天疱瘡

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目次

<天疱瘡>はどんな病気?

<天疱瘡(てんぽうそう、Pemphigus)>は、皮膚や粘膜に水ぶくれ(水疱)やびらんができる自己免疫性の難病です。自分の免疫が誤って皮膚の細胞同士の結びつきを壊すことによって起こります。


🔬【病態の概要】

  • 本来、皮膚の表皮細胞は**デスモグレイン(Desmoglein)**というタンパク質によってしっかり結びついています。
  • 天疱瘡では、自分の免疫がデスモグレイン1や3に対する自己抗体を作ってしまい、細胞同士の結合が破壊されてしまいます。
  • その結果、皮膚や粘膜がはがれて、水疱(=水ぶくれ)やびらん(=ただれ)になります。

🧪【種類と特徴】

種類抗体の標的主な症状
尋常性天疱瘡デスモグレイン3(+1)口の中のただれ+皮膚の水疱
落葉状天疱瘡デスモグレイン1顔・体幹中心の浅い水疱や皮むけ
天疱瘡紅斑型Dsg1、Dsg3、あるいは他抗原尋常性と落葉状の中間型
IgA天疱瘡IgA抗体が関与小さな膿疱やかゆみが強い

🧍‍♂️【主な症状】

  • 皮膚や粘膜に痛みを伴う水疱・びらん
  • 特に**口の中(口腔粘膜)**に出やすい
  • 水疱は破れやすく、皮膚がむけやすい
  • 全身に広がると、重症感染や脱水の危険もある

🧬【原因】

  • 自己免疫疾患:自己抗体(主に抗デスモグレイン抗体)による
  • 遺伝要因:HLA型が関与しているとされる
  • 環境因子:薬剤(ペニシラミンなど)や感染症などが誘因になることも

🏥【診断方法】

  • 皮膚生検直接免疫蛍光法:表皮間のIgG沈着を確認
  • 血液検査:抗デスモグレイン1および3抗体を測定(ELISA)
  • ニコルスキー現象:皮膚をこすると水疱ができるか確認

💊【治療法】

  • ステロイド内服(プレドニゾロンなど)
  • 免疫抑制薬(アザチオプリン、シクロスポリンなど)
  • リツキシマブ(抗CD20抗体):効果が期待される新しい治療
  • ガンマグロブリン大量療法、血漿交換(重症例)

🧘‍♀️【日常生活の注意点】

  • 感染を防ぐため、清潔なスキンケア
  • 口腔ケアも重要(口内炎・びらん対策)
  • 日差しや摩擦を避ける
  • ステロイドの副作用対策(骨粗しょう症・糖尿病など)も併行して行う

✅【天疱瘡は指定難病】

日本では天疱瘡は厚生労働省の**指定難病(番号:52)**に指定されており、一定条件を満たせば医療費助成の対象です。

<天疱瘡>の人はどれくらい?

<天疱瘡(Pemphigus)>は非常にまれな自己免疫性皮膚疾患です。以下に日本および世界の患者数や有病率のデータを示します。


🇯🇵【日本における患者数】

  • 厚生労働省の「指定難病」情報(2023年時点)によると、
    • 天疱瘡全体の患者数:約1,000~2,000人程度
    • 年間の新規患者数は100~200人程度と推定されています。
    • 男女比はほぼ同等(やや女性が多いともされる)
    • 発症年齢のピークは40〜60歳代

🌍【世界における発生頻度】

  • 発症率(人口10万人あたりの年間新規患者数):
    • 欧米:約 0.5〜3人/10万人/年
    • 中東(特にイラン・イスラエルなど):5人/10万人/年と高め
  • 有病率(すでに患っている人の割合)
    • 一般的に:1〜5人/10万人
    • つまり、非常に稀な疾患(rare disease)に分類されます。

🔍 傾向と特徴

  • 尋常性天疱瘡が最も多く、天疱瘡全体の**約70〜80%**を占める
  • 特定のHLA遺伝子型(例:HLA-DRB1*0402など)を持つ人に発症しやすい傾向あり
  • 多くは慢性の経過をたどり、長期間の治療と経過観察が必要

✅ 補足

天疱瘡は難病のため、公的な統計や登録(例:難病情報センター)によって把握されており、患者数が比較的明確に把握されています。ただし、診断が難しいこともあるため、軽症例が見逃されている可能性もあります。

<天疱瘡>の原因は?

<天疱瘡(てんぽうそう、Pemphigus)>の原因は、自己免疫異常によって引き起こされる病態です。以下に詳しく説明します。


🔬【天疱瘡の原因】

🧪 1. 自己抗体の産生
  • 天疱瘡は、自己免疫疾患です。
  • 体の免疫が誤って、自分の皮膚や粘膜の細胞同士をつなぐタンパク質に抗体を攻撃してしまいます。
  • 主に標的になるのは:
タンパク質名働き関連する天疱瘡の型
デスモグレイン3(Dsg3)粘膜の接着分子尋常性天疱瘡(粘膜型)
デスモグレイン1(Dsg1)表皮の接着分子落葉状天疱瘡(皮膚型)

これらに対するIgG自己抗体が作られることで、細胞の接着が壊れて水疱やびらんができます。


🧬 2. 遺伝的素因
  • 特定の**HLA遺伝子型(例:HLA-DRB10402、HLA-DQB10503など)**を持つ人に多く発症する傾向があります。
  • ただし「遺伝病」ではなく、遺伝的なかかりやすさがあるという程度です。

🧯 3. 誘因・トリガー(引き金)
  • 以下のような外的要因がきっかけで発症・悪化することがあります:
誘因内容
薬剤ペニシラミン、ACE阻害薬、NSAIDs、ペニシリン系など
ウイルス感染単純ヘルペスウイルス、EBウイルスなどが報告あり
紫外線強い日光に当たることが悪化要因に
精神的ストレス発症や再燃の引き金となることがある
妊娠・手術ホルモン変化や外科的ストレスによる誘発が報告されている

🧭 補足

  • 天疱瘡は感染症ではありません
  • 周囲の人にうつることはありません
  • 遺伝病ではありませんが、家族内で発症することはまれにあります(主に遺伝的素因+環境要因の組み合わせ)。

<天疱瘡>は遺伝する?

<天疱瘡(Pemphigus)>は、直接的には遺伝しません
つまり、親が天疱瘡だからといって、必ず子どもに発症するような遺伝病ではありません


✅ 遺伝との関係(詳しく)

🧬 1. 「遺伝しないが、遺伝的素因はある」
  • 天疱瘡そのものが 親から子へ遺伝することはありません
  • しかし、**発症しやすくなる体質(素因)**は、家族間で共有されることがあります。
🔍 2. HLA遺伝子との関連
  • 特定のHLA(ヒト白血球抗原)タイプを持つ人に多く発症することが分かっています。
    • 例:
      • HLA-DRB1*0402
      • HLA-DQB1*0503
  • これらは、自己免疫反応の「起こりやすさ」に関与します。
  • ただし、HLAを持っていても発症しない人が大多数です。

🧾 結論

項目内容
遺伝病か?❌ いいえ(直接は遺伝しない)
家族内発症例△ まれにある(遺伝的素因の共有)
原因遺伝子❌ 明確な単一遺伝子はない
発症に必要な要因✅ 体質(素因)+ 環境(薬剤・感染・ストレスなど)

<天疱瘡>の経過は?

<天疱瘡(てんぽうそう、Pemphigus)>の経過は、治療前と治療後で大きく異なる自己免疫性の皮膚疾患です。
現在では適切な治療によって寛解(症状が治まる)できるケースも多いですが、慢性的な経過をたどることが一般的です。


🩺 主な経過の流れ

🧨 1. 初期症状(前駆期)
  • 口の中のびらん(ただれ)や潰瘍から始まることが多い。
  • 食事中の痛み、出血など。
  • 皮膚にはまだ明らかな症状が出ない場合が多い。

🔥 2. 進行期
  • 皮膚に水疱(水ぶくれ)やびらんが現れ、全身に広がる。
  • 自然に皮膚がむける「ニコルスキー現象」がみられる。
  • かゆみよりも痛みが強い
  • 二次感染(細菌感染)を起こすと重症化。

⚖ 3. 治療導入期
  • ステロイド(プレドニゾロンなど)や免疫抑制薬(アザチオプリン、ミコフェノール酸など)で治療開始。
  • 状況によっては入院が必要

🧘‍♀️ 4. 寛解維持期
  • 症状がコントロールされ、びらんや水疱が出なくなる
  • 薬を減量しながら、寛解を維持する。
  • ステロイドの副作用や再発に注意。

🔁 5. 再燃(再発)と寛解を繰り返すことも
  • ストレス・感染・薬剤などをきっかけに再燃することがある。
  • 長期にわたり慎重な治療継続が必要。

📊 予後(将来の見通し)

状態概要
昔(治療前)死亡率高く、難治性(10〜15%死亡)
現在(治療あり)多くは寛解が可能。死亡率は1〜5%未満まで低下
再発率高め(特に治療中断や急減で)
完全治癒数年かけて治療終了に至ることもあるが、まれに長期治療が必要

💡 ポイント

  • 経過は個人差が大きい
  • 長期にわたる治療と、副作用への対応が重要。
  • 寛解しても定期的な通院と再発チェックは不可欠。

<天疱瘡>の治療法は?

<天疱瘡(てんぽうそう)>の治療法は、主に免疫の異常反応を抑える治療が中心です。現在では有効な治療薬が複数あり、早期診断と適切な治療により寛解(症状が治まる状態)も期待できます


🩺 天疱瘡の主な治療法

1. 🧪 副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)
  • 最も基本的かつ効果的な治療。
  • 初期には中〜高用量で開始し、寛解後に徐々に減量
  • 長期使用で糖尿病、骨粗鬆症、感染症などの副作用に注意。

2. 💊 免疫抑制薬(併用療法)

ステロイドの効果を補い、副作用を減らす目的。

薬剤名特徴
アザチオプリン骨髄抑制などに注意。最も一般的な併用薬。
ミコフェノール酸モフェチル(MMF)副作用が比較的少ない。
シクロスポリン重症例や難治例で使用されることも。

3. 💉 リツキシマブ(抗CD20抗体)※重症例・難治例に有効
  • B細胞を標的とした生物学的製剤
  • ステロイドに反応しない重症例に効果あり。
  • 欧米では第一選択になるケースも増加中。
  • 日本でも保険適応あり(尋常性天疱瘡 など)。

4. 💉 免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)

  • 免疫調節作用あり。
  • 重症例や感染リスクの高い患者に用いられることがある。

5. 🔄 血漿交換療法(PE)
  • 血中の自己抗体を物理的に除去する方法。
  • 急速な効果が必要な重症例に限られる。

🧘‍♀️ 補助療法・管理

  • 感染症予防(特に皮膚の清潔管理)
  • 口腔ケア(粘膜病変がある場合)
  • 栄養管理(嚥下困難や粘膜びらんによる栄養不良を防ぐ)

🔄 寛解導入から維持へ

時期目標主な薬剤
寛解導入期症状を止めるステロイド+免疫抑制薬
維持期再発防止・副作用抑制免疫抑制薬の漸減、または継続投与
寛解達成後薬の中止または極少量維持慎重に漸減しながら定期通院

💡 最新動向

  • リツキシマブは今後の主流治療になる可能性あり。
  • 生物学的製剤によって、従来より少ない副作用でのコントロールが期待されています。

<天疱瘡>の日常生活の注意点

<天疱瘡>の日常生活では、皮膚・粘膜の保護と感染予防が最重要です。天疱瘡は自己免疫疾患であり、皮膚や粘膜に水ぶくれ(水疱)やびらんができやすく、そこから感染や栄養不良、生活の質の低下につながります。

以下に、日常生活での具体的な注意点をまとめます。


🛀 1. 皮膚・粘膜の保護とケア

  • 摩擦や圧迫を避ける服装・寝具
    • 柔らかい素材(綿など)で、ゆったりした服を選ぶ
    • 縫い目やタグの位置にも配慮
  • 皮膚の保湿をこまめに
    • 乾燥は水疱やびらんを悪化させます
  • 皮膚を清潔に保つ
    • 弱酸性石けんを使い、ぬるま湯でやさしく洗う
    • 傷がある部位はシャワーで流す程度に

🍽 2. 食事と口腔粘膜のケア

  • 刺激の強い食べ物は避ける
    • 熱すぎる/辛すぎる/塩辛い食事は避け、柔らかく冷ましたものを
  • 歯磨きはやさしく、柔らかい歯ブラシを使用
    • 口内のびらんや潰瘍を悪化させないため
  • 口腔内のうがい
    • 炎症予防に、ミルクベースのうがい薬や生理食塩水を使うと良い

🧘‍♂️ 3. 体調管理と免疫力の維持

  • 十分な睡眠とストレス管理
    • 疲労やストレスで悪化することがあるため
  • 風邪などの感染症予防
    • 手洗い・うがい・マスク着用、必要に応じてワクチン接種
  • 定期的な血液検査と副作用モニタリング
    • ステロイドや免疫抑制薬の副作用(糖尿病、骨粗鬆症、感染症)対策

🚫 4. 再発を防ぐために

  • 自己判断で薬を中断しない
    • 症状が落ち着いても、主治医の指示に従って減量・中止する
  • 定期受診を欠かさない
    • 再発の兆候(皮膚のピリピリ感や赤み)が出たら早めに相談

🧴 5. 外出・日常生活での工夫

  • 日焼け対策
    • 紫外線で皮膚が刺激されることもあるため、帽子や日焼け止めを活用
  • 転倒・打撲などの外傷を避ける
    • 高齢者では骨折リスクも高くなるので、安全な室内環境を整える

👪 周囲の人への理解と支援

  • 家族や職場に病気の性質を伝えておくことで、無理な要求を避けたり、支援を得やすくなります。
  • 特に入浴介助や食事準備などは、家族の協力が重要です。

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