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<もやもや病>はどんな病気?
もやもや病(Moyamoya病)は、脳の血管に異常が生じる進行性の病気で、正式には「ウィリス動脈輪閉塞症」と呼ばれます。以下にその特徴を説明します。
1. 原因
- もやもや病の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています:
- 遺伝的要因:一部の患者では家族内で発症する例があり、遺伝的背景が示唆されています。
- 環境要因:何らかの環境因子が影響する可能性も指摘されています。
2. 特徴
- 脳の主な動脈(内頸動脈の分岐部)が徐々に狭くなり、血流が減少します。
- 狭くなった血管を補うために新しい細い血管網が形成されますが、これらの血管は非常にもろく、血流が不安定です。
- この血管の形態が脳血管撮影検査で「もやもや」とした煙のように見えることから「もやもや病」と名付けられました。
3. 症状
- 脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA):
- 突然の手足の麻痺や力が入らない。
- 言語障害(話せなくなる、言葉が出てこない)。
- 一過性の視力障害や意識障害。
- 脳出血:
- 細い血管が破れて脳内出血を引き起こすことがあります。
- 突然の激しい頭痛、吐き気、意識障害が起こることがあります。
- 頭痛やけいれん:
- 病気の初期段階では慢性的な頭痛やけいれんを経験する人もいます。
4. 診断
もやもや病は、以下の検査によって診断されます:
- 脳血管撮影:
- 血管の「もやもや」した様子を確認。
- MRI/MRA(磁気共鳴画像):
- 血流の異常や狭窄した血管の状態を確認。
- CTスキャン:
- 脳出血や脳梗塞の有無を確認。
5. 治療法
現在、もやもや病の進行を完全に止める治療法はありませんが、以下の治療法が用いられます:
薬物療法:
- 血液をサラサラにする抗血小板薬(アスピリンなど)で血栓を予防。
- 症状に応じて血圧をコントロール。
外科的治療:
- 血行再建術(バイパス手術):
- 狭くなった血管に代わり、脳に十分な血流を送るための新しい血流経路を作る手術。
- 直接バイパス術や間接バイパス術が行われる。
生活管理:
- 激しい運動や過度なストレスを避け、脳血管への負担を減らす。
6. 予後
- 早期発見と適切な治療により、症状をコントロールできる場合があります。
- ただし、治療が遅れると、脳梗塞や脳出血による後遺症が残る可能性があります。
7. 注意点
- もやもや病は日本を含む東アジアで比較的多い病気ですが、他の地域でも発症することがあります。
- 家族内発症の可能性があるため、家族歴がある場合は注意が必要です。
<もやもや病>の人はどれくらい?
もやもや病の患者数や発生率については、地域によって異なりますが、以下の情報が参考になります:
1. 日本における患者数
- 推定患者数: 日本では、もやもや病は珍しい病気ですが、患者数は増加傾向にあります。
- 2017年のデータでは、日本のもやもや病患者数は約1.5万人と推定されています。
- 年間の新規発症率: 日本では、もやもや病の新規発症率はおおよそ 10万人あたり0.54~0.94人 とされています。
- 年齢層:
- 10歳前後の小児と、30~40代の成人に多く見られる「二峰性」の発症分布が特徴です。
- 小児では脳虚血(脳梗塞)、成人では脳出血として発症することが多いです。
2. 世界での発生状況
- もやもや病はアジア(特に日本、韓国、中国など)での発症率が高い病気ですが、世界中で報告されています。
- 東アジア: 日本や韓国、中国では比較的高頻度で発生します。
- 欧米: 10万人あたり0.086人程度と、アジアに比べて発症率が低いとされています。
- 人種的な違い: アジア系の人々に多い傾向があり、欧米やアフリカ系では稀な病気です。
3. 性差
- 女性の発症率は男性の約 1.8倍 高いとされています。
4. 増加傾向の理由
- 医療技術の進歩(MRIやMRAなど)により、早期発見される例が増えていることが一因と考えられています。
- 遺伝的要因や環境要因に関する研究が進む中で、より多くの患者が診断されるようになっています。
<もやもや病>の原因は?
もやもや病の原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。以下に主要な原因と関連要因をまとめます。
1. 遺伝的要因
- もやもや病は、一部の患者で家族内発症が認められることから、遺伝的要因が関与していると考えられています。
- 日本では、患者の約10~15%が家族内発症の例を示しています。
- 特定の遺伝子(RNF213遺伝子)の変異が、もやもや病の発症に強く関連していることが近年の研究で明らかになっています。
- 特に東アジア(日本、中国、韓国など)の患者に多く見られる遺伝子変異です。
2. 人種・地域的要因
- もやもや病は、アジア(特に東アジア)での発症率が高く、欧米やアフリカ系ではまれです。
- これにより、遺伝的背景と地域特有の要因が関連している可能性が示唆されています。
3. 環境要因
- 環境要因の影響も考えられていますが、具体的な要因は特定されていません。
- ウイルス感染や免疫反応が関与している可能性も一部で議論されています。
4. 血管の異常発生
- もやもや病では、脳内の主幹動脈(内頸動脈終末部など)が狭窄または閉塞します。
- これにより、血流を補うために新しい細い血管網が形成されますが、これらの血管は非常に脆弱で、脳出血や血流不足(脳虚血)の原因となります。
5. 免疫や炎症の関与(仮説)
- 一部の研究では、免疫系や慢性的な炎症が血管の狭窄や閉塞に寄与している可能性が示唆されています。
- ただし、明確な因果関係はまだ証明されていません。
6. 発症リスクの引き金
もやもや病は、特定の引き金となる要因によって症状が悪化することがあります:
- ストレスや疲労:
- 身体的・精神的なストレスは発症や症状悪化のリスクとなります。
- 感染症:
- 風邪やインフルエンザなどの感染症が発症を引き起こす可能性があります。
現状の課題
- もやもや病の原因を完全に解明するためには、さらなる遺伝子研究や環境要因の解析が必要です。
- 現在のところ、原因そのものを治療する方法はなく、症状を管理する治療(薬物療法や手術)が中心となっています。
<もやもや病>は遺伝する?
もやもや病は遺伝する可能性があるとされていますが、すべての患者が遺伝によって発症するわけではありません。以下に詳しく説明します。
1. 遺伝的要因と家族内発症
- もやもや病は、一部の患者で家族内発症が確認されています。
- 日本のデータでは、患者の 10~15% が家族内で発症していると報告されています。
- 家族内に患者がいる場合、発症リスクが一般的な人よりも高くなるとされています。
2. 関連遺伝子
- 近年、RNF213遺伝子の変異が、もやもや病の発症に強く関連していることが明らかになりました。
- 特に東アジア(日本、中国、韓国)の患者でこの遺伝子変異が多く見られます。
- RNF213遺伝子の変異を持つ人がすべて発症するわけではなく、他の環境要因や遺伝的要因が発症に関与していると考えられています。
3. 遺伝のパターン
- もやもや病の遺伝形式は、単純なメンデル遺伝では説明できません。
- 多因子遺伝の可能性が高いと考えられています。
- 遺伝子だけでなく、環境要因や生活習慣も発症に影響を与える可能性があります。
4. 家族内発症のリスク
- もやもや病の患者がいる家族では、その他の家族の発症リスクがやや高いとされています。
- 日本の研究では、患者の兄弟や子どもに発症する確率が、一般的な人に比べて約30~40倍高いという報告があります。
- ただし、実際の発症率は低く、家族全員が発症するわけではありません。
5. 遺伝的リスクと検査
- 家族内に複数のもやもや病患者がいる場合や、発症リスクが高いと思われる場合、遺伝子検査を行うことが検討されることがあります。
- しかし、RNF213遺伝子変異が見つかった場合でも、発症の有無を確定的に予測することは難しいため、慎重な判断が必要です。
- 遺伝カウンセリングを受けることで、リスクや対応について詳しい説明を受けることができます。
6. まとめ
- もやもや病は遺伝的な要因が強く関連していますが、必ずしも遺伝だけで発症するわけではありません。
- 家族歴がある場合、遺伝カウンセリングや定期的な健康チェックを通じて早期発見に努めることが重要です。
<もやもや病>の経過は?
もやもや病の経過は個人差がありますが、主に以下のような特徴があります。病気が進行性であるため、適切な治療や管理が重要です。
1. 初期段階
- 症状の出現:
- 小児では主に脳虚血(脳梗塞や一過性脳虚血発作)として現れます。
- 成人では脳出血や頭痛、けいれんが初発症状になることが多いです。
- 新しい血管網(もやもや血管)の形成:
- 狭くなった血管を補うために細い血管が形成されますが、これらの血管はもろく、血流が十分ではありません。
2. 進行段階
- 症状の悪化:
- 時間の経過とともに、脳内の主要な動脈の狭窄や閉塞が進行します。
- 血流不足(虚血)による脳梗塞や、一時的な症状(手足のしびれや麻痺、言語障害)が増える可能性があります。
- 出血のリスク増加:
- 成人では、もろい血管(もやもや血管)が破れ、脳内出血やくも膜下出血を引き起こすリスクが高まります。
3. 長期的な影響
- 脳機能の低下:
- 繰り返す虚血発作や脳梗塞によって、言語、運動、記憶などの脳機能が低下する可能性があります。
- 小児では、学習や発達への影響が懸念されます。
- 神経症状の後遺症:
- 適切に治療が行われない場合、麻痺や言語障害などの後遺症が残ることがあります。
4. 予後
- もやもや病の経過は、早期診断や治療に大きく依存します。
- 治療が行われた場合:
- 血行再建術(バイパス手術)によって、血流が改善され、脳梗塞や出血のリスクが軽減されることがあります。
- 手術後の予後は比較的良好で、症状が安定する患者も多いです。
- 治療が行われなかった場合:
- 症状が進行し、重度の脳梗塞や出血を繰り返すリスクがあります。
- 治療が行われた場合:
経過中の注意点
- ストレスや疲労を避ける:
- 身体的・精神的なストレスは症状を悪化させる可能性があります。
- 感染症の予防:
- 風邪やインフルエンザなどの感染症が引き金となって症状が悪化することがあります。
- 血圧管理:
- 血圧が高いと脳出血のリスクが増すため、適切にコントロールする必要があります。
定期的なフォローアップ
- もやもや病は進行性の疾患であるため、定期的なMRI/MRAや血管撮影による経過観察が重要です。
- 症状がない場合でも、進行状況を確認することで適切なタイミングでの治療が可能になります。
まとめ
- もやもや病の経過は、放置すると脳梗塞や出血などのリスクが高まりますが、早期診断と治療で予後を改善することができます。
- 定期的な医師の診察と自己管理が重要です。
<もやもや病>の治療法は?
もやもや病の治療法は、病気の進行を抑え、症状を改善し、脳梗塞や脳出血などの合併症を予防することを目的とします。以下に、主な治療法をまとめます。
1. 保存的治療(非手術療法)
症状が軽度で進行が遅い場合や、手術が適さない場合に行われます。
薬物療法
- 抗血小板薬(アスピリンなど)
- 血液をさらさらにして、血栓(血の塊)ができるのを防ぎます。
- 脳梗塞のリスクを減らすために使用されます。
- 血圧管理薬
- 高血圧の患者では、血圧をコントロールして脳出血のリスクを軽減します。
- 抗てんかん薬
- てんかん発作がある場合に使用します。
生活指導
- ストレスや過労を避ける。
- 適切な栄養と十分な休養を取る。
2. 手術療法(血行再建術)
進行性の場合や症状が重い場合、また脳梗塞や出血のリスクが高い場合に推奨されます。手術によって脳への血流を改善することで、症状の進行を抑えます。
代表的な手術方法
- 直接血行再建術
- 頭皮や側頭部の血管(浅側頭動脈)を脳の血管(中大脳動脈)に直接つなぐ手術。
- 血流を即座に改善できるため、成人患者によく行われます。
- 間接血行再建術
- 血管や筋膜などを脳の表面に移植し、徐々に新しい血管網を形成させる方法。
- 小児に多く適用され、術後数か月で効果が現れます。
- 併用術
- 直接法と間接法を組み合わせた手術。
- 効果を早めると同時に、長期的な血流改善を目指します。
手術の効果
- 手術により、脳梗塞や出血のリスクが大幅に低減します。
- 小児では発達障害や学習障害のリスクも減少します。
3. リハビリテーション
- 脳梗塞や手術後に、運動機能や言語機能を回復するためのリハビリテーションを行います。
- 日常生活を安全に送るためのトレーニングも重要です。
4. 経過観察
- 定期的にMRI/MRAや血管造影検査を行い、病気の進行や手術後の経過を確認します。
- 症状の変化に応じて治療方針を調整します。
5. 再発防止のための生活管理
- 血圧を適切にコントロールする。
- 適度な運動やバランスの良い食生活を心がける。
- 感染症を予防する(風邪やインフルエンザなどが症状悪化の引き金になることがあります)。
治療の選択肢は患者によって異なる
- 症状の重さ、進行状況、年齢、全身状態などに応じて、治療法を選択します。
- 主治医と十分に相談し、適切な治療方針を立てることが重要です。
<もやもや病>の日常生活の注意点
もやもや病の日常生活の注意点は、症状を悪化させないことと、脳梗塞や脳出血を予防することを目的としています。以下に具体的なポイントをまとめます。
1. 体調管理
- ストレスを避ける:
- 精神的・身体的なストレスは脳血流に影響を与え、症状を悪化させる可能性があります。
- リラックスできる時間を確保し、適度に休養を取ることが大切です。
- 疲労の蓄積を防ぐ:
- 十分な睡眠を取り、無理のない生活リズムを心がけましょう。
- 感染症の予防:
- 風邪やインフルエンザが症状を引き起こすことがあります。
- 手洗いやうがいを徹底し、予防接種も検討してください。
2. 適切な運動
- 軽い運動を取り入れる:
- ウォーキングや軽いストレッチなど、無理のない範囲で適度に体を動かすことは血行改善に役立ちます。
- 激しい運動は控える:
- 全力疾走や激しいスポーツは、血圧や脳血流に負担をかけるため避けましょう。
3. 食生活の工夫
- 塩分を控える:
- 高血圧のリスクを減らすために、減塩を意識した食事を心がけましょう。
- バランスの良い食事:
- 野菜、果物、魚などを中心にした栄養バランスの取れた食事を心がけ、動脈硬化の予防に努めます。
- 水分補給を忘れない:
- 脱水状態は血液の流れを悪くし、脳梗塞のリスクを高めるため、こまめに水分を摂りましょう。
4. 血圧管理
- 血圧が高いと脳出血のリスクが増すため、血圧管理が重要です。
- 定期的に血圧を測定し、異常があれば医師に相談してください。
- 塩分を控えたり、血圧を下げる薬を適切に服用することも有効です。
5. 注意すべき症状と早期対応
- 以下の症状が現れた場合、すぐに医療機関を受診してください:
- 一時的な手足のしびれや麻痺
- めまい、視力の低下
- 頭痛や意識の変化
- けいれん発作
6. 精神的ケア
- 病気に伴う不安やストレスを軽減するため、カウンセリングやサポートグループの利用も検討してください。
- 家族や友人とのコミュニケーションを大切にし、孤立を避けましょう。
7. 医師の指示を守る
- 定期的な診察や検査を受ける。
- MRIや血管撮影を定期的に行い、病状の進行を確認します。
- 薬の服用を適切に守る。
- 処方された薬を指示どおりに服用し、自己判断で中止しないことが重要です。
8. 日常生活での具体的な注意点
- 体位の急な変化を避ける:
- 急に立ち上がったり、激しい動きをすると脳血流が急激に変化し、症状が悪化する可能性があります。
- 過度な暑さ・寒さを避ける:
- 極端な気温の変化は血管に負担をかけるため、エアコンや暖房を利用して快適な室温を保ちましょう。
9. 学校や仕事での配慮(小児・成人)
- 小児の場合:
- 学校での激しい運動やストレスを避け、必要に応じて学校側と相談して環境を整えます。
- 成人の場合:
- 長時間の勤務や過度な責任が負担になる場合、職場に相談して勤務環境を調整することを検討します。
まとめ
- もやもや病の症状を悪化させないために、生活習慣を見直し、ストレス管理、感染予防、血圧コントロールを心がけることが重要です。
- 定期的な医師のフォローアップを受け、必要に応じて生活や治療の方針を見直しましょう。