪・高繊維・魚・植物油)
- 安全な範囲での運動
- 薬物・アフェレーシスをきちんと継続
- 禁煙・感染予防・体調管理
が最も重要。
- 小児期からの継続的なケアと家族の協力が、予後を大きく左右します。