目次
<類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)>はどんな病気?
**<類天疱瘡>**は、
皮膚や粘膜に強い水ぶくれ(緊満性水疱)ができる自己免疫性疾患の総称です。
自分の免疫が、皮膚の“基底膜部”(表皮と真皮をつなぐ部分)を攻撃してしまう病気です。
その中に
- Bullous pemphigoid(水疱性類天疱瘡)
- Mucous membrane pemphigoid(粘膜類天疱瘡)
- Epidermolysis bullosa acquisita(後天性表皮水疱症)
などが含まれます。
🔎 何が起こる病気?
1️⃣ 自己抗体が作られる
- 皮膚の接着タンパク(BP180、BP230、VII型コラーゲンなど)を標的に
- IgG自己抗体が攻撃
2️⃣ 表皮と真皮の間が分離
- その結果、**表皮の下に水ぶくれ(表皮下水疱)**が形成されます
👉 水疱は「パンパンに張った硬い水ぶくれ」が特徴です。
🧓 誰に多い?
- 水疱性類天疱瘡は高齢者(70代以上)に多い
- 後天性表皮水疱症はやや若年~中年にもみられる
- 男女差は大きくありません
🩺 主な症状
● 皮膚症状
- 強いかゆみ
- 赤みのある皮膚
- 破れにくい緊満性水疱
- びらん
● 粘膜症状(病型による)
- 口腔内びらん
- 目の充血・瘢痕化
- 咽頭・食道病変
※ 後天性表皮水疱症は、外傷部位に水疱ができやすいのが特徴です。
🧬 原因は?
- 明確な単一原因はありません
- 加齢
- 遺伝素因
- 一部の薬剤(DPP-4阻害薬など)
- 免疫異常
が関与すると考えられています。
⚠ 「天疱瘡」との違い(重要)
| 類天疱瘡 | 天疱瘡 |
|---|---|
| 表皮の“下”で水疱形成 | 表皮の“中”で水疱形成 |
| 水疱が硬く破れにくい | 水疱が破れやすい |
| 高齢者に多い | 中年層にも多い |
👉 名前は似ていますが、攻撃される場所が違います。
🕒 経過
- 数か月~数年続く慢性疾患
- 治療によりコントロール可能
- 再発することもある
📝 まとめ
- 自己免疫により皮膚接着部を攻撃する病気
- 緊満性水疱が特徴
- 高齢者に多い
- ステロイドや免疫抑制薬で治療可能
- 後天性表皮水疱症も同じ「表皮下水疱」グループ
<類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)>の人はどれくらい?
ここでは、
- Bullous pemphigoid(水疱性類天疱瘡)
- Mucous membrane pemphigoid(粘膜類天疱瘡)
- Epidermolysis bullosa acquisita(後天性表皮水疱症)
を含めた「類天疱瘡群」の頻度をまとめます。
🔹 ① 水疱性類天疱瘡(最も多い)
📊 発症率(年間)
- 人口10万人あたり約6~20人/年
- 日本では高齢化に伴い増加傾向
📌 有病率(今現在その病気の人)
- 約 10万人あたり30~50人程度
👉 類天疱瘡群の中では圧倒的に多いタイプです。
🔹 ② 粘膜類天疱瘡
発症率
- 100万人あたり1~2人/年
👉 かなりまれです。
🔹 ③ 後天性表皮水疱症(EBA)
発症率
- 100万人あたり0.2~0.5人/年
👉 非常にまれ(希少疾患レベル)
🔹 全体としての頻度感
| 疾患 | まれさ |
|---|---|
| 水疱性類天疱瘡 | 比較的まれ(高齢者では珍しくない) |
| 粘膜類天疱瘡 | かなりまれ |
| 後天性表皮水疱症 | 非常にまれ |
👵 年齢との関係(重要)
水疱性類天疱瘡は:
- 70歳以上で急増
- 80歳以上では自己免疫性水疱症の中で最も多い
👉 「若い人では珍しい」「高齢者ではそこまで珍しくない」という病気です。
🧾 まとめ
- 類天疱瘡群の中で最も多いのは水疱性類天疱瘡
- 粘膜型・後天性表皮水疱症は希少
- 高齢化により全体数は増加傾向
- 若年発症はまれ
<類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)>の原因は?
類天疱瘡群は、
皮膚の「表皮と真皮をつなぐ部分(基底膜部)」を
自己抗体が攻撃する自己免疫疾患です。
🔹 原因の本質
① 自己抗体ができる
本来は守るはずの免疫が、
皮膚の接着タンパクを“異物”と誤認します。
② 攻撃される標的
病型によって異なります:
| 病型 | 標的タンパク |
|---|---|
| Bullous pemphigoid | BP180(コラーゲンXVII)、BP230 |
| Mucous membrane pemphigoid | BP180、ラミニン332など |
| Epidermolysis bullosa acquisita | VII型コラーゲン |
👉 これらは表皮と真皮を固定する重要な構造タンパクです。
③ 何が起こるのか
- 抗体が基底膜部に結合
- 補体が活性化
- 炎症細胞が集まる
- 表皮が真皮からはがれる
- 表皮下水疱(緊満性水疱)が形成
🔹 なぜ自己抗体ができるの?
単一原因ではありません。
複数の要因が重なります。
🧬 遺伝素因
- 特定のHLA型との関連が報告
👵 加齢
- 高齢者で免疫調整が崩れやすい
💊 薬剤
- DPP-4阻害薬(糖尿病薬)
- 一部の抗生物質・利尿薬など
🧠 神経疾患との関連
- パーキンソン病
- 認知症
(神経系と皮膚の抗原が似ている可能性)
🔹 後天性表皮水疱症(EBA)の特徴的原因
EBAは:
- VII型コラーゲンに対する自己抗体
- 外傷部位に水疱ができやすい
- 炎症性腸疾患との関連が報告
🔹 感染症ではない
- うつる病気ではありません
- 細菌やウイルスが直接原因ではありません
📝 まとめ
- 原因は 自己免疫異常
- 基底膜部タンパクが標的
- 表皮下水疱ができる
- 高齢・薬剤・遺伝素因が関与
- 後天性表皮水疱症はVII型コラーゲンが標的
<類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)>は遺伝する?
結論から言うと――
👉 基本的には遺伝しません。
🔹 なぜ「遺伝しない」と言えるの?
類天疱瘡群は
- Bullous pemphigoid
- Mucous membrane pemphigoid
- Epidermolysis bullosa acquisita
を含む自己免疫疾患です。
これらは
- 生まれつきの遺伝子異常が原因ではなく
- 免疫が後天的に自分の皮膚を攻撃してしまう病気
です。
👉 そのため、親から子へ“直接”遺伝する病気ではありません。
🔹 ただし「体質」は関係する
完全にゼロではありません。
🧬 遺伝素因(HLA型)
- 特定のHLAタイプが発症しやすい傾向あり
- しかし
→ HLAが同じでも発症しない人の方が圧倒的に多い
つまり、
✔ 「病気そのもの」は遺伝しない
✔ 「なりやすい体質」は少し関係する可能性あり
という位置づけです。
🔹 家族内発症は?
非常にまれです。
一般的に家族集積はほとんどありません。
🔹 後天性表皮水疱症(EBA)は?
EBAも
- 自己抗体(VII型コラーゲン)が原因
- 先天性水疱症(遺伝性表皮水疱症)とは別物
👉 後天性表皮水疱症も遺伝しません。
📝 まとめ
| 疾患 | 遺伝する? |
|---|---|
| 水疱性類天疱瘡 | しない |
| 粘膜類天疱瘡 | しない |
| 後天性表皮水疱症 | しない |
- 基本は後天性自己免疫疾患
- 子どもに直接遺伝する心配は通常ありません
<類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)>の経過は?
- Bullous pemphigoid(水疱性類天疱瘡)
- Mucous membrane pemphigoid(粘膜類天疱瘡)
- Epidermolysis bullosa acquisita(後天性表皮水疱症)
を含む「類天疱瘡群」の経過をまとめます。
🔹 全体的な特徴
- 慢性の自己免疫疾患
- 良くなったり悪くなったりを繰り返す
- 適切な治療でコントロール可能
- 病型により重症度や後遺症が異なる
① 水疱性類天疱瘡(最も多いタイプ)
🕒 典型的な経過
- 強いかゆみから始まることが多い
- 数週間~数か月で緊満性水疱が出現
- 治療開始で徐々に改善
⏳ 持続期間
- 多くは 1~5年程度で寛解
- 高齢者では再燃することもあり
⚠ 重要
- 高齢者では感染や体力低下が問題になることがある
- 適切な治療により予後は大きく改善
② 粘膜類天疱瘡
経過の特徴
- 口・目・喉など粘膜主体
- 慢性進行性
- 瘢痕(あと)が残ることがある
特に眼病変では
放置すると視力低下のリスクがあります。
👉 早期治療が重要。
③ 後天性表皮水疱症(EBA)
経過の特徴
- 外傷部位に水疱
- 慢性で再発しやすい
- 瘢痕や色素沈着が残ることが多い
炎症型は重症化しやすく、
寛解まで時間がかかることがあります。
🔹 再発について
- 免疫抑制薬を減量中に再発することがある
- ストレス・感染・薬剤がきっかけになる場合も
🔹 寿命への影響
- 近年は治療の進歩で予後は改善
- ただし高齢発症例では
感染や基礎疾患の影響が大きい
📝 まとめ
| 病型 | 経過 |
|---|---|
| 水疱性類天疱瘡 | 数年で寛解することが多い |
| 粘膜類天疱瘡 | 慢性進行・瘢痕形成あり |
| 後天性表皮水疱症 | 慢性再発性・瘢痕残りやすい |
<類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)>の治療法は?
ここでは
- Bullous pemphigoid(水疱性類天疱瘡)
- Mucous membrane pemphigoid(粘膜類天疱瘡)
- Epidermolysis bullosa acquisita(後天性表皮水疱症)
を含む「類天疱瘡群」の治療をまとめます。
🔹 治療の基本方針
目的は:
- 自己抗体の炎症を抑える
- 水疱の新規発生を止める
- 感染を防ぐ
- 副作用を最小限にする
① 第一選択:ステロイド治療
● 外用ステロイド(特に水疱性類天疱瘡)
- 強力外用ステロイドが第一選択
- 高齢者では内服より安全なことが多い
● 内服ステロイド
- 全身に広がる場合
- 粘膜病変が強い場合
👉 多くの症例で効果あり。
② 免疫抑制薬(ステロイド補助)
- アザチオプリン
- ミコフェノール酸モフェチル
- メトトレキサート
- シクロスポリン
👉 ステロイド減量目的や難治例に使用。
③ テトラサイクリン系抗菌薬
- ドキシサイクリンなど
- 軽症例では単独使用も
- 高齢者で副作用を抑えたい場合に選択されることあり
④ 生物学的製剤(難治例)
近年増えている治療:
- リツキシマブ(B細胞除去)
- デュピルマブ(IL-4/13経路)
- オマリズマブ(IgE関連)
👉 特に難治例で報告増加。
⑤ 後天性表皮水疱症(EBA)の治療
EBAはやや治療抵抗性。
- ステロイド
- コルヒチン
- ダプソン
- 免疫抑制薬
- リツキシマブ
重症例では長期管理が必要。
⑥ 粘膜類天疱瘡の注意
- 眼病変は緊急性あり
- 早期から全身治療が必要になることも
🔹 生活管理も重要
- 水疱は清潔保持
- 破れた部位は保護
- 感染予防
- 皮膚刺激を避ける
📝 まとめ
| 治療段階 | 内容 |
|---|---|
| 軽症 | 強力外用ステロイド |
| 中等症 | 内服ステロイド |
| 難治 | 免疫抑制薬・生物学的製剤 |
| EBA | やや治療抵抗性 |
👉 現在は「昔よりはるかにコントロール可能な病気」です。
<類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)>の日常生活の注意点
対象:
- Bullous pemphigoid(水疱性類天疱瘡)
- Mucous membrane pemphigoid(粘膜類天疱瘡)
- Epidermolysis bullosa acquisita(後天性表皮水疱症)
自己免疫による表皮下水疱ができやすい病気なので、
ポイントは 👉 皮膚を守る・感染を防ぐ・薬の副作用に注意する です。
🔹 ① 皮膚の保護(最重要)
● 摩擦を避ける
- ゆったりした綿素材の衣類
- 縫い目・ゴムが強く当たらないもの
- タオルでゴシゴシこすらない
👉 EBAでは特に外傷部位に水疱ができやすいです。
● 水疱の扱い
- 小さく張っている水疱は医師の指示に従う
- 破れたら清潔保持+保護材で覆う
- 自己判断で強い消毒を多用しない
🔹 ② 感染予防
- びらん部は細菌感染しやすい
- 赤みの拡大、膿、発熱があれば早めに受診
- 入浴は可(強くこすらない)
高齢者では感染が重症化しやすいので特に注意。
🔹 ③ かゆみ対策
- 爪を短く保つ
- 保湿を継続
- 冷却で一時的に楽になることあり
🔹 ④ 粘膜病変がある場合
● 口腔病変
- 刺激物(辛い・熱い・硬い食べ物)を避ける
- 柔らかい食事
- 口腔ケアはやさしく
● 眼病変(粘膜類天疱瘡)
- 目の充血や痛みがあれば放置しない
- 眼科定期受診が重要
🔹 ⑤ ステロイド治療中の生活注意
- 感染に注意(手洗い)
- 血糖値・血圧管理
- 骨粗しょう症予防(カルシウム・運動)
- 自己判断で急に中止しない
🔹 ⑥ 再発予防
- 薬の自己中断をしない
- 新しい薬を開始する際は主治医に相談(薬剤性の可能性)
- 強いストレス・感染後に悪化することあり
🔹 ⑦ 心理面
- 水疱は目立ちやすい
- 高齢発症が多いため体力低下と重なりやすい
👉 周囲のサポートも大切。
📝 まとめ
| 注意点 | 理由 |
|---|---|
| 摩擦を避ける | 新規水疱予防 |
| 清潔保持 | 感染防止 |
| 粘膜ケア | 瘢痕予防 |
| 薬の継続 | 再発防止 |
| 副作用管理 | 安全治療 |
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