目次
<ミオクロニー欠神てんかん>はどんな病気?
<ミオクロニー欠神てんかん>(英:Epilepsy with myoclonic absences)は、
欠神発作(意識が一時的に途切れる発作)に、ミオクロニー(ピクッとした筋肉の素早い収縮)が規則的に合わさって起こる、小児期発症のてんかん症候群です。
現在の国際分類(ILAE)では、小児期に発症する全般性てんかんの一型として位置づけられています。
- 発症年齢と頻度
- 発作の特徴(この病気の核心)
- 脳波(診断に非常に重要)
- 原因・病態
- ほかの欠神てんかんとの違い(重要)
- 発達・認知への影響
- 経過の特徴
- まとめ
- 📊 頻度の目安(疫学データから)
- 🇯🇵 日本ではどれくらい?
- なぜ「正確な人数」が分かりにくいのか
- まとめ
- 原因を一言でまとめると
- ① 構造的な脳の異常はほとんどない
- ② 視床―大脳皮質ネットワークの異常
- ③ 遺伝的素因が関与すると考えられている
- ④ 発症年齢と脳の成熟との関係
- ⑤ 他の欠神てんかんとの関係
- ⑥ 後天的要因は原因になるか?
- まとめ
- 基本的な考え方
- ① 多くのケース:直接は遺伝しない
- ② ただし「遺伝的素因」は関与すると考えられています
- ③ 特定の原因遺伝子はあるのか?
- ④ 兄弟・将来の子どもへの影響は?
- ⑤ 遺伝カウンセリングは必要?
- まとめ
- 経過の全体像(要点)
- ① 発症初期(5〜10歳頃)
- ② 小児期後半〜学童期
- ③ 思春期〜青年期
- ④ 成人期以降
- ⑤ 経過を左右する因子
- 他の欠神てんかんとの比較(重要)
- まとめ
- ① 薬物療法(治療の中心)
- ② 注意が必要な薬(悪化させる可能性)
- ③ 薬物療法以外の治療
- ④ 発達・学習への包括的支援(非常に重要)
- ⑤ 治療の目標と現実的な見通し
- まとめ
- ① 発作を予防する生活管理(最重要)
- ② 服薬管理(極めて重要)
- ③ 学校・園での注意点(EMAでは特に重要)
- ④ 発作時の安全対策
- ⑤ 発達・心理面への配慮
- ⑥ 成長に伴う注意点(思春期以降)
- まとめ(重要ポイント)
発症年齢と頻度
- 発症年齢:5〜10歳頃が多い
- まれなてんかん症候群で、欠神てんかん全体の中でも少数です
発作の特徴(この病気の核心)
① 欠神発作
- 数秒〜十数秒、ぼんやりして反応がなくなる
- 呼びかけに答えない
- 発作後はすぐに元に戻る
② ミオクロニー(同時に起こる)
- 欠神発作の最中に
- 両腕・肩・上半身がリズミカルにピクッ、ピクッと動く
- 多くの場合、
- 1秒に2〜3回程度
- 発作のあいだ規則的に反復
- 転倒することは比較的少ないですが、物を落とすことがあります
👉 「意識が途切れる+体が規則的に動く」
これが最大の特徴です。
脳波(診断に非常に重要)
- 脳波では
約3Hz前後の全般性棘徐波(spike-and-wave)
が、ミオクロニーと同期して出現します - 過呼吸で誘発されやすい
👉 脳波所見が診断の決め手になります。
原因・病態
- 明確な単一原因は不明
- 脳の
- 視床
- 大脳皮質
の全般性ネットワークの異常興奮が関与すると考えられています
- 構造的な脳の異常(MRI異常)は通常みられません
- 多くは遺伝的素因が背景にあると考えられていますが、
特定の遺伝子が必ず見つかる病気ではありません
ほかの欠神てんかんとの違い(重要)
| 病型 | ミオクロニー欠神てんかん | 小児欠神てんかん |
|---|---|---|
| 発作時の動き | 規則的なミオクロニーあり | ほぼなし |
| 発作の持続 | やや長め | 短い |
| 治療反応 | 薬が効きにくいことが多い | 比較的良好 |
| 発達面 | 遅れを伴うことあり | 多くは正常 |
発達・認知への影響
- 約半数前後で
- 学習の遅れ
- 注意・集中の困難
- 知的発達の遅れ(軽度〜中等度)
を伴うことがあります
- これは
- 発作頻発
- 発症年齢
- 治療抵抗性
と関連すると考えられています
経過の特徴
- 発作は慢性に続きやすい
- 思春期以降も
- 欠神発作
- ミオクロニー
- 全身けいれん
が残ることがあります
- 自然に完全寛解する例は多くありません
まとめ
- <ミオクロニー欠神てんかん>は
欠神発作+規則的ミオクロニーが同時に起こる、小児期発症の全般性てんかん - 脳波で
全般性3Hz前後の棘徐波が特徴 - 治療抵抗性になりやすく、発達面への配慮が重要
- 小児欠神てんかんより経過は重め
<ミオクロニー欠神てんかん>の人はどれくらい?
<ミオクロニー欠神てんかん(Epilepsy with myoclonic absences:EMA)>は、
てんかんの中でもかなりまれなてんかん症候群に分類されます。
📊 頻度の目安(疫学データから)
■ てんかん全体の中で
- てんかん患者全体の約0.5%未満
- 報告によっては 0.2〜0.3%程度 とされています
👉 1,000人のてんかん患者さんがいて、2〜5人程度という規模感です。
■ 欠神てんかんの中で
- 欠神発作を主体とするてんかん全体の中では
約1〜2%程度 - 多くを占める
- 小児欠神てんかん
- 若年性欠神てんかん
と比べると、非常に少数派です。
■ 一般人口あたりの推定
- てんかん全体の有病率:約0.5〜1%
- そのうち EMA が約0.2〜0.5%と仮定すると、
👉 人口10万人あたり 約1〜5人程度
👉 人口1万人あたり 0.1〜0.5人程度
と推定されます。
🇯🇵 日本ではどれくらい?
日本では全国規模の正確な登録データはありませんが、
- 日本のてんかん患者数:約 100万人前後
- その 0.2〜0.5% とすると、
👉 約2,000〜5,000人程度 が
**<ミオクロニー欠神てんかん>**である可能性があります。
※ 実際には
- 他の欠神てんかんと診断されている
- 正確に分類されていない
例もあり、実数はこれより少ない可能性も指摘されています。
なぜ「正確な人数」が分かりにくいのか
以下の理由があります。
- 診断が難しい
- 小児欠神てんかんと混同されやすい
- ミオクロニーが軽いと見逃されることがある
- まれな疾患である
- 大規模疫学研究が少ない
- 診断基準が時代とともに整理されてきた
- ILAE分類の変遷により、過去のデータと単純比較が難しい
まとめ
- <ミオクロニー欠神てんかん>は
てんかん全体の0.5%未満の希少てんかん - 一般人口では
10万人に1〜5人程度 - 日本では
数千人規模と推定 - 欠神てんかんの中でも
かなり少数派
<ミオクロニー欠神てんかん>の原因は?
**<ミオクロニー欠神てんかん(Epilepsy with myoclonic absences:EMA)>**は、
単一のはっきりした原因(1つの病変や1つの遺伝子異常)で説明できる病気ではありません。
現在の医学では、脳の全般性ネットワークの機能異常に、遺伝的素因が重なって発症するてんかん症候群と考えられています。
原因を一言でまとめると
脳全体(特に視床―大脳皮質回路)の電気的リズムが異常に同期しやすい体質があり、その結果として「欠神発作+ミオクロニー」が同時に起こる
という理解が最も近いです。
① 構造的な脳の異常はほとんどない
- EMAの患者さんでは、
- MRIなどの画像検査はほぼ正常
- 脳腫瘍、出血、奇形などの明らかな器質的病変は通常みられません
- そのため、
👉 「脳の形の病気」ではなく「脳の働き(機能)の病気」
に分類されます
② 視床―大脳皮質ネットワークの異常
EMAでは、欠神発作に共通する以下の仕組みが関与すると考えられています。
- 視床と大脳皮質の回路が過剰に同期
- その結果、
- 意識が一時的に遮断される(欠神)
- 同時に運動系がリズミカルに発火(ミオクロニー)
脳波でみられる
全般性3Hz前後の棘徐波が、ミオクロニーと完全に同期する
という特徴は、この回路異常を反映しています。
③ 遺伝的素因が関与すると考えられている
● 単一遺伝子疾患ではない
- EMAでは、
- 「この遺伝子が原因」と言えるものは確立していません
- ただし、
- 全般性てんかんが家族内にいる
- 欠神てんかんやミオクロニーてんかんの家族歴がある
ことがあり、遺伝的ななりやすさは関与すると考えられています
● 多因子遺伝の可能性
- 複数の遺伝子が少しずつ影響し、
- そこに発達過程の要因が加わって発症する
という 「多因子疾患」 の考え方が主流です
④ 発症年齢と脳の成熟との関係
- EMAは 5〜10歳頃に発症することが多いです
- この時期は、
- 視床―皮質ネットワークが急速に成熟・再編される時期
- その過程で、
- 電気的バランスが崩れやすい脳では
EMAのような発作様式が表に出る
と考えられています
- 電気的バランスが崩れやすい脳では
👉 「脳の発達段階」と「体質」が交差する時期に発症する、という理解です。
⑤ 他の欠神てんかんとの関係
EMAは、以下の疾患と連続性を持つと考えられています。
- 小児欠神てんかん
- 若年性欠神てんかん
- 若年性ミオクロニーてんかん
これらはすべて、
- 全般性てんかん
- 視床―皮質回路異常
を共通基盤としており、
EMAはその中でも
👉 運動系(ミオクロニー)が強く関与するタイプ
と位置づけられます。
⑥ 後天的要因は原因になるか?
- 外傷
- 脳炎
- 低酸素
などの後天的脳障害が直接の原因になることは通常ありません
👉 これらが原因で起こる場合は、
EMAではなく「症候性てんかん」と分類されます。
まとめ
- <ミオクロニー欠神てんかん>は
明確な器質的原因を持たない全般性てんかん - 視床―大脳皮質ネットワークの機能異常が中核
- 遺伝的素因(多因子)が関与
- 単一遺伝子病ではなく、
**「脳の発達 × 体質」**によって発症すると考えられている - 後天的脳損傷が直接の原因になることはほぼない
<ミオクロニー欠神てんかん>は遺伝する?
基本的な考え方
**<ミオクロニー欠神てんかん(Epilepsy with myoclonic absences:EMA)>**は、
- 単一の遺伝子異常で起こる病気ではない
- 親から子へ必ず伝わる病気でもない
という点で、典型的な遺伝性疾患ではありません。
① 多くのケース:直接は遺伝しない
- EMAの患者さんの多くは
家族に同じ病気の方がいません - 親・兄弟・親戚に
EMAそのものが見つかることはまれです
👉 このため、
「親がEMAだから子どももEMAになる」
という病気ではありません。
② ただし「遺伝的素因」は関与すると考えられています
● 家族歴がみられることがある
EMAでは以下のような家族歴が、一般人口よりやや高い頻度でみられます。
- 欠神てんかん
- 若年性ミオクロニーてんかん
- 他の全般性てんかん
- 熱性けいれん
👉 これは
**「てんかんになりやすい体質」**が
家族内で共有されている可能性を示します。
● 遺伝形式は?
- 常染色体優性・劣性のような
明確な遺伝形式は確認されていません - 現在は
👉 複数の遺伝子が少しずつ影響する「多因子遺伝」
と考えられています
③ 特定の原因遺伝子はあるのか?
- EMAに特異的な
「この遺伝子が原因」というものは
現時点では確立されていません - 一部の症例で
- 全般性てんかん関連遺伝子
との関連が示唆された報告はありますが、
👉 診断や予測に使えるレベルではありません
- 全般性てんかん関連遺伝子
④ 兄弟・将来の子どもへの影響は?
● 兄弟へのリスク
- EMAそのものを発症する確率は
非常に低いと考えられています - ただし、
- 欠神発作
- 熱性けいれん
- 他の全般性てんかん
のリスクは、わずかに高い可能性があります
● 患者さん本人が将来、子どもをもつ場合
- EMAがそのまま遺伝する可能性は低い
- 子どもが
- 何らかのてんかん
- てんかん様体質
を示す可能性は、一般人口よりやや高い程度
と考えられています
⑤ 遺伝カウンセリングは必要?
- 通常、必須ではありません
- ただし、
- 家族内に複数のてんかん患者さんがいる
- 将来の妊娠・出産について強い不安がある
場合は、相談目的で遺伝カウンセリングを受ける意義はあります
まとめ
- <ミオクロニー欠神てんかん>は
遺伝性疾患ではない - 親から子へ
必ず伝わる病気ではない - ただし
てんかんになりやすい体質(遺伝的素因)は関与 - 遺伝形式は
多因子遺伝 - 家族への再発リスクは
全体として低い
<ミオクロニー欠神てんかん>の経過は?
**<ミオクロニー欠神てんかん(Epilepsy with myoclonic absences:EMA)>**は、
小児期に発症し、慢性的に経過しやすい全般性てんかんです。
多くの患者さんで、年齢とともに発作の性質や生活上の課題が変化するという特徴があります。
経過の全体像(要点)
- 自然に治ることは比較的少ない
- 治療抵抗性になりやすい
- 発作だけでなく
発達・学習・行動面への影響が問題になりやすい - 思春期以降も
何らかのてんかん発作が残る例が多い
① 発症初期(5〜10歳頃)
発作の出現
- 欠神発作と同時に
- 両腕・肩・体幹の規則的なミオクロニー
- 発作は
- 1日に何回も起こることがある
- 過呼吸で誘発されやすい
初期の特徴
- 当初は
- 「小児欠神てんかん」と誤認されることがある
- この時点で治療を開始しても
発作が完全に抑えられない例が少なくありません
② 小児期後半〜学童期
発作の経過
- 欠神発作+ミオクロニーが
- 持続
- または部分的に軽減
- 一部の方では
- 全身強直間代発作を合併するようになります
発達・学習面
- 約半数前後で
- 学習の遅れ
- 注意・集中困難
- 知的発達の遅れ(軽度〜中等度)
が明らかになります
👉 発作頻度が高いほど、
学習・発達への影響が出やすいとされています。
③ 思春期〜青年期
発作の変化
- 欠神発作は
- 減少する場合もある
- しかし
- ミオクロニー
- 全身けいれん
は残存しやすい
病型の移行
- 一部の患者さんでは
- 若年性ミオクロニーてんかん
- 他の全般性てんかん
へ移行・類似した経過をたどることがあります
④ 成人期以降
長期経過
- 完全寛解に至る例は少数
- 多くの方で
- 何らかの発作
- または抗てんかん薬の継続
が必要になります
社会生活
- 知的・認知面の程度により
- 通常就労が可能な方
- 支援が必要な方
に分かれます
- 発作のコントロール状況が
生活の自立度を大きく左右します
⑤ 経過を左右する因子
予後に影響すると考えられている要素です。
- 発症年齢(早いほど不利)
- 発作頻度
- 治療開始の早さ
- 治療抵抗性の有無
- 全身けいれんの合併
- 学習・発達支援の有無
他の欠神てんかんとの比較(重要)
| 項目 | ミオクロニー欠神てんかん | 小児欠神てんかん |
|---|---|---|
| 自然寛解 | 少ない | 多い |
| 治療反応 | 不良なことが多い | 良好 |
| 発達影響 | あり得る | 通常なし |
| 成人期の発作 | 残りやすい | 消失しやすい |
まとめ
- <ミオクロニー欠神てんかん>は
小児期発症で慢性経過をとりやすい - 自然に治ることは少なく、長期管理が必要
- 発作だけでなく
学習・認知・行動面への配慮が不可欠 - 早期診断・早期治療・教育的支援が
長期予後を左右する
<ミオクロニー欠神てんかん>の治療法は?
<ミオクロニー欠神てんかん(Epilepsy with myoclonic absences:EMA)>の治療は、
👉 薬物療法が中心ですが、治療抵抗性になりやすい点が特徴です。
そのため、早期から適切な薬剤選択と併用、そして発達・学習面への支援を同時に行うことが重要です。
① 薬物療法(治療の中心)
基本方針
- 欠神発作+ミオクロニーの両方を抑える薬を選択します
- 単剤で不十分な場合、早めに併用療法を検討します
有効性が期待される主な薬剤
- バルプロ酸
欠神発作・ミオクロニーの双方に有効で、第一選択となることが多い薬剤です。 - エトスクシミド
欠神発作には有効ですが、ミオクロニーへの効果は限定的なため、単剤より併用で用いられることが多いです。 - クロナゼパム
ミオクロニー抑制に有効で、補助的に追加されます(眠気などの副作用に注意)。 - ラモトリギン
欠神発作に一定の効果がありますが、ミオクロニーを悪化させる場合があるため慎重に使用します。 - レベチラセタム
ミオクロニーに有効な例があり、近年補助薬として選択されることがあります。
併用療法の例(代表)
- バルプロ酸 + クロナゼパム
- バルプロ酸 + エトスクシミド
- バルプロ酸 + レベチラセタム
👉 単剤で抑えきれないケースが多く、併用が現実的です。
② 注意が必要な薬(悪化させる可能性)
以下は全般性てんかんを悪化させる可能性があり、原則避けます。
- カルバマゼピン
- フェニトイン
- ビガバトリン
👉 欠神・ミオクロニーの増悪や、全身けいれん誘発の報告があります。
③ 薬物療法以外の治療
● ケトン食療法
- 薬剤抵抗性の場合に検討されます
- 発作頻度が減る例がありますが、専門施設での厳密な管理が必要です
● 外科治療
- EMAは全般性てんかんのため、
外科切除の適応は通常ありません
④ 発達・学習への包括的支援(非常に重要)
- EMAでは
- 学習障害
- 注意・集中困難
- 知的発達の遅れ
を伴うことがあります
- 治療は
- 発作を減らす
- 学習・発達を守る
という2つの目的で行います
👉 療育・特別支援教育・心理支援の併用が、長期予後の改善につながります。
⑤ 治療の目標と現実的な見通し
- 完全な発作消失が難しいケースも多い
- 目標は
- 発作頻度の大幅減少
- 転倒・事故の予防
- 学習・生活の安定
- 長期的に薬の継続が必要になることが少なくありません
まとめ
- <ミオクロニー欠神てんかん>の治療は
薬物療法が中心 - バルプロ酸が第一選択
- 併用療法が必要になることが多い
- 一部の薬は発作を悪化させるため注意
- 発作治療と同時に
発達・学習支援が不可欠
<ミオクロニー欠神てんかん>の日常生活の注意点
**<ミオクロニー欠神てんかん(EMA)>**では、
発作を起こしにくくする生活管理と、学習・発達を守る配慮、安全対策を同時に行うことが重要です。
以下では、家庭・学校(園)・外出で共通して大切な点を整理します。
① 発作を予防する生活管理(最重要)
● 規則正しい睡眠
- 睡眠不足は発作を誘発しやすいため、毎日同じ就寝・起床時刻を心がけてください。
- 夜更かし・徹夜・不規則な生活は避けます。
● 疲労・ストレスの軽減
- 強い疲労や精神的ストレスで発作が増えることがあります。
- 予定を詰め込みすぎず、こまめな休憩を取り入れてください。
● 発作誘因への配慮
- 過呼吸で誘発されやすいため、
激しい呼吸を伴う運動・遊びは体調に合わせて調整します。 - 発熱時は早めに休養・対応を行ってください。
② 服薬管理(極めて重要)
- 決められた時間に確実に服薬してください。
- 飲み忘れは、欠神発作・ミオクロニー増悪の大きな原因になります。
- 自己判断での中断・減量は避け、変更は必ず主治医と相談してください。
- 市販薬やサプリメントも、使用前に確認が必要です。
③ 学校・園での注意点(EMAでは特に重要)
● 発作の見えにくさへの理解
- 欠神発作は
- 「ぼんやりしている」
- 「集中していない」
と誤解されやすい発作です。
- ミオクロニーが軽い場合、周囲が気づかないこともあります。
👉 学校・園には
**「発作の特徴」「叱責では改善しないこと」**を共有してください。
● 学習面の配慮
- 学習の遅れや注意障害を伴うことがあります。
- 有効な工夫:
- 短時間で区切った学習
- 板書の配慮・プリント併用
- 繰り返し説明
- 必要に応じて、特別支援教育・合理的配慮を検討します。
④ 発作時の安全対策
● 転倒・事故防止
- 発作中に
- 物を落とす
- 体が揺れる
ことがあるため、危険な場所では注意が必要です。
● 水・高所への注意
- 一人での
- 入浴
- 水泳
- 高所遊び
は避け、必ず見守りを行ってください。
⑤ 発達・心理面への配慮
- EMAでは
- 学習の遅れ
- 注意・集中の困難
- 自信喪失
が起こりやすいです。
- 「できないこと」を責めず、成功体験を積み重ねることが大切です。
- 気分の落ち込みや不安が目立つ場合は、早めに医療・心理支援につなげます。
⑥ 成長に伴う注意点(思春期以降)
- 思春期以降も
- ミオクロニー
- 全身けいれん
が残ることがあります。
- 生活の自立を目指す際も、
睡眠・服薬・安全管理の継続が不可欠です。 - 自動車運転などは、法令と主治医の判断に従ってください。
まとめ(重要ポイント)
- 規則正しい睡眠と服薬管理が最重要
- 過呼吸・疲労・ストレスへの配慮
- 欠神発作は「怠け」ではないと周囲に理解してもらう
- 学習・発達支援を早期から併用
- 安全対策と見守り体制の確保
<ミオクロニー欠神てんかん>の最新情報
バルプロ酸単剤で寛解する群と薬剤抵抗性群の差、そして発症前発達遅滞が不良予後因子候補(2025)
バルプロ酸、エトスクシミド、ベンゾジアゼピン、ラモトリギン等に加え、SLC2A1ならケトン食、SCN1Aならスチリペントール/フェンフルラミンのような“疾患特異的治療”が効くケースがある(2025)
