シェーグレン症候群

指定難病
細胞 細胞間基質 肺胞 自己免疫性疾患 自己免疫性 核 ゴルジ体 水泡 水 細胞間隙 シェーグレン症候群 特発性血小板減少性紫斑病

目次

<シェーグレン症候群>はどんな病気?

<シェーグレン症候群>とはどんな病気?

シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome, SS)は、自己免疫性疾患の一つで、体の免疫システムが誤って自分自身の外分泌腺(特に唾液腺・涙腺)を攻撃することによって起こります。

その結果、主に以下の症状が現れます:

  • 口の乾燥(ドライマウス):唾液の分泌が減ることで、話しにくさ、嚥下困難、虫歯や口内炎のリスク増加。
  • 目の乾燥(ドライアイ):涙の分泌が減少し、目の異物感、痛み、角膜障害が起きやすくなる。

また、全身性の病気でもあり、次のような症状や合併症もあります:

  • 関節痛・関節炎
  • 皮膚の乾燥、発疹
  • 呼吸器や消化管の乾燥(咳、嚥下障害)
  • 腎臓や肝臓への障害
  • リンパ腫(悪性リンパ腫)のリスク増加

原因

  • 正確な原因は不明ですが、遺伝的素因と**環境因子(ウイルス感染など)**が関与すると考えられています。
  • 女性に圧倒的に多く(男女比は約9:1)、発症のピークは40〜60歳です。

分類

  • 一次性シェーグレン症候群:単独で発症するタイプ。
  • 二次性シェーグレン症候群:全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチ、強皮症など他の膠原病に合併して発症するタイプ。

まとめると、シェーグレン症候群は「乾燥症状」を中心としながらも、全身に影響を及ぼしうる慢性の自己免疫疾患です。

<シェーグレン症候群>の人はどれくらい?

<シェーグレン症候群>(Sjögren’s syndrome, SS)は比較的まれな自己免疫疾患ですが、自己免疫疾患の中では頻度の高い部類に入ります。

有病率・患者数

  • 世界全体
    推定有病率は 人口の0.1〜0.6% とされ、自己免疫疾患の中では関節リウマチや全身性エリテマトーデスに次いで多い病気の一つです。
  • 日本
    厚生労働省の報告では、約7〜8万人が医療機関で診断・登録されているとされます。ただし、実際には軽症例や未診断例を含めると 数十万人規模 に及ぶと推定されています。
  • 性別比
    女性に圧倒的に多く、女性:男性 = 約9:1。特に40〜60歳代の女性に好発します。

補足

シェーグレン症候群は単独で発症することもあれば(原発性)、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど他の自己免疫疾患に合併することも多い(続発性)ため、診断される人数は背景疾患によっても左右されます。

<シェーグレン症候群>の原因は?

<シェーグレン症候群>の原因は、自己免疫の異常が中心ですが、まだ完全には解明されていません。現在分かっているのは以下のような要因が複合的に関わるということです。


1. 遺伝的要因

  • 特定の HLA遺伝子(例:HLA-DR、HLA-DQ) が関与していることが分かっています。
  • 家族内に自己免疫疾患がある場合、発症リスクがやや高まるとされます。

2. 免疫学的要因

  • 自己免疫反応により、涙腺や唾液腺の細胞が攻撃されて炎症・破壊されます。
  • 特に 自己抗体(抗SSA/Ro抗体、抗SSB/La抗体) が高頻度で検出されます。
  • 涙腺・唾液腺にリンパ球が浸潤し、腺の機能が低下 → 乾燥症状(ドライアイ・ドライマウス)が出現。

3. 環境要因

  • ウイルス感染(例:エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、HCVなど)が引き金になる可能性。
  • 喫煙やホルモン環境(特に女性ホルモンの影響)が発症に関与していると考えられています。

4. ホルモン要因

  • 女性に多いことから、エストロゲンの減少(閉経前後) が免疫バランスに影響していると推定されています。

✅ まとめると、
シェーグレン症候群の原因は 遺伝的素因 × 環境因子(感染・ホルモンなど) × 自己免疫の異常 が重なって発症する多因子性疾患と考えられています。

<シェーグレン症候群>は遺伝する?

<シェーグレン症候群>は 「直接遺伝する病気」ではありません
つまり、親がシェーグレン症候群だから必ず子どもも発症する、というものではありません。

ただし以下のように「遺伝的素因」はあります。


🔹 遺伝の影響

  • HLA-DR、HLA-DQ などの免疫関連遺伝子 が関わっていることが知られています。
  • 家族内に自己免疫疾患(例:全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、橋本病など)があると、発症リスクがやや高くなる傾向があります。
  • しかし、同じ遺伝子を持っていても 必ず発症するわけではなく、環境要因(感染、ホルモン変化、ストレスなど)が加わることで発症につながります。

🔹 家族発症の頻度

  • 家族内発症はあるものの、一般的には稀です。
  • 一卵性双生児でも、両方が発症する率はそれほど高くありません。

✅ まとめ

  • シェーグレン症候群は 単純な遺伝病ではなく、多因子性の自己免疫疾患
  • 遺伝要素はあるが、それだけでは発症せず、環境やホルモンなど複数の要因が重なって初めて発症します。

<シェーグレン症候群>の経過は?

<シェーグレン症候群>の経過は、ゆっくり進行する慢性の自己免疫疾患であり、症状の強さや進み方は人によって大きく異なります。
典型的には以下のような段階をたどることが多いです。


🔹 経過の流れ(時系列イメージ)

① 前駆期(発症前~初期)

  • 若い頃から原因不明の疲労感・関節痛・ドライアイ・ドライマウスが出ることがある。
  • この段階では「更年期症状」や「ドライアイ症候群」と見過ごされることも多い。
  • 血液検査ではすでに 抗SSA抗体 / 抗SSB抗体 が陽性となる場合がある。

② 典型的症状の出現期

  • 口腔乾燥(唾液腺障害):虫歯が増える、パンやクラッカーが食べにくい、口内炎が多発。
  • 眼の乾燥(涙腺障害):目のゴロゴロ感、異物感、視力低下、重症では角膜障害。
  • この頃からリウマチ様の関節痛・全身倦怠感も目立つ。

③ 慢性期(進行期)

  • 症状は慢性的に続き、乾燥症状が生活の質(QOL)に大きく影響する。
  • 一部の患者では以下のような全身性臓器障害が出現:
    • 関節炎(リウマチ様)
    • 皮膚(紫斑、乾燥)
    • 肺(間質性肺炎)
    • 腎臓(間質性腎炎)
    • 末梢神経障害(しびれ、痛み)

④ 合併症リスク期

  • 長期経過すると、一部の患者で 悪性リンパ腫(特にMALTリンパ腫) の発症リスクが高まる。
    • 一般人口より 5〜10倍程度リスク上昇と報告。
  • 進行例では臓器障害により、生活や予後に影響を及ぼす場合がある。

🔹 経過の特徴まとめ

  • 進行はゆるやかで、数年単位で悪化することが多い。
  • 軽症のまま一生を過ごす人も多い
  • 一部の人だけが臓器障害や悪性リンパ腫へ進展する。
  • 乾燥症状は早期から強く出やすいが、臓器障害は中~後期に出やすい。

<シェーグレン症候群>の治療法は?

<シェーグレン症候群>の治療法は、根治療法はまだ確立されていませんが、症状を和らげて生活の質(QOL)を保つことを目標としています。大きく分けると 乾燥症状の対症療法全身性の病変への治療 の2つがあります。


🔹 1. 乾燥症状への治療

  • 口の乾燥(口腔乾燥)
    • 人工唾液スプレーや含嗽剤
    • 唾液分泌促進薬(セビメリン塩酸塩、ピロカルピン塩酸塩)
    • 口腔ケア(フッ素入り歯磨き、定期的な歯科受診)
  • 目の乾燥(ドライアイ)
    • 人工涙液やヒアルロン酸点眼
    • 免疫抑制点眼薬(シクロスポリン点眼薬など)
    • 涙点プラグによる涙の排出防止
  • 皮膚や気道の乾燥
    • 保湿剤の使用
    • 加湿器による環境改善

🔹 2. 全身性病変への治療

シェーグレン症候群は、乾燥症状だけでなく 関節、腎臓、肺、神経、血管 などに炎症を起こすことがあります。これらに対しては:

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):関節痛や筋肉痛の緩和
  • 副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど):全身性の炎症や臓器障害がある場合
  • 免疫抑制薬(メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリンなど):ステロイドの減量や臓器障害のコントロール
  • 生物学的製剤(リツキシマブなど):難治例でB細胞の異常を抑える目的

🔹 3. 合併症への対応

  • **リンパ腫(悪性リンパ腫)**のリスクが高まるため、定期的な血液検査・画像検査が必要
  • 虫歯や口腔感染:口腔ケアを徹底
  • 二次性疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)がある場合はその治療を併用

✅まとめると、
シェーグレン症候群の治療は「乾燥症状に対するケア」と「全身の臓器障害のコントロール」が中心で、ステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤が使われることもあります。早期からのセルフケアと定期的な医師のフォローアップがとても大切です。

<シェーグレン症候群>の日常生活の注意点

💡 シェーグレン症候群の日常生活の注意点

  1. 口腔ケア
    • 唾液が減るため、むし歯や口腔内感染(カンジダなど)が起こりやすいです。
    • 水分をこまめに摂り、人工唾液スプレーや保湿ジェルを利用すると楽になります。
    • 無糖ガムやキシリトールタブレットで唾液分泌を促すことも有効です。
    • 定期的に歯科受診をして口腔ケアを徹底しましょう。
  2. 目の乾燥対策
    • 人工涙液を1日数回点眼して目の潤いを保つことが大切です。
    • パソコンやスマホを長時間使用するときは「まばたき」を意識する。
    • 加湿器を使って室内の湿度を保ちましょう。
    • コンタクトレンズは乾燥を悪化させる場合があるため、眼科で相談を。
  3. 乾燥から体を守る工夫
    • 皮膚も乾燥しやすいため、保湿クリームを毎日使用。
    • 鼻の乾燥が強い場合は、ワセリンや専用の保湿ジェルを少量使うとよいです。
  4. 感染症への注意
    • 唾液や涙の抗菌作用が弱まるため、風邪や口腔内感染が起きやすい。
    • 手洗い・うがいの習慣を徹底し、体調の変化を早めに医師へ相談しましょう。
  5. 食生活
    • 辛い物や酸っぱい物は口腔内を刺激して痛みを強めることがあります。
    • 水分を多く含む料理(煮物、スープ)を取り入れると食べやすくなります。
    • アルコールやカフェイン飲料は口の乾燥を悪化させるため控えめに。
  6. 疲労・ストレス管理
    • 疲れやストレスが症状を悪化させることがあるため、無理のない生活リズムを心がけましょう。
    • 睡眠を十分にとり、軽い運動や趣味でリラックスすることが大切です。
  7. 合併症の注意
    • 関節炎、肺病変、腎臓障害、リンパ腫などを合併することがあるため、定期的に血液検査・画像検査を受ける必要があります。
    • 異常なリンパ節腫れや発熱が続く場合はすぐに医師へ。

👉 シェーグレン症候群は「乾燥症状」と「全身の自己免疫異常」の両方に注意する必要があります。
日常生活の工夫と定期的な通院で、症状をうまくコントロールできることが多いです。

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