目次
<アジソン病>はどんな病気?
- 🔹 定義
- 🔹 主な原因
- 🔹 症状
- 🔹 経過と合併症
- 🔹 診断
- 🔹 まとめ
- 🔹 世界での頻度
- 🔹 日本での頻度
- 🔹 増加傾向の背景
- ✅ まとめ
- 🔹 アジソン病の基本
- 🔹 主な原因
- 🔹 原因の地域差
- ✅ まとめ
- 🔹 基本的な考え方
- 🔹 遺伝性が関与する場合
- 🔹 遺伝しない場合
- ✅ まとめ
- 🔹 発症の仕方
- 🔹 放置した場合
- 🔹 治療後の経過
- 🔹 長期的な合併症
- 🔹 予後
- ✅ まとめ
- 🔹 基本原則
- 🔹 1. 薬物療法(ホルモン補充)
- 🔹 2. ストレス時対応(シックデイ・ルール)
- 🔹 3. 副腎クリーゼ予防
- 🔹 4. 合併症への対応
- 🔹 新しい治療の展望
- ✅ まとめ
- 🔹 1. 薬の服用管理
- 🔹 2. ストレス時の対応(シックデイ・ルール)
- 🔹 3. 副腎クリーゼ予防
- 🔹 4. 栄養・生活習慣
- 🔹 5. 定期フォローアップ
- 🔹 6. 安全対策
- ✅ まとめ
🔹 定義
- 副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン)が慢性的に不足する病気。
- 副腎そのものが障害されて起こる「原発性副腎皮質機能低下症」の代表。
- 19世紀にイギリスの医師 Thomas Addison が報告したことからこの名前がついています。
🔹 主な原因
- 先進国では 自己免疫性副腎炎(自己免疫疾患による副腎破壊) が最も多い。
- 世界的には 結核による副腎破壊 が依然として重要な原因。
- そのほか、腫瘍の転移・出血・感染(真菌、HIVなど)・遺伝性疾患でも起こる。
🔹 症状
副腎ホルモンが不足することで以下の症状が出ます:
コルチゾール不足
- 倦怠感、体重減少、低血糖
- 抑うつ気分、集中力低下
アルドステロン不足
- 低血圧、脱水
- 低ナトリウム血症、高カリウム血症
ACTH過剰(二次的な影響)
- 皮膚や粘膜が黒くなる(色素沈着:特徴的症状)
🔹 経過と合併症
- ゆっくり進行するが、感染やストレスで急激に悪化すると 副腎クリーゼ(急性副腎不全) を起こす。
- 副腎クリーゼはショック、意識障害、電解質異常を伴い、命に関わる緊急状態。
🔹 診断
- 血液検査でコルチゾール低値・ACTH高値。
- ACTH刺激試験でコルチゾール反応が不十分。
- 自己抗体(副腎皮質抗体、21-ヒドロキシラーゼ抗体)の測定。
- CTやMRIで副腎の形態評価。
🔹 まとめ
<アジソン病>は、
- 副腎皮質の障害によりホルモンが作れなくなり、慢性的に副腎不全となる病気。
- 自己免疫や結核が主な原因。
- 倦怠感、低血圧、体重減少、色素沈着が特徴的。
- 適切に治療しないと 副腎クリーゼを起こして命に関わります。
<アジソン病>の人はどれくらい?
🔹 世界での頻度
- 先進国での有病率は
人口 10万人あたり10〜20人程度(=0.01〜0.02%)。 - 年間発症率は
100万人あたり約4〜6人 と推定されています。 - 男女比は女性にやや多く、発症年齢は30〜50歳台に多いですが、全年齢で起こり得ます。
🔹 日本での頻度
- 日本は欧米に比べるとまれですが、推定で 数千人規模 とされています。
- 正確な全国統計は限られており、希少疾患(指定難病:No.122 アジソン病) に分類されています。
- 原因は欧米同様に 自己免疫性副腎炎が最多。結核による副腎破壊は減少しましたが、依然として一定数あります。
🔹 増加傾向の背景
- 自己免疫性疾患の増加や、診断技術の向上(ホルモン検査・自己抗体検査)により、診断される患者数は増えてきています。
- 一方で、初期は非特異的な症状(疲れやすい、食欲不振など)が多いため、診断が遅れるケースも少なくありません。
✅ まとめ
- <アジソン病>は 10万人に10〜20人程度と非常にまれ。
- 日本の患者数は 数千人レベルで、難病指定されている。
- 欧米・日本ともに 自己免疫性副腎炎が最多の原因。
<アジソン病>の原因は?
🔹 アジソン病の基本
- アジソン病は「副腎そのものの障害で、副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン)が作れなくなる病気」。
- そのため原因は「副腎皮質を破壊・障害する要因」に分けられます。
🔹 主な原因
1. 自己免疫性副腎炎(先進国で最多)
- 免疫が誤って副腎皮質を攻撃 → 副腎が萎縮し機能低下。
- 特徴:21-ヒドロキシラーゼ抗体が陽性。
- 単独で起こることもあるが、他の自己免疫疾患と合併することがある。
- 自己免疫性甲状腺疾患(橋本病、バセドウ病)
- 1型糖尿病
- 悪性貧血、白斑など
➡️ 多腺性自己免疫症候群(APS) の一部として現れることがある。
2. 感染症(世界的には依然として重要)
- 結核(TB):歴史的にアジソン病の最多原因。副腎に結核が広がり破壊する。
- 真菌感染(ヒストプラズマ、クリプトコッカスなど)。
- HIV関連の副腎障害もあり。
3. 腫瘍や浸潤性疾患
- 転移性副腎腫瘍(肺がん、乳がんなどから)。
- 白血病やリンパ腫。
- サルコイドーシス、アミロイドーシス、ヘモクロマトーシスによる浸潤。
4. 出血・梗塞
- 副腎出血(敗血症性ショックに合併する Waterhouse-Friderichsen 症候群など)。
- 抗凝固療法中や外傷による出血。
5. 遺伝性疾患・先天異常
- 先天性副腎低形成症(NR0B1遺伝子異常など)。
- 副腎白質ジストロフィー(X連鎖遺伝)。
6. 医原性(治療による)
- 両側副腎摘出術後。
- 長期ステロイド内服中止後の「二次性副腎不全」と混同されることもある。
🔹 原因の地域差
- 先進国 → 自己免疫が最多。
- 発展途上国 → 結核が依然として重要。
✅ まとめ
<アジソン病>の原因は、
- 先進国では自己免疫性副腎炎が最多。
- 世界的には結核などの感染症も重要。
- そのほか、腫瘍、出血、遺伝性疾患、手術などでも起こる。
<アジソン病>は遺伝する?
🔹 基本的な考え方
- アジソン病そのものは 多くの場合、後天的に発症する病気 で、直接的に「親から子へ遺伝する病気」ではありません。
- ただし、遺伝的素因(体質)や遺伝病の一部として発症することがあるため、遺伝との関わりはゼロではありません。
🔹 遺伝性が関与する場合
1. 自己免疫性アジソン病
- 最も多いタイプ。
- 自己免疫疾患が起こりやすい 遺伝的体質(HLA遺伝子型など) が関与。
- 家族内で 1型糖尿病・橋本病・バセドウ病など他の自己免疫疾患を持つ人がいる場合がある。
- ただし、直接的に必ず遺伝するわけではなく、「なりやすい体質」が家族で共有されやすい。
2. 多腺性自己免疫症候群(APS)の一部としてのアジソン病
- APS-1(常染色体劣性遺伝、AIRE遺伝子変異)
- 小児〜若年で発症。アジソン病、皮膚カンジダ症、上皮小体機能低下症を合併。
- APS-2(HLA関連、遺伝的素因)
- 成人に多く、アジソン病+甲状腺疾患+1型糖尿病など。
3. 遺伝性疾患による副腎障害
- 副腎白質ジストロフィー(X連鎖劣性):神経症状と副腎不全を合併。
- 先天性副腎低形成症(NR0B1遺伝子異常、X連鎖):乳児期から副腎不全。
🔹 遺伝しない場合
- 感染症(結核、真菌、HIVなど)
- 腫瘍の転移や浸潤
- 副腎出血・手術後
➡️ これらは遺伝とは無関係に発症。
✅ まとめ
- <アジソン病>は 基本的には遺伝しない後天性の病気。
- ただし、**自己免疫疾患のなりやすさ(HLA体質)**や、APS・副腎白質ジストロフィー・副腎低形成症などの遺伝病に合併する場合は「遺伝的背景あり」。
<アジソン病>の経過は?
🔹 発症の仕方
- 多くはゆっくり進行性。初期は「疲れやすい」「食欲がない」など非特異的症状。
- 数か月~数年かけて、体重減少・低血圧・皮膚色素沈着などが徐々に目立ってくる。
- 感染や手術・強いストレスをきっかけに**副腎クリーゼ(急性副腎不全)**を起こして診断されることも多い。
🔹 放置した場合
- コルチゾール不足 → 低血糖・全身倦怠感・意識障害。
- アルドステロン不足 → 低ナトリウム血症・高カリウム血症・脱水・低血圧。
- 最終的にショックに至り、致死的。
🔹 治療後の経過
- 適切にホルモン補充(ヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾン)を行えば、
- 体調は安定し、社会生活や就労も可能。
- ただし一生涯にわたり内服が必要。
- 感染・外傷・手術など「ストレス時」には補充量を増やす必要がある。
🔹 長期的な合併症
- 自己免疫性アジソン病の場合、**他の自己免疫疾患(甲状腺疾患・1型糖尿病など)**を合併することがある。
- 過剰なステロイド補充 → 体重増加・骨粗鬆症・代謝異常のリスク。
- 不十分な補充 → 慢性的な疲労感・低血圧・副腎クリーゼのリスク。
🔹 予後
- 適切な管理で生命予後は良好。
- ただし副腎クリーゼによる突然死のリスクは完全には消えないため、患者・家族・周囲の理解が必要。
- 医療アラート(副腎不全カードやブレスレット)を携帯していれば緊急時の救命率が上がる。
✅ まとめ
- <アジソン病>は進行性に副腎皮質ホルモンが不足する病気。
- 放置すれば致死的だが、適切な補充療法で通常生活が可能。
- 一生涯の治療継続と、**副腎クリーゼの予防(ストレス時対応・緊急注射薬)**が経過管理の最大のポイント。
<アジソン病>の治療法は?
🔹 基本原則
- 副腎皮質が障害されているため 根治は困難。
- したがって、治療は 不足しているホルモンを一生涯補充すること が中心です。
- 「通常の補充療法」+「ストレス時対応」+「副腎クリーゼ予防」が三本柱。
🔹 1. 薬物療法(ホルモン補充)
① グルココルチコイド補充(コルチゾール不足の補充)
- ヒドロコルチゾン(コートリル®) が第一選択。
- 生理的分泌に近づけるため、通常1日2〜3回に分けて投与。
- 代替として プレドニゾロン、デキサメタゾン を使う場合もある。
② ミネラロコルチコイド補充(アルドステロン不足の補充)
- フルドロコルチゾン(フロリネフ®) を少量投与。
- 血圧や血中ナトリウム・カリウムのバランスを維持。
③ その他(必要に応じて)
- 男性で副腎アンドロゲン不足による筋力低下が目立つ場合:**DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)**を補充することもある(日本では一般的ではない)。
🔹 2. ストレス時対応(シックデイ・ルール)
- 発熱・感染・手術・外傷など体にストレスがかかるときは、ステロイドの増量が必須。
- 経口が困難な場合は、ヒドロコルチゾンの注射を使用。
- 患者や家族は「副腎不全時の緊急対応マニュアル(シックデイルール)」を理解しておく。
🔹 3. 副腎クリーゼ予防
- 緊急時自己注射用ヒドロコルチゾンを携帯。
- 学校・職場・周囲に「副腎不全で命に関わる」ことを伝える。
- **医療アラート(カード・ブレスレット)**の装着も有効。
🔹 4. 合併症への対応
- 自己免疫性アジソン病では、他の自己免疫疾患(甲状腺疾患、1型糖尿病など)の管理も重要。
- 長期ステロイド補充による骨粗鬆症・肥満・糖尿病リスクにも注意。
🔹 新しい治療の展望
- 徐放性ヒドロコルチゾン製剤(1日1回投与で日内リズムに近づける) が臨床応用されつつある。
- 人工副腎・遺伝子治療は研究段階。
✅ まとめ
- <アジソン病>の治療は 生涯にわたるホルモン補充療法。
- ヒドロコルチゾン(コルチゾール補充)
- フルドロコルチゾン(アルドステロン補充)
- ストレス時の増量(シックデイルール)
- 副腎クリーゼ予防と合併症管理が長期的に重要。
<アジソン病>の日常生活の注意点
🔹 1. 薬の服用管理
- グルココルチコイド(ヒドロコルチゾン)とミネラロコルチコイド(フルドロコルチゾン)を毎日きちんと服用する。
- 服薬忘れは命に関わる副腎クリーゼにつながるため、アラーム・ピルケースなどで徹底管理。
- 自己判断で中断・減量は絶対にしない。
🔹 2. ストレス時の対応(シックデイ・ルール)
- 発熱・感染・手術・外傷など体にストレスがかかるときは ステロイドを増量。
- 経口が難しい場合には ヒドロコルチゾン注射を使用。
- 家族や周囲にも「体調が悪くなったときの対応」を共有しておくことが重要。
🔹 3. 副腎クリーゼ予防
- 嘔吐・下痢・強い疲労・低血圧などが出たらすぐ医療機関へ。
- 緊急用注射薬(ヒドロコルチゾン)を携帯し、家族も使い方を習得しておく。
- 学校・職場には病気について伝え、救急時に対応してもらえる体制を整える。
🔹 4. 栄養・生活習慣
- バランスの良い食事と十分な水分摂取を心がける。
- 過度な塩分制限は避ける(アルドステロン不足で塩が必要なため)。
- 適度な運動は可能だが、疲労・脱水に注意。
🔹 5. 定期フォローアップ
- 定期的に血液検査・ホルモン値チェックを行い、補充量を調整。
- 長期ステロイド補充による 骨粗鬆症・糖尿病・高血圧 のリスクをチェック。
- 自己免疫性アジソン病では、甲状腺疾患・1型糖尿病など他の自己免疫病の合併にも注意。
🔹 6. 安全対策
- 医療アラートカードやブレスレットを常に携帯。
- 海外旅行や長期外出では薬を余分に持参。
- 救急外来にかかったときにすぐ説明できるよう、病名や服薬内容を記したメモを持ち歩く。
✅ まとめ
<アジソン病>の日常生活で大切なのは:
- 薬を正しく毎日服用すること
- ストレス時にステロイドを増量すること
- 副腎クリーゼを予防するために緊急注射薬を常備すること
- 定期的な検診で合併症を早期発見・管理すること
- 医療アラートを携帯し、周囲に病気を理解してもらうこと