レノックス・ガストー症候群(LGS)

脳神経 神経 指定難病  クッシング病 下垂体性ADH分泌異常症 下垂体性TSH分泌亢進症 下垂体性PRL分泌亢進症 下垂体前葉機能低下症 網膜色素変性症 マリネスコ・シェーグレン症候群 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症 脊髄空洞症 脊髄髄膜瘤 遺伝性ジストニア 神経フェリチン症 脳表ヘモジデリン沈着症 禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症  皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症 神経細胞移動異常症 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症 HDLS 前頭側頭葉変性症 ビッカースタッフ脳幹脳炎 BBE 痙攣重積型(二相性)急性脳症(AESD) 片側巨脳症 先天性大脳白質形成不全症 ドラベ症候群 海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん ミオクロニー欠神てんかん ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん レノックス・ガストー症候群 ウエスト症候群 指定難病
クッシング病 下垂体性ADH分泌異常症 網膜色素変性症 脊髄空洞症 下垂体前葉機能低下症 下垂体性PRL分泌亢進症 下垂体性TSH分泌亢進症 マリネスコ・シェーグレン症候群 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症 脊髄空洞症 脊髄髄膜瘤 遺伝性ジストニア 神経フェリチン症 脳表ヘモジデリン沈着症 禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症 神経細胞移動異常症 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症 HDLS 前頭側頭葉変性症 ビッカースタッフ脳幹脳炎 BBE 痙攣重積型(二相性)急性脳症(AESD) 先天性大脳白質形成不全症 ドラベ症候群 海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん  ミオクロニー欠神てんかん ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん レノックス・ガストー症候群 ウエスト症候群

目次

<レノックス・ガストー症候群>はどんな病気?

<レノックス・ガストー症候群>(英:Lennox–Gastaut syndrome, LGS)は、
小児期に発症する重症のてんかん症候群で、
👉 複数の発作型・特徴的な脳波・知的/発達の障害を三本柱とする疾患です。


  1. この病気を特徴づける「3つの柱」
    1. ① 複数の発作型が混在
    2. ② 特徴的な脳波所見
    3. ③ 知的障害・発達障害を伴う
  2. 発症年齢
  3. 原因
    1. ● 多様(単一原因ではありません)
  4. 経過の特徴
  5. 他の小児てんかんとの違い
  6. まとめ
  7. 📊 頻度の目安(疫学データ)
    1. ■ てんかん全体の中で
    2. ■ 一般人口あたりの頻度
  8. 🇯🇵 日本ではどれくらい?
  9. なぜ人数の幅が大きいのか
  10. まとめ
  11. 原因の全体像(要点)
  12. ① 脳の構造的・後天的障害(最も多い)
    1. ● 周産期・乳児期の脳障害
    2. ● 脳の先天奇形
    3. ● 脳炎・感染症
    4. ● 頭部外傷
  13. ② 乳児期てんかんからの移行
  14. ③ 遺伝的要因(近年とくに重要)
    1. ● 単一遺伝子異常が原因となる例
  15. ④ 原因不明(特発例)
  16. ⑤ なぜ同じ原因でもLGSになる人とならない人がいるのか
  17. まとめ
  18. 基本的な考え方
  19. ① 多くのケース:遺伝しない(最も一般的)
  20. ② 一部のケース:遺伝子異常が原因となる
    1. 関連が報告されている主な遺伝子
  21. ③ 「遺伝子異常がある」=「必ず遺伝する」ではない
  22. ④ 兄弟・将来の子どもへの影響は?
    1. ■ 兄弟へのリスク
    2. ■ 患者さん本人が将来、子どもをもつ場合
  23. ⑤ 遺伝子検査・遺伝カウンセリングは必要?
  24. まとめ
  25. 経過の全体像(要点)
  26. ① 発症前〜発症初期(乳幼児期~3–5歳)
    1. 背景
    2. 発症
  27. ② 小児期(学童期前後)
    1. 発作の推移
    2. 発達・行動
  28. ③ 思春期
    1. 発作型の変化
    2. 生活面
  29. ④ 成人期以降
    1. 発作
    2. 生活・社会参加
  30. 予後(見通し)
    1. 予後に影響する因子
  31. 他の小児てんかんとの比較
  32. まとめ
  33. 治療の基本方針(要点)
  34. ① 薬物療法(治療の中心)
    1. 第一選択・基盤薬
    2. 併用で有効性が示されている薬
    3. 原則避けたい薬
  35. ② 食事療法(重要な非薬物治療)
    1. ケトン食療法
  36. ③ デバイス治療
    1. 迷走神経刺激療法(VNS)
  37. ④ 外科的治療(適応が限られる)
  38. ⑤ 生活・発達支援(治療の一部)
  39. まとめ
  40. ① 発作を起こしにくくする生活管理(最重要)
  41. ② 転倒・外傷を防ぐ安全対策(非常に重要)
  42. ③ 学校・園・施設での配慮(必須)
  43. ④ 発達・心理面への支援
  44. ⑤ 思春期・成人期の注意点
  45. ⑥ 緊急時への備え
  46. まとめ(チェックリスト)

この病気を特徴づける「3つの柱」

① 複数の発作型が混在

以下の発作が同一患者さんに併存することが多いです。

  • 強直発作(体が急に硬直する)
  • 脱力発作(転倒発作)(力が抜けて突然倒れる)
  • 非定型欠神発作(反応が鈍く、長めに続く)
  • ミオクロニー発作
  • 全身強直間代発作

👉 特に転倒を伴う発作が多く、外傷リスクが高い点が重要です。


② 特徴的な脳波所見

  • 覚醒時脳波で
    全般性の徐棘徐波(slow spike-and-wave)
    約1.5~2.5Hz)が持続的に出現
  • 睡眠中には
    全般性の速波(paroxysmal fast activity)

👉 この脳波パターンは、診断の決め手となります。


③ 知的障害・発達障害を伴う

  • 多くの患者さんで
    • 知的発達の遅れ
    • 学習障害
    • 注意・行動の問題
      がみられます
  • 発作頻度が高いほど、発達への影響が大きくなりやすいとされています

発症年齢

  • 3~5歳頃に発症することが多い
  • それ以前に
    • 乳児てんかん性スパズム
    • 重症乳児てんかん
      などを経験している場合もあります

原因

● 多様(単一原因ではありません)

  • 症候性(原因が分かる)
    • 脳奇形
    • 低酸素性虚血性脳症
    • 脳炎・外傷
    • 遺伝子異常(例:SCN1A など)
  • 原因不明(特発性)

👉 約70~80%で何らかの基礎脳障害や遺伝的背景が関与するとされます。


経過の特徴

  • 慢性かつ治療抵抗性になりやすい
  • 多くの患者さんで
    • 発作が長期に持続
    • 抗てんかん薬の多剤併用が必要
  • 成人期まで持ち越す例が多い

他の小児てんかんとの違い

疾患特徴
ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん比較的予後良好例あり
レノックス・ガストー症候群重症・治療抵抗性が多い
小児欠神てんかん予後良好

まとめ

  • <レノックス・ガストー症候群>は
    小児期発症の重症てんかん症候群
  • 複数の発作型・特徴的脳波・知的障害が三本柱
  • 治療抵抗性になりやすく、長期管理が必要
  • 発作対策と同時に
    安全対策・発達支援・生活支援が不可欠

<レノックス・ガストー症候群>の人はどれくらい?

<レノックス・ガストー症候群>(Lennox–Gastaut syndrome:LGS)は、
てんかんの中でも比較的まれですが、重症例として重要な位置づけ
のてんかん症候群です。


📊 頻度の目安(疫学データ)

■ てんかん全体の中で

  • てんかん患者全体の約1~4%
  • **小児てんかんでは約3~10%**を占めると報告されています

👉 「数は多くないが、小児の重症てんかんでは代表的な疾患」です。


■ 一般人口あたりの頻度

  • 推定有病率:
    人口10万人あたり 約1~3人
  • 年間発症率:
    10万人あたり 約0.1~0.3人

とされ、**希少疾患(指定難病相当の頻度)**に分類されます。


🇯🇵 日本ではどれくらい?

日本では全国的な患者登録はありませんが、推計としては以下が用いられます。

  • 日本のてんかん患者数:約 100万人前後
  • その 1~4% がLGSと仮定すると、

👉 約1万人~4万人程度
が<レノックス・ガストー症候群>である可能性があります。

※ 実際には

  • 他の重症てんかん症候群として診断されている例
  • 乳児期発症てんかんから移行した例
    も含まれるため、正確な人数の把握は困難です。

なぜ人数の幅が大きいのか

  1. 診断が経過とともに確定する
    • 乳児期は別のてんかんとして始まり
    • 数年後にLGSの特徴がそろうケースが多い
  2. 原因が多様
    • 脳障害由来
    • 遺伝子異常
    • 原因不明
      が混在します。
  3. 成人まで持ち越される
    • 小児期発症ですが、成人患者さんも多数存在します。

まとめ

  • <レノックス・ガストー症候群>は
    てんかん全体の1~4%
  • 小児てんかんでは
    3~10%と比較的高い割合
  • 一般人口では
    10万人に1~3人程度
  • 日本では
    1~4万人規模と推定
  • 数は少ないが
    医療・福祉的負担の大きい重要な疾患

<レノックス・ガストー症候群>の原因は?

<レノックス・ガストー症候群>(Lennox–Gastaut syndrome:LGS)**は、
単一の原因で起こる病気ではありません
現在の医学では、**さまざまな脳の障害や遺伝的背景を共通の終点として発症する「症候群」**と考えられています。


原因の全体像(要点)

  • 約70~80%で何らかの原因が特定できる
  • 脳の広範な機能異常が共通基盤
  • 後天的原因+先天的(遺伝・発達)原因の両方が関与
  • 残り 20~30%は原因不明(特発例)

① 脳の構造的・後天的障害(最も多い)

● 周産期・乳児期の脳障害

  • 低酸素性虚血性脳症(出生時仮死など)
  • 早産に伴う脳障害
  • 重症新生児仮死

● 脳の先天奇形

  • 皮質形成異常(多小脳回、滑脳症 など)
  • 脳梁欠損
  • 半球形成異常

● 脳炎・感染症

  • ウイルス性脳炎
  • 細菌性髄膜炎

● 頭部外傷

  • 乳幼児期の重症頭部外傷

👉 これらは脳全体に広くダメージを与えやすく、
LGSの特徴である全般性発作・重度脳波異常につながります。


② 乳児期てんかんからの移行

  • 乳児てんかん性スパズム(ウエスト症候群)
  • 重症乳児てんかん

これらの約20~40%が、
数年後にレノックス・ガストー症候群へ移行すると報告されています。

👉 「病型の進化(epileptic encephalopathyの連続性)」が重要な概念です。


③ 遺伝的要因(近年とくに重要)

● 単一遺伝子異常が原因となる例

以下のような遺伝子が報告されています。

  • SCN1A
  • SCN2A
  • STXBP1
  • CDKL5
  • CHD2
  • KCNQ2 など

👉 これらは
脳の電気信号の制御に関わる遺伝子で、
変異により広範なてんかん活動が生じます。

※ ただし、
「LGS=遺伝病」ではありません
遺伝子異常が原因となるのは一部の症例です。


④ 原因不明(特発例)

  • 画像検査・遺伝子検査を行っても
    明確な原因が見つからない例が約20~30%あります。
  • しかし近年は、
    • 遺伝子解析の進歩
    • 高解像度MRI
      により、「原因不明」が減少傾向にあります。

⑤ なぜ同じ原因でもLGSになる人とならない人がいるのか

これは現在も研究途上ですが、

  • 脳障害の広がり
  • 障害を受けた発達時期
  • 遺伝的な「発作を起こしやすさ」
  • 乳児期の発作コントロール状況

などが組み合わさり、
👉 重症の全般性てんかん像(LGS)に至るかどうかが決まる
と考えられています。


まとめ

  • <レノックス・ガストー症候群>は
    多因子性のてんかん症候群
  • 主な原因は
    • 乳幼児期の脳障害
    • 脳奇形
    • 乳児期てんかんからの移行
    • 一部の遺伝子異常
  • 約70~80%で原因が推定可能
  • 原因不明例も一定数存在するが、
    診断技術の進歩で減少傾向

<レノックス・ガストー症候群>は遺伝する?

👉 「多くの場合は遺伝しません」
👉 ただし 「一部の患者さんでは遺伝子異常が原因となることがあります」

というのが、現在の医学的な整理です。


基本的な考え方

**<レノックス・ガストー症候群>(Lennox–Gastaut syndrome:LGS)**は、
**単一の遺伝病ではなく、さまざまな原因が集まって成立する「症候群」**です。

そのため、

  • 親から子へ必ず伝わる病気ではありません
  • 多くの患者さんでは、遺伝しない原因(脳障害など)が関与しています

① 多くのケース:遺伝しない(最も一般的)

LGS患者さんの**約70~80%**では、

  • 乳幼児期の脳障害
  • 脳奇形
  • 脳炎・低酸素障害
  • 乳児てんかんからの移行

といった後天的・非遺伝的な要因が原因です。

👉 この場合、
兄弟や将来の子どもに同じ病気が遺伝する可能性は非常に低い
と考えられます。


② 一部のケース:遺伝子異常が原因となる

近年の研究で、LGSの一部では
特定の遺伝子変異が原因となることが分かってきました。

関連が報告されている主な遺伝子

  • SCN1A
  • SCN2A
  • STXBP1
  • CDKL5
  • CHD2
  • KCNQ2 など

これらは、

  • 脳の電気活動
  • 神経細胞間の情報伝達
    に関わる遺伝子です。

ただし重要な点として、

  • 多くは新生突然変異(de novo)
  • 両親は遺伝子変異を持っていない

というケースが大半です。

👉 この場合も、
家族内で繰り返し起こる可能性は低いとされています。


③ 「遺伝子異常がある」=「必ず遺伝する」ではない

  • 遺伝子異常が原因であっても、
    • 常染色体優性・劣性といった
      単純な遺伝形式をとらないことが多い
  • 「LGSそのもの」が遺伝する、というより
    「重症てんかんになりうる体質」が偶発的に生じる
    という理解が近いです。

④ 兄弟・将来の子どもへの影響は?

■ 兄弟へのリスク

  • LGSを発症する確率は
    一般人口とほぼ同程度、またはわずかに高い程度
  • 明確な遺伝性疾患とは異なり、
    高い再発率は報告されていません

■ 患者さん本人が将来、子どもをもつ場合

  • 原因が脳障害由来の場合:
    👉 遺伝リスクはほぼありません
  • 遺伝子異常が同定されている場合:
    👉 遺伝形式によりリスクは異なるため、
    個別評価(遺伝カウンセリング)が推奨されます

⑤ 遺伝子検査・遺伝カウンセリングは必要?

  • 全員に必須ではありません
  • ただし、以下の場合は検討されます。
    • 明らかな脳障害がない
    • 乳児期早期から重症てんかん
    • 家族内に他の重症てんかん患者さんがいる
    • 将来の妊娠・出産を考えている

まとめ

  • <レノックス・ガストー症候群>は
    原則として遺伝病ではない
  • 多くは
    非遺伝性の脳障害が原因
  • 一部で
    **遺伝子異常(多くは新生突然変異)**が関与
  • 家族内で繰り返すリスクは
    全体として低い
  • 不安がある場合は
    遺伝カウンセリングで個別評価が可能

<レノックス・ガストー症候群>の経過は?

**<レノックス・ガストー症候群>(Lennox–Gastaut syndrome:LGS)**は、
小児期に発症し、長期にわたって持続しやすい重症てんかん症候群です。
多くの場合、発作・発達・生活機能の3点が年齢とともに変化していきます。


経過の全体像(要点)

  • 慢性経過をとりやすく、治療抵抗性が多い
  • 発作型は年齢とともに変化する
  • 知的・発達・行動面の課題が長期に続くことが多い
  • 成人期まで医療・生活支援が必要になる例が多い

① 発症前〜発症初期(乳幼児期~3–5歳)

背景

  • 乳児期に
    • 乳児てんかん性スパズム(ウエスト症候群)
    • 重症乳児てんかん
      を経験していることがあります。

発症

  • 3~5歳頃にLGSの特徴がそろい始めます。
  • 発作は多彩で、
    • 強直発作
    • 脱力(転倒)発作
    • 非定型欠神発作
      が目立ちます。

👉 転倒発作が多く、外傷リスクが高い時期です。


② 小児期(学童期前後)

発作の推移

  • 発作は頻回かつ多種類になりやすく、
    • 複数の抗てんかん薬の併用
    • ケトン食療法
      が必要になることが多いです。
  • 完全な発作消失は少数にとどまります。

発達・行動

  • 多くの患者さんで
    • 知的発達の遅れ
    • 学習障害
    • 注意・行動の問題
      が明らかになります。
  • 発作頻度が高いほど、発達への影響が強くなりやすいとされています。

③ 思春期

発作型の変化

  • 脱力発作・非定型欠神発作は減少することがあります。
  • 一方で、
    • 強直発作(特に睡眠中)
    • 全身強直間代発作
      残存または目立つことがあります。

生活面

  • 自立に向けた支援が重要になりますが、
    学習・行動・安全面の配慮が引き続き必要です。

④ 成人期以降

発作

  • 多くの方で
    • 何らかの発作が持続
    • 抗てんかん薬の継続
      が必要です。
  • 一部では発作頻度が軽減し、安定することもあります。

生活・社会参加

  • 知的・発達障害の程度により、
    • 一般就労が可能な方
    • 就労支援・福祉的支援が必要な方
      に分かれます。
  • 生涯にわたる医療・福祉連携が重要です。

予後(見通し)

  • 治療抵抗性が多い
  • 完全寛解は少数(約5~10%程度)
  • ただし、
    • 発作頻度の低下
    • 生活の安定
      は多くの方で目指せます。

予後に影響する因子

  • 原因(重い脳障害・遺伝子異常がある場合は不利)
  • 発症年齢が早いほど不利
  • 発作頻度・重積の有無
  • 早期からの包括的治療・支援の有無

他の小児てんかんとの比較

  • ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん:
    👉 成長とともに改善する例が比較的多い
  • レノックス・ガストー症候群
    👉 長期にわたる管理が必要なことが多い

まとめ

  • <レノックス・ガストー症候群>は
    小児期発症で慢性経過をとる重症てんかん症候群
  • 発作型は年齢とともに変化するが、発作自体は持続しやすい
  • 知的・行動・生活面への影響が長期に及ぶ
  • 早期からの
    薬物・食事療法+発達・生活支援の併用
    が、生活の質を左右します。

<レノックス・ガストー症候群>の治療法は?

**<レノックス・ガストー症候群>(Lennox–Gastaut syndrome:LGS)**は、
治療抵抗性になりやすい重症てんかん症候群のため、
👉 薬物療法を軸に、食事療法・デバイス治療・外科的治療を組み合わせた多面的治療が行われます。


治療の基本方針(要点)

  • 完全な発作消失は少数
  • 目標は
    • 転倒を伴う発作(脱力・強直)の減少
    • 重積・外傷の予防
    • 生活の安定とQOL向上
  • 早期からの併用療法が一般的です。

① 薬物療法(治療の中心)

第一選択・基盤薬

  • バルプロ酸
    多彩な発作型に幅広く有効で、基盤薬として用いられることが多いです。

併用で有効性が示されている薬

  • ラモトリギン
    非定型欠神・脱力発作に有効。バルプロ酸との併用で効果増強が期待されます。
  • クロバザム
    強直・脱力発作の減少に有効。眠気などに注意。
  • ルフィナミド
    脱力発作(転倒)を減らす目的で使用されます。
  • トピラマート
    併用薬として選択されます。
  • カンナビジオール
    ドロップアタックの減少が報告され、近年重要な選択肢です。
  • フェンフルラミン
    一部症例で有効性が示されています(適応・副作用に注意)。

多剤併用が一般的で、効果と副作用のバランスを見ながら調整します。

原則避けたい薬

  • カルバマゼピン
  • フェニトイン
    → 発作悪化の報告があり、通常は避けます。

② 食事療法(重要な非薬物治療)

ケトン食療法

  • 薬剤抵抗性LGSで有効性が高い
  • 発作頻度を30~50%以上減少させる例が報告
  • 専門施設での厳密管理が必要ですが、早期導入が有益な場合があります。

③ デバイス治療

迷走神経刺激療法(VNS)

  • 薬剤抵抗性例で検討
  • 発作頻度の中等度減少、重積の抑制が期待されます
  • 脳切除が難しい全般性てんかんで有用な選択肢です。

④ 外科的治療(適応が限られる)

  • 脳切除術
    明確な局在病変がある一部症例のみ。
  • 脳梁離断術
    転倒発作(ドロップアタック)の減少目的で行われることがあります。

⑤ 生活・発達支援(治療の一部)

  • ヘルメットなど外傷予防
  • 療育・特別支援教育
  • 行動・心理支援
    医療と福祉の連携が不可欠です。

まとめ

  • LGS治療は
    多剤併用+食事療法+デバイス/外科の組み合わせ
  • 転倒発作の抑制が最重要目標
  • 完治よりも長期安定とQOL向上を目指します
  • 早期・包括的治療が予後に影響します

<レノックス・ガストー症候群>の日常生活の注意点

**<レノックス・ガストー症候群>(LGS)**では、
発作の予防・転倒などの事故防止・発達と生活の質(QOL)を守る配慮を、日常生活の中で同時に行うことが重要です。


① 発作を起こしにくくする生活管理(最重要)

  • 規則正しい睡眠
    睡眠不足や就寝時刻の乱れは発作を増やします。毎日同じ時間に就寝・起床する習慣を整えてください。
  • 体調不良の早期対応
    発熱・感染症・強い疲労は発作悪化の原因になります。無理をせず、早めに休養と受診を検討してください。
  • 確実な服薬管理
    飲み忘れは発作増悪の大きな要因です。自己判断での中断・減量は避け、変更は必ず主治医と相談してください。
  • 誘因の把握
    光刺激、過換気、精神的ストレスなど、個々の誘因を把握し回避します。

② 転倒・外傷を防ぐ安全対策(非常に重要)

LGSでは脱力発作・強直発作による突然の転倒が起こり得ます。

  • ヘルメット(保護帽)の使用
    転倒発作がある場合は有効です。
  • 住環境の調整
    家具の角を保護、滑り止め、硬い床での対策を行ってください。
  • 水・高所での見守り
    入浴・水遊び・階段・遊具は必ず見守りを。単独入浴は避けてください。

③ 学校・園・施設での配慮(必須)

  • 発作の正しい理解を共有
    「怠け」「わざと」ではなく、病気による一過性の発作であることを周囲に伝えます。
  • 活動の調整
    走る・登るなど転倒リスクの高い活動は、発作状況に応じて調整します。
  • 学習・生活の合理的配慮
    注意・集中が続きにくいことがあります。短時間学習、繰り返し説明、プリント併用などが有効です。

④ 発達・心理面への支援

  • 知的・発達の遅れや行動面の課題を伴うことがあります。
    早期療育・特別支援教育・心理支援の併用が大切です。
  • 叱責よりも成功体験を積み重ねる関わりを心がけてください。

⑤ 思春期・成人期の注意点

  • 発作が続く場合が多く、生活管理(睡眠・服薬・安全対策)の継続が必要です。
  • 自転車・運転・就労は、法令と主治医の判断に従って段階的に検討します。
  • 長期的な医療・福祉・教育の連携が重要です。

⑥ 緊急時への備え

  • 発作時対応マニュアル(救急要請の目安、使用中の頓用薬)を家族・学校・施設で共有してください。
  • 発作日誌をつけ、頻度や誘因、薬の影響を把握すると治療調整に役立ちます。

まとめ(チェックリスト)

  • 規則正しい睡眠・確実な服薬
  • 転倒対策(ヘルメット・住環境調整)
  • 学校・施設との情報共有と合理的配慮
  • 早期からの発達・心理支援
  • 緊急時対応の共有と記録

<レノックス・ガストー症候群>の最新情報

ニューロモデュレーション(VNS/DBS/RNS)の位置づけがより具体化(2025)

新しい抗発作薬による持続的な発作抑制(場合により発作消失)が報告され始めている(2025総説)

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