目次
<皮膚筋炎/多発性筋炎>はどんな病気?
🩺 どんな病気か?
- **皮膚筋炎(DM)と多発性筋炎(PM)は、ともに自己免疫性炎症性筋疾患(idiopathic inflammatory myopathies, IIMs)**に分類される病気です。
- 主に 骨格筋に炎症が起こり、筋力低下や筋肉痛を生じる のが特徴です。
- 皮膚筋炎では、これに加えて特有の皮膚症状(紫紅色の発疹など)が現れます。
🔑 特徴
1. 筋肉の症状
- 両側の**近位筋(肩・上腕・骨盤周囲・大腿部)**が対称的に弱くなる
- 立ち上がりにくい、階段の昇降がつらい、腕を挙げにくいなど
- 嚥下障害(のどの筋肉が侵される場合)
- 筋肉痛、疲労感
2. 皮膚の症状(皮膚筋炎のみ)
- ヘリオトロープ疹(まぶたの紫紅色の腫れ)
- ゴットロン丘疹(手指の関節に赤紫色の盛り上がり)
- 光線過敏(紫外線で皮疹が悪化)
3. 他臓器の症状
- 肺:間質性肺炎を合併することがある
- 心臓:心筋炎や不整脈
- 消化管:嚥下障害やまれに穿孔
- 悪性腫瘍(特に皮膚筋炎で関連性が強い)
🎯 原因
- 完全には解明されていませんが、自己免疫反応によって筋肉・皮膚が攻撃されると考えられています。
- 一部の症例では**悪性腫瘍に関連(paraneoplastic syndrome)**することがあります。
📊 疫学
- 比較的まれ(人口10万人あたり 5〜10人程度)
- 女性にやや多い
- 発症年齢は40〜60歳代に多いが、小児にも発症(若年性皮膚筋炎)
💡 まとめ
- 多発性筋炎:筋肉の炎症による筋力低下が中心
- 皮膚筋炎:筋肉症状+特徴的な皮膚症状
- ともに自己免疫疾患であり、時に肺疾患や悪性腫瘍を合併することがある。
<皮膚筋炎/多発性筋炎>の人はどれくらい?
<皮膚筋炎/多発性筋炎(Dermatomyositis/Polymyositis:DM/PM)>は、厚生労働省の指定難病(指定難病13)に含まれる比較的まれな自己免疫性疾患です。
有病率・患者数
- 日本
厚生労働省の難病情報センターによると、皮膚筋炎/多発性筋炎の有病率はおよそ 人口10万人あたり5〜10人程度 と推定されています。
患者数は全国で 約2,000〜3,000人 程度と報告されています。 - 世界
海外の疫学研究では、発症率は 年間100万人あたり1〜10人 程度とされ、まれな疾患です。
女性に多く、男女比は 約2:1。発症年齢は 40〜60歳代 が多いですが、小児にもみられることがあります(若年性皮膚筋炎)。
ポイント
- 筋炎のなかでも比較的多い疾患ですが、それでも希少疾患に分類されます。
- 患者数は少ないものの、肺や心臓の合併症、悪性腫瘍との関連もあるため医学的に注目されています。
<皮膚筋炎/多発性筋炎>の原因は?
<皮膚筋炎/多発性筋炎(Dermatomyositis/Polymyositis:DM/PM)>の原因は、現在も完全には解明されていませんが、自己免疫の異常が中心的な役割を果たしていると考えられています。
原因・発症メカニズムの概要
1. 自己免疫反応
- DM/PM は 自己免疫性筋炎(idiopathic inflammatory myopathy, IIM) に分類されます。
- 自分の筋肉組織や血管を 免疫系が誤って攻撃することにより炎症・筋力低下が生じます。
- 特にDMでは、毛細血管障害・補体の沈着(膜攻撃複合体:MAC) による血管障害が特徴。
- PMでは、CD8陽性T細胞による筋線維の攻撃が主体。
2. 自己抗体の関与
特定の自己抗体が疾患の発症や臨床像と関連しています。代表的なものは:
- 抗Jo-1抗体(アミノアシルtRNA合成酵素に対する抗体) → 間質性肺炎との関連
- 抗Mi-2抗体 → 皮疹が強い皮膚筋炎に特徴的
- 抗MDA5抗体 → 急速進行性間質性肺炎と関連し予後不良
- 抗TIF1-γ抗体 → 悪性腫瘍合併リスクが高い
3. 遺伝的要因
- HLA(ヒト白血球抗原)遺伝子型と関連が報告されています。
例:**HLA-DRB103, 07 などが欧米で関連。 - 遺伝そのものは強くないが、「遺伝的素因+環境因子」で発症リスクが高まると考えられています。
4. 環境因子
- ウイルス感染(コクサッキーウイルス、HTLV-1 など仮説あり)
- 紫外線曝露(皮膚筋炎の皮疹発症と関連)
- 喫煙(特に抗ARS抗体陽性の患者で間質性肺炎リスクを増加)
- 薬剤(スタチンなどによる薬剤誘発性筋炎が知られる)
5. 悪性腫瘍との関連(特に皮膚筋炎)
- 成人発症の皮膚筋炎は、悪性腫瘍の合併率が高い(20〜30%程度) とされます。
- 腫瘍関連抗原が免疫反応を引き起こし、筋肉や皮膚も攻撃される「傍腫瘍症候群」の一つと考えられています。
✅ まとめると:
皮膚筋炎/多発性筋炎の原因は、遺伝的素因を持つ人に、感染・紫外線・腫瘍などの環境因子が加わり、自己免疫反応が暴走して筋肉・皮膚・血管を攻撃することによって発症すると考えられています。
<皮膚筋炎/多発性筋炎>は遺伝する?
<皮膚筋炎/多発性筋炎(dermatomyositis / polymyositis, DM/PM)>は、基本的には 遺伝性の病気ではありません。
🔹遺伝との関係
- 遺伝病ではない
→ 家族性に発症することは非常に稀で、一般的には遺伝する病気ではありません。 - 自己免疫性疾患
→ 自分の免疫が筋肉や皮膚を誤って攻撃して炎症を起こす病気と考えられています。 - 遺伝的素因(体質的背景)
→ HLA(ヒト白血球抗原)など、免疫に関係する遺伝的要因が「発症しやすさ」に関わることは分かっています。
(例:HLA-DRB1*03, HLA-B8 などが欧米で関連報告あり) - 環境要因との組み合わせ
→ ウイルス感染、紫外線、薬剤、悪性腫瘍など外的要因が加わることで発症に至ると考えられています。
🔹まとめ
- DM/PM は 遺伝性疾患ではなく、直接遺伝しない
- ただし、免疫反応に関する遺伝的素因が影響する可能性はある
- 発症には 遺伝要因 + 環境要因 が複合的に関与
👉 ご家族に患者さんがいても必ず遺伝するわけではありません。
<皮膚筋炎/多発性筋炎>の経過は?
<皮膚筋炎/多発性筋炎(dermatomyositis / polymyositis, DM/PM)>の経過は、患者さんごとに大きく異なりますが、典型的な経過をまとめると次のようになります。
🔹発症初期
- 筋肉症状:数週間~数か月で徐々に進行する筋力低下(特に体幹や近位筋:腕を上げにくい、階段が登れない、椅子から立ち上がれない)。
- 皮膚症状(皮膚筋炎のみ):ヘリオトロープ疹(まぶたの紫紅色発疹)、ゴットロン徴候(関節部の紅斑)、光線過敏性皮疹など。
- 全身症状:倦怠感、微熱、体重減少、関節痛。
🔹進行期
- 筋力低下が進み、歩行や日常生活に支障が出る。
- 嚥下障害や呼吸筋障害が出ると、食事摂取や呼吸に影響。
- 間質性肺炎(ILD)や心筋炎が合併することがあり、重症化の要因となる。
- 成人例では 悪性腫瘍合併 が重要(皮膚筋炎で特に関連性が高い)。
🔹治療による経過
- ステロイド(プレドニゾロン)を中心に、免疫抑制薬(メトトレキサート、タクロリムス、アザチオプリン、ミコフェノール酸など)や生物学的製剤(リツキシマブ、JAK阻害薬など)を併用することで改善が期待できる。
- 多くは治療により筋力や皮疹が軽快するが、完全寛解まで至らず再燃を繰り返すケースもある。
- 早期診断・治療で予後は改善してきている。
🔹長期的な経過
- 寛解する例:治療に反応し、長期的に安定する。
- 再発・再燃する例:治療を減量・中止すると再発することがある。
- 慢性化する例:筋力低下や皮疹が残存し、進行性に障害が進む。
- 生命予後に影響する要因:
- 間質性肺炎(特に急速進行性ILD)
- 悪性腫瘍の合併
- 心筋炎・不整脈
これらがある場合は重症化・死亡リスクが高まる。
✅ まとめると:
皮膚筋炎/多発性筋炎は、治療によって改善・寛解するケースも多いですが、再発や慢性化する例もあり、肺・心臓・悪性腫瘍の合併が経過に大きく影響する病気です。
<皮膚筋炎/多発性筋炎>の治療法は?
<皮膚筋炎/多発性筋炎(dermatomyositis / polymyositis, DM/PM)>の治療法は以下のように整理されます。
🔹治療の基本
- 副腎皮質ステロイド(第一選択薬)
- プレドニゾロンを中心に使用。
- 筋力の改善や炎症の抑制に有効。
- 初期は高用量投与し、症状や検査値(CK値)の改善に応じて漸減。
- 免疫抑制薬(ステロイド抵抗性や副作用対策として併用)
- メトトレキサート(MTX)
- アザチオプリン
- ミコフェノール酸モフェチル(MMF)
- タクロリムス / シクロスポリン(カルシニューリン阻害薬)
- シクロホスファミド(重症例で使用)
- 生物学的製剤/分子標的薬
- リツキシマブ(B細胞標的)
- トファシチニブ(JAK阻害薬、臨床試験・症例報告あり)
- ベリムマブ(補助的に研究段階)
- 静注免疫グロブリン療法(IVIG)
- ステロイド抵抗性の皮膚症状や筋炎に有効。
- 皮膚筋炎においてFDA承認あり。
🔹合併症ごとの対応
- 間質性肺疾患(ILD)合併:タクロリムス、シクロスポリン、シクロホスファミドが有効。
- 悪性腫瘍合併:基礎疾患の治療と並行して腫瘍治療を行う。皮膚筋炎は悪性腫瘍のリスクが高い。
- 心筋炎・嚥下障害:集学的管理(心不全治療、リハビリ、栄養サポート)。
🔹支持療法
- リハビリテーション(筋力回復、関節拘縮予防)
- 栄養サポート(嚥下障害や筋力低下による栄養不良に対応)
- 感染予防(免疫抑制療法中は重要)
✅ まとめると、治療の基本は「ステロイド+免疫抑制薬」、難治例では IVIGや生物学的製剤 が用いられます。合併症(特に間質性肺疾患や悪性腫瘍)の管理も重要です。
<皮膚筋炎/多発性筋炎>の日常生活の注意点
<皮膚筋炎/多発性筋炎(Dermatomyositis/Polymyositis)>の日常生活の注意点について整理します。これらは自己免疫性炎症性筋疾患であり、筋力低下や全身の炎症に加えて、皮膚症状や内臓病変を伴うことがあります。そのため、生活上の工夫がとても重要です。
🏠 日常生活の注意点
1. 体力・運動
- 無理な運動は避ける:筋肉炎症が強い時期は安静が必要。過度の運動で筋障害が進行することがある。
- リハビリ運動:病状が落ち着いたら、理学療法士の指導のもとで軽い筋力トレーニングやストレッチを行い、筋萎縮や関節拘縮を予防。
- 疲労の管理:筋肉疲労や倦怠感が強い場合は休息を優先する。
2. 日常動作
- 転倒防止:筋力低下で転びやすいため、手すりや滑り止めマットの設置が有効。
- 補助具の活用:杖や装具を使用して移動を安全に行う。
3. 皮膚症状への配慮(皮膚筋炎の場合)
- 紫外線対策:日光で皮疹が悪化するため、日焼け止め・帽子・長袖着用が必須。
- 皮膚の保湿:乾燥やかゆみを防ぐため保湿剤を使用。
4. 感染症予防
- 副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を使用するため、免疫力が低下。
- 手洗い・うがいの徹底、人混みを避ける、ワクチン接種(医師と相談)を活用。
5. 食事
- バランスのよい食事:タンパク質を適度に摂取して筋肉維持。
- 副作用対策:ステロイド使用では高血糖・骨粗鬆症・胃潰瘍のリスクがあるため、
- 塩分控えめ
- カルシウム・ビタミンD補給
- 胃粘膜保護(処方薬に従う)
- 嚥下障害がある場合:とろみをつける、軟らかい食事に工夫。
6. 精神的ケア
- 慢性疾患のため、気分の落ち込みや不安が生じやすい。
- 医療チーム・家族・患者会のサポートを利用することが有益。
7. 定期的な通院・検査
- 肺(間質性肺炎)、心臓、腎臓などの合併症を早期発見するため、定期的な血液検査・CT・筋電図・筋力測定が必要。
✅ まとめると、
「筋肉を守るための運動管理、皮膚症状への紫外線対策、感染症予防、副作用に対応した食生活、定期的な検査と心身のサポート」が日常生活での大切なポイントです。