目次
<全身性エリテマトーデス>はどんな病気?
<全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)>とは、全身の臓器に炎症を引き起こす自己免疫疾患です。
本来、免疫はウイルスや細菌など外敵を攻撃しますが、SLEでは免疫系が自分自身の細胞や組織を「異物」と誤認し、抗核抗体や自己抗体を産生して攻撃するため、全身に多彩な症状が現れます。
主な特徴
- 発症年齢・性別
若い女性(特に20〜40歳代)に多く、男女比は約1:9。 - 症状の多様性(個人差が大きい)
- 皮膚:蝶形紅斑(日光に当たると頬に赤い発疹)、脱毛、皮疹
- 関節:関節痛、関節炎(リウマチに似るが骨破壊は少ない)
- 腎臓:ループス腎炎(蛋白尿、腎機能障害)
- 血液:貧血、血小板減少、白血球減少
- 神経:けいれん、精神症状(ループス脳症)
- 心臓・肺:心膜炎、胸膜炎
- 全身:倦怠感、発熱、体重減少
- 病気の経過
再燃(症状の悪化)と寛解(症状が落ち着く)を繰り返すことが多い。
原因
- 完全には解明されていませんが、
遺伝的素因、ホルモン(特にエストロゲン)、環境因子(紫外線、ウイルス感染、薬剤など)が複合的に関与すると考えられています。
診断
- 自己抗体(抗核抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体など)の検出
- 臨床症状(皮疹、関節炎、腎障害、神経症状など)
- ACR/EULAR分類基準を用いて総合的に判断されます。
まとめ
全身性エリテマトーデスは、自己免疫による慢性の全身性炎症性疾患で、皮膚・関節・腎臓・中枢神経などさまざまな臓器が障害される病気です。治療により予後は改善してきていますが、再燃を繰り返すため長期的な管理が必要です。
<全身性エリテマトーデス>の人はどれくらい?
<全身性エリテマトーデス(SLE, systemic lupus erythematosus)>の患者さんの人数について説明します。
有病率(どのくらいの人がいるか)
- 世界的には 人口10万人あたり20~150人程度 と報告されています。
- 日本では比較的少ない方ですが、近年は診断技術の進歩もあり、増加傾向にあります。
- 厚生労働省の指定難病データ(2020年代)によると、日本の患者数は約6~7万人程度 と推定されています。
発症しやすい人
- 男女比:女性が圧倒的に多く、約9割が女性(特に妊娠可能年齢の20~40代)。
- 人種差:アジア人やアフリカ系で比較的多く、白人では少ない傾向。
まとめ
- 日本:推定約6~7万人(難病指定患者数)
- 世界:人口10万人あたり20~150人
- 男女比:女性が90%前後
<全身性エリテマトーデス>の原因は?
<全身性エリテマトーデス(SLE, systemic lupus erythematosus)>の原因は、ひとつに特定できず、多因子性(遺伝・環境・免疫・ホルモンが複雑に関与)と考えられています。
主な原因・発症要因
1. 遺伝的素因
- 家族内にSLEや他の自己免疫疾患があると発症リスクが高まる。
- 特定の HLA遺伝子型(HLA-DR2, DR3など) が関与。
- 補体成分(C1q, C2, C4)の欠損もリスク要因。
2. 免疫の異常
- 自分の細胞やDNAを「異物」と認識する自己免疫反応が起こる。
- 自己抗体(抗dsDNA抗体、抗Sm抗体など) が作られ、免疫複合体が臓器に沈着 → 炎症・組織障害を引き起こす。
3. ホルモン
- 女性に多いことから、エストロゲン(女性ホルモン) が免疫系を活性化し、SLEの発症に関与していると考えられる。
4. 環境要因
- 紫外線(UV)曝露 → 皮膚障害やDNA損傷 → 自己抗原の増加
- ウイルス感染(例:EBウイルス)
- 喫煙、薬剤(ヒドララジン、プロカインアミド、イソニアジドなど)
5. エピジェネティクス(遺伝子発現調節)
- DNAメチル化異常など、後天的な遺伝子制御の変化が免疫異常に関与していることが近年の研究で注目されている。
✅ まとめ
SLEの原因は「遺伝的な体質」に「ホルモン」や「紫外線・感染などの環境因子」が重なり、免疫システムの誤作動(自己免疫反応)が起こることで発症します。
<全身性エリテマトーデス>は遺伝する?
<全身性エリテマトーデス(SLE)>は 「単純に遺伝する病気」ではありません。
🔹 遺伝の特徴
- SLEは 多因子疾患 で、複数の遺伝要因と環境要因が重なって発症 します。
- 1つの遺伝子が原因で必ず発症する「単一遺伝子病(例:筋ジストロフィー)」とは違います。
🔹 家族内リスク
- 一般人口での発症率は 0.03〜0.1%(1,000〜3,000人に1人程度)。
- 一親等(親・子・兄弟姉妹)にSLE患者がいると、リスクは約10倍 になります。
- 一卵性双生児では一致率は 20〜30% にとどまり、遺伝だけでは説明できません。
🔹 関連する遺伝子
- HLA遺伝子(HLA-DR2, DR3 など)
- 補体欠損遺伝子(C1q, C2, C4 欠損)
- 免疫応答関連の遺伝子(IRF5, STAT4, PTPN22 など)
これらは「感受性遺伝子」であり、持っていても必ず発症するわけではありません。
🔹 まとめ
- SLEは 遺伝そのものではなく「なりやすい体質」が遺伝する 病気。
- 実際に発症するかどうかは、紫外線・感染・ホルモン・ストレス・薬剤などの 環境因子の影響が大きい。
<全身性エリテマトーデス>の経過は?
<全身性エリテマトーデス(SLE)>の経過は人によって大きく異なりますが、医学的には以下のような特徴があります。
🔹 経過の全体像
- 寛解と再燃を繰り返す「波状の経過」
- 症状が落ち着く時期(寛解)と、再び悪化する時期(再燃)を繰り返す。
- 完全に症状がなくなる人もいれば、慢性的に軽度の症状が続く人もいます。
- 発症初期は全身症状が中心
- 発熱、倦怠感、体重減少、関節痛、皮疹など。
- 初期から腎臓や中枢神経に強く出ることもあり、重症化の分かれ道になります。
- 長期経過では臓器障害が問題になる
- 特に腎臓(ループス腎炎)、中枢神経、心血管系、肺、血液(貧血・血小板減少)など。
- 適切に治療しないと腎不全や感染症・血栓症が命に関わります。
🔹 経過のパターン
- 急性型(急速進行型)
→ 発症から数年で腎炎・中枢神経障害が強く出て重症化するタイプ。 - 慢性型(緩徐進行型)
→ 皮疹・関節痛などが長く続き、命に関わる臓器障害は比較的少ない。 - 再燃寛解型(もっとも一般的)
→ 症状が落ち着いたり悪化したりを繰り返す。
🔹 治療の進歩による変化
- 1970年代までは 5年生存率が 50%前後。
- 現在は免疫抑制薬や生物学的製剤の登場により 10年生存率は90%以上。
- ただし長期的には感染症、動脈硬化、悪性腫瘍(特にリンパ腫)の合併リスクが増加。
🔹 まとめ
- SLEは 寛解と再燃を繰り返す病気。
- 経過は「軽症で日常生活を保てる人」から「重症で臓器障害が進行する人」まで幅広い。
- 治療薬の進歩で寿命は大きく延びたが、再燃予防と長期合併症の管理が重要。
<全身性エリテマトーデス>の治療法は?
<全身性エリテマトーデス(SLE:Systemic Lupus Erythematosus)>の治療法は以下のように段階的・個別化して行われます。
🔹 基本方針
SLEは自己免疫疾患であり根治療法はありませんが、薬物療法と生活管理によって寛解導入と再燃予防を目指します。治療は病気の活動性や臓器障害の有無に応じて調整されます。
🔹 主な治療薬
- 副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)
- 炎症や免疫反応を強力に抑える。
- 中等度〜重症例で中心的に使われる。
- 副作用(感染リスク、骨粗鬆症、糖尿病など)に注意。
- 免疫抑制薬
- アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、シクロホスファミド、タクロリムスなど。
- 臓器障害(腎炎、中枢神経症状など)がある場合やステロイドを減らすために使用。
- 抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン)
- 皮疹や関節症状、再燃予防に有効。
- 近年はほぼ全例で推奨される基本薬。
- 網膜症リスクのため眼科での定期検査が必要。
- 生物学的製剤
- ベリムマブ(抗BLyS抗体):再燃予防やステロイド減量に有効。
- アニフロルマブ(抗IFN-α受容体抗体):2021年に承認、難治例に用いられる。
- その他の支持療法
- 抗血小板薬/抗凝固薬:抗リン脂質抗体症候群を伴う場合。
- ビタミンD・骨粗鬆症治療薬:ステロイド副作用対策。
🔹 治療の流れ(重症度別)
- 軽症(皮膚・関節症状中心)
→ 抗マラリア薬(HCQ)+必要に応じて少量ステロイド - 中等症(血液異常・漿膜炎・軽度腎障害など)
→ ステロイド中等量+免疫抑制薬 - 重症(ループス腎炎、中枢神経症状、心・肺障害など)
→ 大量ステロイド(ステロイドパルス療法)+強力な免疫抑制薬/生物学的製剤
🔹 近年の治療トレンド(最新の学術論文より)
- 「ステロイドをできるだけ減らすこと」が国際的な治療目標。
- ヒドロキシクロロキンの全例使用と生物学的製剤の活用で再燃率が低下。
- **個別化医療(バイオマーカーによる治療方針決定)**が進みつつある。
<全身性エリテマトーデス>の日常生活の注意点
SLEは自己免疫疾患で、症状や活動性が人によって異なるため、再燃(病気の悪化)を予防し、合併症を防ぐための生活習慣管理が大切です。
🌿 全身性エリテマトーデスの日常生活の注意点
1. 紫外線対策
- 紫外線はSLEの再燃を引き起こす代表的な因子です。
- 外出時は 日焼け止め(SPF30以上)、帽子、長袖衣服で防御。
- 室内でも窓からの紫外線に注意。
2. 感染予防
- ステロイドや免疫抑制薬で感染症にかかりやすくなります。
- 手洗い・うがい・マスクの活用。
- 人混みや感染症流行時の外出を控える。
- インフルエンザ・肺炎球菌など 適切なワクチン接種。
3. 体調管理
- 十分な睡眠・休養をとり、過労を避ける。
- 規則正しい生活リズムで免疫の安定を図る。
- ストレスも再燃のきっかけになりやすいため、リラクゼーション法(ヨガ、瞑想、深呼吸など)も有効。
4. 食生活
- 栄養バランスの良い食事を心がける。
- ステロイドによる 高血圧・糖尿病・骨粗鬆症予防のため、
- 塩分控えめ
- カルシウム・ビタミンDを意識(乳製品・小魚・きのこ類など)
- 野菜や魚中心の食事
- 肥満予防のため、過食・甘い物の摂りすぎに注意。
5. 薬の管理
- 医師の指示通りに服薬を続けることが最重要。
- 自己判断で減量・中止しない。
- 副作用(骨粗鬆症、感染症、糖尿病など)の早期発見のため、定期検診を受ける。
6. 妊娠・出産の注意
- SLEは妊娠に影響する可能性があるため、妊娠を希望する際は必ず主治医と相談。
- 病気が安定してからの妊娠が望ましい。
- 妊娠中は再燃や合併症(子癇前症、流産など)リスクがあるため専門医管理が必要。
7. 運動
- 無理のない範囲での軽い運動(ウォーキング・ストレッチ・水中運動)が推奨。
- 筋力低下や骨粗鬆症の予防になる。
- 疲労を感じたら無理をしない。
✅ まとめると
- 紫外線対策
- 感染予防
- 規則正しい生活とストレス管理
- バランスの良い食事
- 服薬の継続と定期受診
- 妊娠は主治医と相談
- 軽い運動で体力維持
がSLE患者さんの日常生活の基本です。
<全身性エリテマトーデス>の最新情報
治療目標(T2T):寛解または低疾患活動を保ち、ステロイドは極力速やかに漸減(維持はできれば5 mg/日以下)(2025)