慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)

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目次

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>はどんな病気?

  1. 🔹 定義
  2. 🔹 病態のメカニズム
  3. 🔹 主な症状
  4. 🔹 原因・背景因子
  5. 🔹 疫学(頻度)
  6. 🔹 経過・重症化
  7. ✅ まとめ
  8. 🔹 世界全体での発症頻度
  9. 🔹 日本での患者数(2025年時点推定)
  10. 🔹 患者の特徴
  11. 🔹 なぜ日本に多いのか?
  12. ✅ まとめ
  13. 🔹 基本の発症メカニズム
    1. 流れとしては:
  14. 🔹 原因(リスク因子)
    1. ① 血栓ができやすくなる体質・病態
    2. ② 血流のうっ滞・外的要因
    3. ③ 特殊な誘因
  15. 🔹 病態の進行メカニズム
  16. 🔹 注意点
  17. ✅ まとめ
  18. 🔹 結論:CTEPHは「遺伝病」ではない
  19. 🔹 遺伝が関与する可能性があるケース(=血栓性素因)
  20. 🔹 HLA関連の報告(日本での研究)
  21. 🔹 遺伝しない部分:発症に大きく影響する環境要因
  22. ✅ まとめ
  23. 🔹 病気の進み方(発症から進行まで)
    1. ① 初期(無症状〜軽症期)
    2. ② 進行期(慢性期)
    3. ③ 末期(右心不全期)
  24. 🔹 治療による経過の違い
  25. 🔹 再発と長期経過
  26. 🔹 予後(生存率の目安)
  27. ✅ まとめ
  28. 🔹 基本方針
  29. 🔸 ① 外科手術:肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)
    1. 概要
    2. 特徴
  30. 🔸 ② カテーテル治療:BPA(Balloon Pulmonary Angioplasty)
    1. 概要
    2. 特徴
  31. 🔸 ③ 薬物療法(内科的治療)
  32. 🔸 ④ 抗凝固療法(再血栓予防)
  33. 🔸 ⑤ 補助療法
  34. 🔸 ⑥ 治療戦略の流れ(2025年標準)
  35. ✅ まとめ
  36. 🔹 基本の考え方
  37. 🔸 ① 身体活動と運動
  38. 🔸 ② 食事と水分管理
  39. 🔸 ③ 感染予防
  40. 🔸 ④ 服薬管理(特に抗凝固薬)
  41. 🔸 ⑤ 睡眠・ストレス管理
  42. 🔸 ⑥ 女性の注意点
  43. 🔸 ⑦ 通院・フォローアップ
  44. ✅ まとめ

🔹 定義

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH) は、
➡️ 肺の血管(肺動脈)にできた血栓が長期間残って線維化し、血流を妨げることで、肺高血圧を引き起こす病気 です。

  • 通常、肺血栓塞栓症(いわゆる肺塞栓症)は血栓が溶けて治りますが、
     一部の人では血栓が完全に溶けず、「器質化(固くなる)」して慢性的な閉塞・狭窄を起こします。
  • その結果、**肺動脈の圧が上昇(肺高血圧)**し、右心室に負担がかかります。

🔹 病態のメカニズム

  1. 血栓残存部が線維化して肺動脈を物理的に閉塞
  2. その後、閉塞していない肺動脈にも二次的な血管病変(リモデリング)が起こる
  3. 結果として 肺血管抵抗が上昇 → 右心不全に進行

🔹 主な症状

  • 労作時の息切れ・動悸
  • 疲れやすさ
  • 胸の圧迫感
  • 浮腫(足のむくみ)や腹水(右心不全による)
  • 咳や喀血を伴うこともある

🔹 原因・背景因子

  • 以前に発症した 急性肺血栓塞栓症の後遺症 が多い
  • ただし、実際には「自覚のない小さな血栓」が長年かけて進行する場合も多い
  • 血栓を作りやすくする要因(血液凝固異常、手術・外傷・長期臥床、悪性腫瘍、カテーテル留置など)も関連

🔹 疫学(頻度)

  • 肺血栓塞栓症を発症した人のうち、約1〜4% がCTEPHへ移行
  • 日本では 指定難病(No. 96) に登録
  • 推定患者数は 数千人規模(約3000〜5000人)

🔹 経過・重症化

  • ゆっくり進行し、放置すると 右心不全 → 呼吸不全 → 死亡 に至る
  • ただし近年は手術・カテーテル治療・薬物治療の進歩により、予後は大きく改善

✅ まとめ

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)>は:

  • 肺の血栓が慢性化・線維化して、肺動脈を塞ぐ病気
  • 肺高血圧症の一種で、右心不全を引き起こす
  • 治療すれば改善が期待できる“治せる肺高血圧症” とも呼ばれる
  • 外科手術(肺動脈血栓内膜摘除術:PEA)やカテーテル治療(BPA)が有効

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>の人はどれくらい?

🔹 世界全体での発症頻度

  • 急性肺血栓塞栓症(PE)を発症した人のうち、約1〜4%がCTEPHへ移行
  • 一般人口での発症率は
    年間100万人あたり約3〜5人 とされています。
  • 欧州では推定患者数は 約5,000〜10,000人
  • 男女比は やや女性に多い 傾向があります(約1.2〜1.5倍)。

🔹 日本での患者数(2025年時点推定)

日本はCTEPHの診断率・治療率が世界トップクラスで、報告データも多い国です。

  • 厚生労働省の「指定難病」データ(No. 96)および日本循環器学会の登録研究(J-CTEPH Registry)によると:
    • 登録患者数は 約3,000〜5,000人前後
    • 年間新規診断数は 200〜300人程度
    • 有病率はおおよそ 人口10万人あたり3〜4人

🔹 患者の特徴

項目傾向
性別女性がやや多い(約60%)
平均発症年齢約60歳前後(中高年が中心)
既往歴約50〜60%で急性肺塞栓症の既往あり
血栓性素因約20〜30%で何らかの凝固異常を持つ

🔹 なぜ日本に多いのか?

  • 欧米に比べ、診断技術の向上・BPA治療の普及により発見率が高い。
  • 日本は BPA(バルーン肺動脈形成術) の臨床実績が世界最多で、軽症例の発見も進んでいるため、
     患者数が「相対的に多く見える」傾向があります。

✅ まとめ

  • 世界では人口100万人あたり約3〜5人、
  • 日本では人口10万人あたり約3〜4人(推定3,000〜5,000人)。
  • 中高年女性にやや多く、約半数は急性肺塞栓症の既往あり。
  • 日本は世界の中でも診断・治療体制が最も整っている国の一つです。

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>の原因は?

🔹 基本の発症メカニズム

CTEPH(Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension)は、
肺の血管(肺動脈)にできた血栓が、溶けずに固まってしまい、長期間残ることで発症します。

流れとしては:

  1. 深部静脈血栓症(DVT)や急性肺血栓塞栓症(PE)が起きる
  2. 通常なら血栓は溶けて治るが、
  3. 一部の人では血栓が器質化(線維化)して、血管壁に癒着
  4. その結果、肺動脈の血流が慢性的に妨げられ、肺高血圧が進行します。

🔹 原因(リスク因子)

① 血栓ができやすくなる体質・病態

分類具体例
血液の凝固異常抗リン脂質抗体症候群、プロテインC欠乏、プロテインS欠乏、アンチトロンビンⅢ欠乏など
慢性炎症性疾患潰瘍性大腸炎、クローン病、膠原病(SLEなど)
がん特に消化器系・婦人科系の悪性腫瘍
脾摘後(脾臓を取った後)血小板数上昇による血栓リスク増加

② 血流のうっ滞・外的要因

状況説明
長期臥床・手術後下肢静脈に血栓ができやすくなる
妊娠・出産・経口避妊薬使用ホルモン変化により凝固能が上昇
中心静脈カテーテル留置・ペースメーカーリード血流の乱れによる局所血栓形成
慢性的な静脈疾患(下肢静脈瘤など)血流が滞り、血栓リスク上昇

③ 特殊な誘因

  • 感染症(特に慢性の炎症性肺疾患)
  • 甲状腺機能亢進症(血栓傾向が強まることがある)
  • 造影剤・抗がん剤などの薬剤曝露
  • 遺伝的素因(HLA-B52やHLA-DPB1の関連が報告)

🔹 病態の進行メカニズム

血栓が線維化して残るだけでなく、
非閉塞部位の肺動脈にも「二次的な血管リモデリング(硬化・狭窄)」が起こります。
その結果:

  • 肺全体の血管抵抗が上昇
  • 肺動脈圧が持続的に上がり
  • 最終的に右心不全に至ります。

🔹 注意点

  • 約半数の患者は「急性肺塞栓症の自覚がない」まま進行します。
  • つまり、「知らないうちに小さな血栓が何度もできて残っていた」ケースが多いのです。

✅ まとめ

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)>の原因:

  • 主因:肺動脈に残った血栓が線維化して血流を妨げること
  • 誘因:血栓体質・慢性炎症・外科手術・カテーテル・がんなど
  • 特徴:急性肺塞栓症の後遺症とは限らず、無症候性の血栓が原因のことも多い

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>は遺伝する?

🔹 結論:CTEPHは「遺伝病」ではない

  • CTEPHは基本的に遺伝性の疾患ではありません。
  • つまり、親から子へ直接遺伝する病気ではない とされています。
  • ただし、「血栓ができやすい体質(血栓傾向)」を家族的に受け継ぐことがあるため、
     “間接的な遺伝的素因” が関わることはあります。

🔹 遺伝が関与する可能性があるケース(=血栓性素因)

CTEPHの背景には、次のような**先天的な凝固異常(血栓を作りやすい体質)**が存在することがあります。

遺伝性異常内容特徴
プロテインC欠乏症血液凝固を抑える因子が不足静脈血栓を繰り返す
プロテインS欠乏症プロテインCの補助因子が不足若年発症の血栓
アンチトロンビンⅢ欠乏症血液凝固の抑制が効かない深部静脈血栓→肺塞栓へ
第V因子ライデン変異(欧米型)凝固抑制が効かない変異欧米では多いが、日本では稀
プロトロンビン遺伝子変異凝固促進因子が過剰血栓傾向

➡️ これらはいずれも「CTEPHそのもの」ではなく、CTEPHの“きっかけ”となる血栓ができやすくなる遺伝要因です。


🔹 HLA関連の報告(日本での研究)

  • 日本の研究では、CTEPH患者にHLA-B52やHLA-DPB1*02:01が多いという報告があります。
  • これらは自己免疫的反応や慢性炎症との関連を示唆するもので、
     「遺伝的素因+環境因子」 が複合して発症に関わると考えられています。

🔹 遺伝しない部分:発症に大きく影響する環境要因

CTEPHは「生活歴」や「環境因子」による影響が大きい病気です。

  • 手術や外傷・長期臥床などによる血流の停滞
  • 妊娠・ホルモン治療
  • がんや感染症
  • カテーテルやペースメーカーの留置
    など、後天的要因が主要な原因です。

✅ まとめ

項目内容
遺伝性❌ 直接遺伝はしない
間接的関与血栓ができやすい遺伝体質(凝固異常)は関与しうる
日本での傾向HLA関連遺伝子が背景素因の一部として報告
主な原因血栓の器質化・環境因子・手術や炎症など

📘 結論:

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>は「遺伝病」ではないが、
「血栓を作りやすい遺伝的体質」が関与することがある。

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>の経過は?

🔹 病気の進み方(発症から進行まで)

① 初期(無症状〜軽症期)

  • 最初の段階では 血栓が部分的に肺動脈をふさいでいるだけ で、
    まだ呼吸困難などの症状はほとんど出ません。
  • しかしこの時点でもすでに肺の一部では血流が減少し、右心室に負担がかかり始めます。
  • 多くの人は「少し動くと息が切れる」「階段で疲れる」など軽度の運動制限で気づきます。

② 進行期(慢性期)

  • 器質化した血栓が 広範囲の肺動脈を塞ぐ ようになり、肺動脈圧が上昇します。
  • 血流が減った部分を補うために、残った血管に過剰な圧がかかり、
    二次的な血管病変(リモデリング) が起こります。
  • 結果として、全身に以下のような症状が現れます:
    • 労作時呼吸困難(息切れ)
    • 易疲労感
    • 胸部圧迫感
    • めまい・失神(低酸素)
    • 下肢のむくみ、腹水(右心不全の兆候)

③ 末期(右心不全期)

  • 肺血管抵抗がさらに上昇し、右心室が拡張して機能低下します。
  • 酸素濃度が下がり、安静時でも息苦しくなる。
  • 血液のうっ滞により、浮腫・肝腫大・体重増加が起こる。
  • 放置すると 右心不全 → 不整脈 → 心停止 に至ることがあります。

🔹 治療による経過の違い

治療内容経過・予後の変化
外科手術(PEA)肺動脈の血栓を除去できれば、肺動脈圧が劇的に改善。
術後5年生存率は 約90%
カテーテル治療(BPA)手術不能例にも有効。段階的に血管を広げて肺血流を改善。
日本ではBPAにより 予後が大幅に改善
薬物療法(リオシグアトなど)手術・BPAの補助療法として使用。
肺血管抵抗を下げて症状を緩和。
無治療・診断遅延右心不全が進行し、5年生存率は約30%以下
進行性で自然寛解はほぼない。

🔹 再発と長期経過

  • 手術後も一部の患者では、再閉塞や微小血管病変により肺高血圧が再燃することがあります。
  • 定期的な心エコー・右心カテーテル・CTなどのフォローが必須。
  • 治療後の生活管理(再血栓予防、抗凝固療法継続)が重要。

🔹 予後(生存率の目安)

状況5年生存率
手術可能例(PEA後)約90%前後
BPA治療例約85〜90%
薬物療法のみ約60%前後
無治療約30%以下

👉 適切な治療を受ければ、「治せる肺高血圧症」 と呼ばれるほど、予後は劇的に改善します。


✅ まとめ

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)>の経過:

  • 初期は無症状 → 徐々に労作時息切れ → 右心不全へ進行
  • 放置すると致死的だが、早期発見と適切な治療でほぼ寛解可能
  • 外科手術(PEA)・BPA・抗凝固療法の進歩により、
     近年は5年生存率が90%近くにまで向上

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>の治療法は?

🔹 基本方針

CTEPHは「治せる肺高血圧症(curable pulmonary hypertension)」とも呼ばれ、
適切な治療を行えば完治または長期生存が十分可能です。

治療の柱は以下の3本です:

① 外科的治療(肺動脈血栓内膜摘除術:PEA)
② カテーテル治療(BPA:バルーン肺動脈形成術)
③ 薬物療法(リオシグアトなど)+抗凝固療法


🔸 ① 外科手術:肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)

概要

  • CTEPH治療の 第一選択で唯一の根治的治療
  • 肺動脈内に固着した線維化血栓を外科的に取り除く手術

特徴

項目内容
対象肺動脈の「中枢側(太い部分)」に血栓がある患者
方法人工心肺+低体温循環停止下で血栓を除去
効果肺動脈圧・右心負荷が大幅に改善、症状が消失
成功率手術死亡率 3〜5%以下(経験施設)
長期予後5年生存率 約90%、10年生存率 約80%

🩺 日本・欧米ともに経験豊富な専門施設で行うことが必須


🔸 ② カテーテル治療:BPA(Balloon Pulmonary Angioplasty)

概要

  • 手術が難しい「末梢型CTEPH(細い血管に病変がある)」のための低侵襲治療
  • カテーテルを肺動脈内に入れ、バルーンで血管を少しずつ広げて再開通させる方法。

特徴

項目内容
適応手術不能例・高齢者・再発例など
手技通常1回で一部のみ処置 → 数回に分けて実施
効果肺動脈圧が平均で20〜30mmHg低下、息切れ改善
合併症肺出血・肺水腫(慎重操作で回避可能)
成績日本の多施設データでは5年生存率 約90%

🌏 日本は世界的にBPAの臨床実績が最も多く、世界標準をリードする国です。


🔸 ③ 薬物療法(内科的治療)

手術やBPAができない場合、または補助療法として以下の薬剤が使われます。

薬剤分類代表薬作用・特徴
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬リオシグアト(アデムパス®)肺血管拡張+リモデリング抑制。唯一CTEPH適応薬。
PDE5阻害薬シルデナフィルなど肺血管拡張。PAHと併用例あり。
エンドセリン受容体拮抗薬マシテンタンなど血管収縮抑制。
プロスタサイクリン誘導体ベラプロストなど微小循環改善。経口・吸入あり。

💊 ただし薬物療法のみでの完治は難しく、
PEA・BPAとの併用や橋渡し治療として行われます。


🔸 ④ 抗凝固療法(再血栓予防)

  • 全患者に必須(生涯継続が原則)。
  • ワルファリン or DOAC(エドキサバンなど)を使用。
  • INR目標:2.0〜3.0程度。
  • 再発・再閉塞を防ぐため、途絶しない管理が重要

🔸 ⑤ 補助療法

治療内容
酸素療法低酸素血症の改善、右心負荷軽減
利尿薬浮腫や右心不全の緩和
生活指導減塩・安静・感染予防・禁煙・過労回避

🔸 ⑥ 治療戦略の流れ(2025年標準)

  1. 診断確定(CT・V/Qシンチ・右心カテーテル)
  2. 外科適応評価(PEAが可能なら最優先)
  3. PEA不能ならBPAを検討
  4. 薬物療法+抗凝固で補助管理
  5. 定期フォローアップ・再発予防

✅ まとめ

治療法概要成功率・効果
肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)根治的外科治療5年生存率 約90%
バルーン肺動脈形成術(BPA)手術不能例に有効5年生存率 約85〜90%
薬物療法(リオシグアト等)補助・維持療法血管抵抗↓、症状改善
抗凝固療法全例に必要再発防止

💡 PEA+BPA+薬物療法の組み合わせにより、
2025年現在、CTEPHの予後は劇的に改善しています。

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>の日常生活の注意点

🔹 基本の考え方

CTEPHは「血栓が再びできないようにする」「肺と心臓に負担をかけない」「低酸素を防ぐ」の3点が生活管理の軸になります。
治療後でも再発や右心不全を防ぐために、毎日の体調・生活リズムが非常に重要です。


🔸 ① 身体活動と運動

ポイント内容
過度な運動は避ける激しい運動・重量物の持ち上げは右心負荷を増やすためNG。
軽い有酸素運動は◎医師が許可すれば、ウォーキング・ストレッチ・軽いヨガなどが推奨。
体調変化に敏感になる少しの息切れ・めまい・むくみを感じたらすぐ休む。
高地・飛行機注意低酸素環境で症状が悪化する可能性あり。必要時は酸素ボンベの指示を受ける。

💡 「無理せず続けられる運動」がベストです。


🔸 ② 食事と水分管理

項目内容
塩分制限浮腫・右心不全を防ぐため1日6g以下が目安。
水分管理医師の指示に従う(利尿薬使用中は飲みすぎ注意)。
ビタミンK含有食(納豆・青汁など)ワルファリン服用中は摂取制限が必要。DOAC服用中は影響少。
アルコール心拍・血圧に影響するため、控えめ〜禁酒推奨
体重測定毎日同じ時間に計測し、急激な体重増加=浮腫悪化を早期発見。

🔸 ③ 感染予防

内容理由
風邪・肺炎を防ぐ感染で肺血管炎症や血栓リスクが上昇。
ワクチン接種インフルエンザ・肺炎球菌・新型コロナワクチンは推奨。
手洗い・うがい・マスク感染源を避ける基本対策。

特に呼吸器感染症はCTEPHの増悪因子となるため、季節ごとに注意が必要です。


🔸 ④ 服薬管理(特に抗凝固薬)

注意点内容
抗凝固薬は中断しないワルファリン・DOACなどは「再血栓予防の生命線」。自己判断中止は厳禁。
他の薬との飲み合わせサプリ・抗生物質などで作用が変わる場合あり。服用前に必ず医師へ確認。
定期採血・INRチェックワルファリン使用中は必須。
出血時の対応鼻血・血尿・便潜血などが続く場合はすぐ受診。

🔸 ⑤ 睡眠・ストレス管理

  • 睡眠不足・過労・強いストレスは血圧・心拍変動を引き起こし、右心への負担を増やします。
  • 睡眠時無呼吸の疑いがある場合は検査・CPAPなども検討。
  • 深呼吸・瞑想などでストレスを和らげましょう。

🔸 ⑥ 女性の注意点

  • 妊娠は原則禁忌:妊娠中は血栓が増え、心肺への負担が大きくなるため。
  • 避妊方法:ホルモン系ピルは血栓リスクを高めるため、避妊具やIUDが推奨されます。

🔸 ⑦ 通院・フォローアップ

  • 定期的な心エコー・CT・右心カテーテル検査で経過観察。
  • 治療後も再発や血栓形成が起こることがあるため、半年〜1年ごとに専門医でチェック。

✅ まとめ

カテゴリ生活上のポイント
運動無理のない軽運動。高地・飛行機は注意。
食事減塩・適水分・ワルファリン管理。
感染ワクチン・衛生習慣を徹底。
抗凝固薬を切らさない。副作用を観察。
睡眠・ストレス睡眠確保・精神的安定を保つ。
女性妊娠は原則避ける。
フォロー定期通院・血液・心エコー検査を継続。

💡 日常生活は「血栓を作らない・心肺に優しい生活」が基本です。
過度な制限よりも「安定した生活リズムを保つ」ことが長期予後を良くします。

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>の最新情報

CTEPH 患者の長期生存率が有意に改善(2025)

病態、診断、治療の最近の進展未解決の課題などを提示。(2025)

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