目次
<中毒性表皮壊死症>はどんな病気?
<中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)> は、皮膚と粘膜が広範囲に壊死・剥離してしまう、命に関わる重篤な皮膚疾患です。
特徴
- 重症の薬疹(薬剤アレルギー) の一種で、スティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)の重症型と考えられています。
- 急激に全身の皮膚が赤くなり、水ぶくれができ、最終的に皮膚が広範囲に剥がれ落ちます。
- 粘膜(口・目・陰部など)にも強い炎症が出て、強い痛みを伴います。
主な原因
- 多くは 薬剤 による過敏反応(抗菌薬、抗てんかん薬、痛み止めなど)
- 感染症が関与することもあります
症状
- 発熱や倦怠感などの前駆症状
- 急速に広がる皮疹(紅斑、水疱)
- 皮膚の広範囲剥離(全身の 30%以上になることも)
- 粘膜障害(口内炎、結膜炎、排尿困難など)
- 重症では多臓器不全を併発
経過・予後
- 急速に進行し、適切な治療をしなければ 致死率は30〜40% と高いです。
- 集中治療や熱傷治療に準じた管理が必要。
- 生存しても、角膜混濁による視力障害 や 皮膚の瘢痕 など後遺症が残ることがあります。
まとめ
中毒性表皮壊死症は、薬剤をきっかけに全身の皮膚と粘膜が壊死する極めて重症な疾患 で、早期の薬剤中止と専門的な集中治療が予後を大きく左右します。
<中毒性表皮壊死症>の人はどれくらい?
<中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis, TEN)>は、非常にまれで重篤な皮膚・粘膜の薬疹の一つです。発症頻度は世界的にみても低く、以下のように報告されています。
🌍 発症頻度(世界)
- 年間発症率:人口100万人あたり 0.4〜1.2人程度 とされています。
- 薬剤に関連する重症皮膚有害反応(SJS/TENを含む)の中でも、TENは最も重症度が高い病型です。
- 女性にやや多く、また高齢者での発症が多い傾向があります。
🇯🇵 日本での頻度
- 日本皮膚科学会の報告では、年間数百例程度 と推定され、人口比からみても世界の報告とほぼ同様の発症頻度です。
- 医薬品副作用報告制度に基づくデータからも、抗菌薬、抗てんかん薬、解熱鎮痛薬などが原因として多いことがわかっています。
📌 まとめ
- TENは 100万人に1人程度 と極めてまれ。
- しかし 致死率は30〜40% と高く、SJSよりも重症度が高い。
- 薬剤の服用後 1〜3週間以内に発症することが多いため、早期発見と緊急入院治療が必要。
<中毒性表皮壊死症>の原因は?
<中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis, TEN)>の原因の大部分は 薬剤 です。まれに感染症やワクチン、自己免疫反応が関与することもありますが、典型的には薬剤により誘発されます。
🔎 主な原因
1. 薬剤(最も多い原因)
TENの 80〜90%以上 は薬剤が原因とされています。
代表的な薬剤は以下の通りです:
- 抗菌薬
- スルホンアミド(ST合剤:スルファメトキサゾール・トリメトプリムなど)
- βラクタム系(ペニシリン、セフェム)
- キノロン系
- 抗てんかん薬
- カルバマゼピン
- フェニトイン
- ラモトリギン
- フェノバルビタール
- 解熱鎮痛薬・消炎薬(NSAIDs)
- 特にオキシカム系(ピロキシカム、メロキシカムなど)
- アロプリノール(高尿酸血症治療薬)
- ネビラピン(抗HIV薬)
⚠️ これらは薬剤投与後 1〜3週間以内 に発症することが多いです。
2. 感染症(まれ)
- マイコプラズマ肺炎
- ウイルス感染(CMV、HSV、EBVなど)
ただし、感染症は スティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS) の方で多く、TENでは薬剤誘発が主流です。
3. その他
- ワクチン接種(非常にまれ)
- 自己免疫異常
- 遺伝的素因(例:HLA-B*1502はカルバマゼピン関連SJS/TENのリスク因子としてアジア系に多い)
📌 まとめ
- TENの原因の大部分は 薬剤性。特に 抗菌薬・抗てんかん薬・NSAIDs・アロプリノール が主要因。
- 感染症や遺伝的背景がリスクを増加させることがある。
- 発症予防のため、過去にSJS/TENを起こした薬剤は再投与禁止 が鉄則。
<中毒性表皮壊死症>は遺伝する?
<中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis, TEN)>は 遺伝性の病気ではありません。
多くの場合は、薬剤に対する重度のアレルギー反応(免疫反応の過剰活性化)が引き金となって発症します。
ただし、いくつかの 遺伝的要因(体質) が発症リスクを高めることが知られています。
- 特定の HLA(ヒト白血球抗原)遺伝子型 が、特定の薬剤によるTEN発症と強く関連しています。
- 例:HLA-B*15:02(カルバマゼピンによるTEN、特に東南アジア系)
- HLA-B*58:01(アロプリノールによるTEN、日本人や中国人など)
- しかし、これらは「薬剤に対する感受性」を高めるものであり、TEN自体が遺伝病として家族に受け継がれるわけではありません。
🔹まとめ
- TENは 遺伝する病気ではない。
- ただし、特定のHLA型を持つ人は薬剤によるTENのリスクが高い。
- そのため、一部の薬剤では投与前に遺伝子検査が推奨されることがある。
<中毒性表皮壊死症>の経過は?
<中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis, TEN)>の経過は、発症から回復までに典型的な流れがあります。
重症度や合併症によって個人差がありますが、大まかに以下のような経過をたどります。
🩺 TENの経過(時系列)
1. 前駆期(発症前~発症初期:数日間)
- 多くは薬剤投与から 1〜3週間以内 に発症
- 発熱(38℃以上)、咽頭痛、倦怠感など「かぜ症状」に似た前駆症状
- 眼や口の粘膜に違和感が出ることもある
2. 急性期(発疹~皮膚壊死進行期:数日間)
- 顔や体幹から始まる紅斑 → 水疱 → 表皮の広範な剥離
- 粘膜(口腔、眼、外陰部)にびらんや潰瘍を形成
- 強い疼痛、体液喪失、感染リスクが急増
- 皮膚の剥離は体表面積の 30%以上 に及ぶことが多い
3. 極期(1〜2週間)
- 表皮壊死がピークに達し、「やけどのような状態」
- 大量の水分・電解質喪失、低体温、敗血症、呼吸不全などが起こりやすい
- 生命予後を左右する時期
- 集中治療室(ICU)や熱傷センターでの管理が必要
4. 回復期(2〜4週間以降)
- 表皮が再生を始める(瘢痕を残すこともある)
- 粘膜の障害は長期後遺症(視力障害、気道狭窄、外陰部癒着など)につながることがある
- 感染や多臓器不全から回復できれば退院可能
⚠️ 予後
- 治療を行っても 死亡率は20〜30%程度 と高い
- SCORTENスコア(予後予測スコア)で重症度を評価
- 生存者の一部は 眼の後遺症(ドライアイ、視力障害)、皮膚の色素異常、瘢痕、心理的トラウマ を抱える
<中毒性表皮壊死症>の治療法は?
<中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)>の治療法についてまとめます。TENはスティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)の重症型であり、死亡率が高く(20〜40%)、早期診断と集学的治療が極めて重要です。
1. 急性期の基本治療(支持療法)
TENは皮膚広範囲熱傷に類似しており、熱傷専門病棟や集中治療室での管理が推奨されます。
- 原因薬剤の中止:最も重要(抗てんかん薬、抗菌薬、NSAIDs などが原因となることが多い)
- 輸液管理:皮膚からの水分・電解質喪失に対応
- 体温管理:低体温・高体温を避ける
- 無菌的処置:創部の感染予防(皮膚剥離部の保護)
- 疼痛管理:強い痛みに対して鎮痛薬
- 栄養管理:高カロリー輸液や経腸栄養
2. 特異的治療(免疫抑制・免疫調整療法)
現在も議論がある分野ですが、以下の治療が行われることがあります。
- 高用量ステロイド:急性期に短期間投与(感染リスクに注意)
- 静注免疫グロブリン(IVIG):Fas受容体阻害作用を利用、皮膚細胞死を抑制する可能性
- シクロスポリン:免疫抑制薬で皮膚壊死進行を抑制する報告あり
- 抗TNFα抗体(インフリキシマブなど):炎症性サイトカイン阻害による有効例あり
- 血漿交換療法:重症例で用いられることがある
※ただし、標準治療として確立しているわけではなく、施設や症例ごとに判断されます。
3. 合併症の管理
- 感染症対策:敗血症が主な死因 → 抗菌薬の適正使用
- 眼科管理:角膜瘢痕や失明リスク → 早期から眼科介入
- 呼吸器管理:気道粘膜障害 → 気道狭窄やARDSに注意
- 泌尿器・消化器:粘膜障害による狭窄や癒着に対するフォロー
4. 予後と長期管理
- 急性期を乗り越えても、皮膚瘢痕・色素沈着、視力障害、粘膜の後遺症が残ることがある
- 皮膚科・眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科など多科連携での長期フォローが必要
✅ まとめ
中毒性表皮壊死症の治療は「原因薬の中止」「集中治療レベルの支持療法」「免疫調整療法の適応検討」が基本です。死亡率が高いため、発症早期の対応と多職種チーム医療が予後を大きく左右します。
<中毒性表皮壊死症>の日常生活の注意点
🔹日常生活の注意点(急性期回復後)
1. 皮膚のケア
- 乾燥予防:皮膚はバリア機能が低下しているため、低刺激性の保湿剤をこまめに使用する。
- 紫外線対策:色素沈着や瘢痕悪化を防ぐため、日焼け止めや長袖・帽子で紫外線を避ける。
- 衣服選び:綿素材など刺激の少ない衣服を選び、擦れや圧迫を避ける。
2. 目のケア
- 定期的な眼科受診:結膜瘢痕・ドライアイ・視力障害が続くことがあるため、人工涙液や点眼薬を使う。
- 乾燥環境の回避:加湿器を利用して目の乾燥を防ぐ。
3. 口腔・粘膜ケア
- 口腔乾燥対策:こまめに水分をとる、人工唾液を使用する。
- 口腔衛生:歯磨きは柔らかいブラシでやさしく、口内炎や瘢痕による嚥下障害に注意。
4. 感染予防
- 免疫が落ちている可能性があるため、人混みや風邪流行時の外出を控える。
- 手洗い・うがいを徹底する。
5. 内臓後遺症への配慮
- 肺・肝臓・腎臓の合併症が残ることがあるので、定期的に内科受診しフォローアップする。
6. 精神的ケア
- 外見の変化や慢性症状から うつや不安障害が起きやすいため、心理的サポートや患者会の利用を検討。
🔹再発予防
- 原因薬を絶対に再使用しない(医師から発行される「薬剤アレルギーカード」や「アレルギー情報カード」を携帯)。
- 新しい薬を処方される際は、必ずTENの既往歴を伝える。
🔹生活例(イメージ)
- 朝:保湿 → 紫外線対策して外出
- 日中:水分補給、人工涙液点眼、疲れたら休憩
- 食後:口腔ケア、粘膜の保護
- 夜:入浴後しっかり保湿、就寝前に点眼・口腔ケア
✅ まとめ
中毒性表皮壊死症は急性期を乗り越えても「皮膚・眼・粘膜・内臓」に長期的な影響が残る可能性があります。そのため、スキンケア・紫外線対策・眼科と内科での定期フォロー・感染予防・精神的サポートが日常生活で特に重要です。