進行性多巣性白質脳症(PML)

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クッシング病 下垂体性ADH分泌異常症 網膜色素変性症 脊髄空洞症 下垂体前葉機能低下症 下垂体性PRL分泌亢進症 下垂体性TSH分泌亢進症 マリネスコ・シェーグレン症候群 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症 脊髄空洞症 脊髄髄膜瘤 遺伝性ジストニア 神経フェリチン症 脳表ヘモジデリン沈着症 禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症 神経細胞移動異常症 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症 HDLS 前頭側頭葉変性症 ビッカースタッフ脳幹脳炎 BBE 痙攣重積型(二相性)急性脳症(AESD)

目次

<進行性多巣性白質脳症>はどんな病気?

進行性多巣性白質脳症(PML)は、脳の白質(神経線維を覆う白い物質)に多発性の病変を引き起こす、まれで重篤なウイルス性の中枢神経系疾患です。PMLは、通常免疫機能が低下している人々に発症し、神経症状が急速に進行します。

病因

PMLは、JCウイルス(John Cunninghamウイルス)と呼ばれるウイルスが原因です。このウイルスはほとんどの成人が保有していますが、健康な免疫系では通常無害で、症状を引き起こすことはありません。しかし、免疫系が弱まると、JCウイルスが活性化し、脳の白質に感染してPMLを引き起こします。

主な発症条件

PMLは、以下のような免疫力が低下した状態で発症しやすくなります:

  • HIV/AIDS:HIV感染により免疫力が低下した場合、PMLのリスクが高まります。
  • 免疫抑制治療:癌治療、臓器移植後の免疫抑制剤の使用、または自己免疫疾患の治療のために使用される薬剤(例:多発性硬化症の治療薬ナタリズマブなど)によってリスクが増大します。
  • リンパ腫や白血病などの血液のがん

症状

PMLの症状は、脳のどの部位が侵されるかによって異なりますが、一般的には以下のような神経症状が急速に進行します:

  • 認知障害:記憶障害や集中力の低下、思考の混乱など。
  • 運動機能の低下:筋力低下、歩行困難、手足の動きが制限されるなど。
  • 視覚障害:視野が欠ける、視力低下など。
  • 言語障害:言葉が出にくくなる、会話が困難になるなど。
  • 感覚異常:手足のしびれや感覚の鈍化。
  • 痙攣発作:一部の患者では、けいれん発作が発生することがあります。

進行と予後

PMLは非常に進行が早く、治療を行わなければ数ヶ月以内に重度の障害や死亡に至ることが多いです。早期発見と適切な治療が非常に重要ですが、治療が難しく、予後は一般的に悪いです。

治療法

  • 免疫機能の改善:HIV感染者の場合、抗レトロウイルス療法(ART)を強化して免疫機能を回復させることが最も効果的です。
  • 免疫抑制剤の中止:免疫抑制剤を使用している患者の場合、可能であればその使用を中止し、免疫機能を回復させます。
  • 抗ウイルス療法:直接的な治療法は確立されていませんが、いくつかの抗ウイルス薬や免疫調節薬が試みられています。

まとめ

進行性多巣性白質脳症(PML)は、JCウイルスによって引き起こされるまれで深刻な脳疾患で、免疫力が低下している人に発症します。症状は急速に進行し、重度の神経障害や死亡につながることがあります。治療の焦点は、免疫機能の改善を図ることですが、治療が困難で、予後は厳しいことが多いです。

<進行性多巣性白質脳症>の人はどれくらい?

進行性多巣性白質脳症(PML)は非常にまれな疾患であり、その発生率は一般集団では非常に低いです。ただし、免疫抑制状態にある人々、特にHIV感染者や免疫抑制剤を使用している患者の間では、発生率が高くなります。

発生率の概要

  • HIV/AIDS患者:HIV感染者の中でPMLが発生する割合は、抗レトロウイルス療法(ART)が導入される前は0.7%〜8%と報告されていました。ARTの普及により、PMLの発生率は大幅に減少しましたが、依然としてHIV陽性者における重要な合併症の一つです。
  • 免疫抑制治療を受けている患者:多発性硬化症(MS)治療のためのナタリズマブなどの免疫抑制剤を使用している患者では、PMLのリスクが上昇します。この場合の発生率は、使用される薬剤や治療期間によって異なりますが、おおむね数千人に1人程度とされています。
  • 臓器移植患者やがん患者:臓器移植後の免疫抑制療法を受けている患者や、特定の血液がん(リンパ腫、白血病)を持つ患者も、PMLのリスクが増加しますが、発生率は比較的低いです。

まとめ

進行性多巣性白質脳症(PML)は、一般集団では非常にまれな疾患ですが、免疫力が低下している特定の集団(HIV/AIDS患者、免疫抑制治療を受けている患者など)では発生率が高くなります。具体的な数字としては、これらのリスク集団での発生率は数千人に1人程度から、場合によってはそれ以上の頻度で報告されることがあります。

<進行性多巣性白質脳症>の原因は?

進行性多巣性白質脳症(PML)の原因は、**JCウイルス(John Cunninghamウイルス)**という非常に一般的なウイルスです。JCウイルスは多くの人々が持っているウイルスですが、通常は免疫系によって抑えられているため、健康な人にはほとんど症状を引き起こしません。

JCウイルスの特徴

  • 感染率: JCウイルスは成人の70~90%が保有しているとされています。多くの人は無症状のまま感染しており、ウイルスは体内で潜伏状態にあります。
  • 潜伏場所: JCウイルスは通常、腎臓や骨髄などに潜伏しており、免疫系によって抑えられています。

PMLの発症メカニズム

PMLは、免疫系が弱まった場合に、JCウイルスが再活性化し、脳の白質に感染することで発症します。脳の白質は、神経線維を覆うミエリンという脂質に富んだ物質で構成されており、JCウイルスがこのミエリンを破壊することで、神経機能に深刻な障害をもたらします。

免疫抑制状態がリスクを高める

JCウイルスが再活性化してPMLを引き起こすのは、通常、以下のような免疫抑制状態にある場合です:

  • HIV/AIDS: HIV感染によってCD4陽性Tリンパ球の数が減少し、免疫力が低下すると、JCウイルスが再活性化しやすくなります。
  • 免疫抑制治療: 臓器移植後の免疫抑制剤や、自己免疫疾患の治療に使用される生物学的製剤(例:ナタリズマブなど)もPMLのリスクを高めます。
  • 特定の血液がん: 白血病やリンパ腫などの血液がんも、免疫機能を低下させる要因となり、PMLのリスクを高める可能性があります。

まとめ

進行性多巣性白質脳症(PML)の原因は、JCウイルスの再活性化による脳の白質への感染です。このウイルスは、免疫力が低下している状況で再活性化し、神経機能に重篤な障害を引き起こします。PMLは特に、HIV感染者や免疫抑制治療を受けている患者に多く見られる病気です。

<進行性多巣性白質脳症>は遺伝する?

進行性多巣性白質脳症(PML)は遺伝しません。PMLは、遺伝的要因ではなく、主にJCウイルスの感染によって引き起こされる病気です。このウイルスは多くの人々が保有していますが、通常は健康な免疫系によって抑えられ、症状を引き起こすことはありません。

PMLの発症に関連する要因

PMLは遺伝的な病気ではなく、主に以下のような免疫抑制状態にある人々に発症します:

  • HIV/AIDS:免疫力が低下したHIV感染者は、PMLのリスクが高まります。
  • 免疫抑制剤の使用:臓器移植や自己免疫疾患の治療のために使用される免疫抑制剤がPML発症のリスクを高めます。
  • 特定のがん(リンパ腫や白血病など):これらの病気は免疫機能を低下させることがあり、PMLの発症リスクが増加します。

まとめ

PMLは遺伝性の病気ではなく、JCウイルスの再活性化によって引き起こされる感染症です。この病気の発症リスクは、主に免疫力の低下に関連しています。家族や親から直接遺伝することはありません。

<進行性多巣性白質脳症>の経過は?

進行性多巣性白質脳症(PML)の経過は、非常に急速で、一般的に予後は厳しいです。PMLはJCウイルスによって引き起こされる脳の白質の破壊が特徴であり、症状は数週間から数ヶ月の間に急速に進行します。

初期症状

  • 認知障害:記憶力の低下、集中力の欠如、思考の混乱などの認知機能の障害が見られます。
  • 運動機能の低下:一部の患者では筋力低下や手足の動きに制限が出ることがあります。
  • 視覚障害:視野が狭くなる、視力が低下するなどの視覚障害が初期に現れることがあります。

病気の進行

  • 症状の悪化:病気が進行するにつれて、運動機能や認知機能の低下がさらに進行し、患者の生活の質が急速に低下します。
  • 麻痺:半身不随や全身麻痺など、身体の一部または全体が麻痺することがあります。
  • 言語障害:言語機能が徐々に失われ、会話やコミュニケーションが困難になります。
  • 痙攣発作:一部の患者では、痙攣(けいれん)発作が発生することがあります。

予後

  • 致死的な経過:PMLは治療しない場合、通常数ヶ月以内に死亡に至ることが多いです。治療を受けても、神経機能の損傷が残り、重篤な障害を引き起こす可能性があります。
  • 治療後の回復:免疫機能を改善する治療が成功すれば、一部の患者では病気の進行を抑えたり、症状の一部が改善することがありますが、完全な回復は稀です。

まとめ

進行性多巣性白質脳症(PML)の経過は非常に急速で、予後は一般的に厳しいです。症状は短期間で悪化し、適切な治療を受けない場合、数ヶ月以内に死亡に至ることが多いです。治療によって病気の進行を遅らせたり、部分的な回復を図ることが可能ですが、完全な回復は稀です。

<進行性多巣性白質脳症>の治療法は?

進行性多巣性白質脳症(PML)の治療は、非常に難しいです。現在、PMLに対する特異的な治療法は存在せず、治療の焦点は主に免疫機能の改善にあります。

治療のアプローチ

  1. 免疫機能の回復:
    • HIV/AIDS患者の場合:
      • 抗レトロウイルス療法(ART)を強化し、免疫機能を回復させることがPMLの治療において最も効果的です。ARTによってCD4陽性Tリンパ球の数が増加し、JCウイルスの抑制が可能になります。これにより、PMLの進行が抑えられたり、症状が改善することがあります。
    • 免疫抑制剤を使用している患者の場合:
      • 免疫抑制剤の使用を減少または中止することが推奨されます。特に、多発性硬化症(MS)の治療に使用されるナタリズマブ(Tysabri)などの薬剤がPML発症に関連している場合、その使用を中止することで免疫機能が回復し、PMLの進行が遅れる可能性があります。
  2. 抗ウイルス療法:
    • 直接的にJCウイルスを標的とする効果的な抗ウイルス薬は現在存在しませんが、いくつかの薬剤が試験的に使用されています。たとえば、シドフォビルやメフォキンといった薬が試みられていますが、その効果は限定的です。
  3. 免疫調節薬:
    • インターフェロンやステロイドなどの免疫調節薬が使用されることがありますが、これらの薬剤がPMLの進行をどの程度抑制できるかは明確ではなく、個々のケースに応じて使用されます。
  4. 対症療法:
    • PMLによって引き起こされる症状を緩和するための対症療法も行われます。これには、理学療法やリハビリテーションが含まれ、患者の生活の質を可能な限り向上させることが目的です。

治療の効果と予後

  • 早期治療の重要性: PMLの進行を止めるためには、早期に診断し、迅速に治療を開始することが重要です。早期に免疫機能を回復させることで、PMLの進行を遅らせたり、場合によっては一部の機能を回復させることができます。
  • 予後: しかし、PMLは依然として非常に重篤な疾患であり、多くの場合、治療後も神経機能の損傷が残ります。生存率は患者の免疫状態や治療のタイミングに大きく依存します。

まとめ

進行性多巣性白質脳症(PML)の治療は、主に免疫機能の改善に焦点を当てています。HIV/AIDS患者では抗レトロウイルス療法、免疫抑制剤使用患者では薬剤の中止や調整が効果的とされていますが、PMLに対する特異的な治療法はまだ確立されていません。早期診断と治療が予後を改善するために重要です。

<進行性多巣性白質脳症>の日常生活の注意点

進行性多巣性白質脳症(PML)を持つ患者の日常生活においては、病気の進行を管理し、生活の質をできるだけ高く保つために、いくつかの注意点があります。PMLは神経機能に影響を与えるため、日常生活でのサポートが重要です。

日常生活での注意点

  1. 医療サポートの継続:
    • 定期的な医師の診察やフォローアップを受けることが重要です。PMLは進行が速い病気であるため、病状の変化を早期に把握し、必要な治療や対応を迅速に行うことが求められます。
  2. 免疫機能の管理:
    • PMLは免疫力が低下した状況で発症するため、免疫機能の維持が重要です。HIV/AIDS患者の場合は抗レトロウイルス療法を継続し、免疫抑制剤を使用している場合は、医師と相談して適切な調整を行います。
  3. リハビリテーション:
    • PMLにより運動機能や認知機能が低下することが多いため、理学療法や作業療法、言語療法などのリハビリテーションを受けることが推奨されます。これにより、症状の進行を遅らせたり、日常生活の自立を支援することができます。
  4. 生活環境の整備:
    • 自宅の環境を患者の状態に合わせて整えることが必要です。例えば、転倒を防ぐための手すりの設置や、車椅子の使用が必要な場合のバリアフリー化などが考えられます。
  5. 栄養と食事管理:
    • 免疫力を維持するために、栄養バランスの取れた食事が重要です。また、嚥下機能が低下している場合は、誤嚥を防ぐために食事形態を工夫することも必要です。
  6. 家族や介護者のサポート:
    • PMLの患者は日常生活において多くのサポートが必要となるため、家族や介護者の理解と協力が不可欠です。介護者自身もサポートを受けることが重要であり、必要に応じて介護サービスの利用を検討することも有効です。
  7. 精神的サポート:
    • PMLに伴う認知機能の低下や身体機能の喪失は、患者にとって大きなストレスとなります。カウンセリングや心理サポートを受けることで、精神的な負担を軽減し、前向きな気持ちを維持する手助けができます。
  8. 感染予防:
    • 免疫力が低下している患者は、感染症にかかりやすいため、手洗いやうがい、予防接種など、感染予防のための基本的な対策を徹底することが重要です。

まとめ

進行性多巣性白質脳症(PML)患者の日常生活では、医療サポートを継続し、免疫機能を管理することが最優先です。リハビリテーションや生活環境の整備、栄養管理、精神的サポートも重要であり、患者ができるだけ自立した生活を維持できるよう、家族や介護者の協力が求められます。

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